第23話 少女リリーの過去話 その4
賢者プルチネ……改め師匠の弟子になってから数日が過ぎた。
「師匠!上級聖術の詠唱破棄をできるようになりたいんですけど、どうしましょう!」
そう聞く私に師匠は苦笑いをしながら答える。
「あのね?リリーちゃん。私が上級聖術使えないって話はしませんでしたか?そもそも私は聖女ではなく賢者なのであまり教えることはできないといいますか……」
「じゃあ上級魔術はどうやって詠唱破棄してるんですか?」
そう問うと師匠はさらに困った顔になる。
「え、ええと……こう、イメージしながら、ポンって感じでですね……すみません。自分で言うのもなんですが、私結構天才なので……」
ふむ、想像して……バフを、こう!
「あ、できた」
「できたんですか!?て、天才ですね……」
「私も結構天才かもしれないですね!」
そういうと師匠は赤面しながらさっきのは忘れてくださいと言ってきた。かっこいいから忘れるつもりはないけど。
そんな話を続けていると、ふと疑問に思ったことがある。
「そういえば師匠。私にこんなにかまっていただいているのはうれしいんですけど、賢者としての仕事とか無いんですか?ほら、魔王軍関係とか」
「しばらくはないですね。そもそも勇者パーティー自体が魔族の壊滅を目的としていないらしいので、敵の戦力がある程度削れている今、無理に攻勢に出る必要はないのではないでしょうか」
ん?聞き間違いかな?どういう意味だろう
「……え?どういうことですか?魔王とそれに属する魔族の討伐のために勇者パーティーは編成されるのですよね?」
私のその言葉に師匠は一瞬しまったというような顔になり、すぐに覚悟を決めたような顔に変化した。
「そうですね……リリーちゃんは知っておいてもいいかもしれません。いいですか?私も詳しいことは知りませんが、勇者パーティーは魔族が力をつけすぎないように戦力を削りに行く役割なんですよ。そして基本的にこちらが一人かけた時点でその任務は終了となります。こちらの戦力が削れていては元も子もないですからね」
衝撃だ。衝撃の事実だった。
「そん……な……じゃ、じゃあ、勇者パーティーは初めから一人以上死ぬ前提ってことですか……?そんな、あんまりです」
また黒い気持ちが再燃しそうになるのをとどめながら言葉を続ける。
「そ、それは……みんなは知ってたんですか?」
急に変わってしまったこの場の空気間に、それでも師匠は言葉を紡いでくれた。
「いや、みんなは知らないです。私は気になって王様に尋ねたので知っていました。リリーちゃんも詳しく知りたいのであれば、王様に聞いてみてもいいでしょう。そして………………フレイヤには私から伝えたので知っていたはずです」
その言葉に私は
「そう……でしたか」
そう、答えるしかなかった。
そして私は気持ちを無理やり切り替え顔を上げて、ついでにテンションも無理やり上げて声を上げる。
「師匠!辺境に行きましょう!!」
「…………え?」
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