第24話 少女リリーの過去話 その5
「辺境に行きましょう!」
そう提案する私に師匠は目を丸くして答える。
「……え?辺境?どういうことですか?」
まったく、師匠は理解力がないのかな?しょうがないから説明しよう!
「辺境に行って魔族を倒しに行きましょう!時間はかかるかもしれないですけど、少しずつやるんです!」
「ん?んん?ごめんリリーちゃん。戦う必要はないんだよ?なんでわざわざ辺境に行くんですか?」
そう自らの額に手を当てて話す師匠に向かって私は自分の心からの言葉を述べる。
「気に食わないからです!勇者パーティーとかいう制度も、王の考えも!なのでいっそ魔族を倒してしまおうかと!!」
「えー……気に食わないからって多種族との戦いに出かけて行くのはちょっと、なんというか……どうなんですか?」
「大丈夫です!私聖女でも何でもないただのちょっと悪い子なので!師匠は無理についてこなくてもいいですよ?」
どうやら師匠は戦うことがあまり好きではないようだからそう言う。
「いやまあ……行きますけど」
あきらめたようにそう答える師匠を見て少々嬉しくなる自分が確かにいることを自覚する。
「じゃあ、さっそく出発しましょうか!目的地は……そうですね。辺境のプラナ村なんてどうでしょうか」
「まあどこでもいいですが、本当にやるんですか?」
「ええ、やりますとも」
※
「辺境に行きましょう!」
勇者パーティーの真実ついて私の知りうる限りの情報を共有していると、リリーちゃんが突然そんなことを言い出しました。話を聞いていると、どうやら王と勇者パーティーに対するかすかな抵抗のつもりなようで、辺境を拠点に活動したいようです。
所謂、あれですね。冒険者と呼ばれるやつですね。おそらく。まあそれでしたら人の役に立ちますし、いいと思います。辺境周りで活動するだけなのであれば魔王と戦う機会などないようにも思えますが……いや、違いますね。おそらく彼女は、魔王討伐など本気で考えてはいないのでしょう。私たちがたとえ二人がかりでも魔王に勝てないことくらいは承知のはずです。リリーちゃんが実はそれなりにものを考えていることはこれまでの付き合いで把握しているつもりです。
であるならば、これはおそらく人の役に立って力も振るえる冒険者的な活動をすることによって行き場のない気持ちを八つ当たりで解消……もとい、フラストレーションの発散が目的、といったところでしょうか。
ええ、ええ。それでしたら私は師匠兼保護者としてどこまでもついていきますとも。
※
なんだか、師匠の目線が優しいというか、生暖かい気がするのは気のせいではないはずだ。まあいいだろう。とりあえず、師匠の気が変わらないうちに辺境に行く準備でもすることにしようじゃないか。
「とりあえず、明日の出発を目標に荷物をまとめましょうか!」
「え、早くないですか?」
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