第22話 王都へ
突然の帰還命令に何か不穏なものを感じて丸一日ほど行きたくないとごねるのをエルナに丸一日なだめられて私は今馬車の発着場にいる。
いやー、なんだろう。行こうという決意はしたのに直前になって嫌になってくるのはあるあるだね。行先から何とも言えない香ばしききな臭さがあるとなおさら。
「師匠!大丈夫ですか?ハンカチは持ちましたか?」
エルナよ……君は私の母か何かかい?私が何とも言えない顔をしているのに気が付いたのか、エルナはコホンと咳ばらいを一つして
「じゃあ、行ってらっしゃい。師匠!」
その言葉とエルナの姿に思わずふふっと笑いが漏れる。そしてもう板についてきてしまった仕草で頭をなでて言う。
「ああ、行ってきます」
さて、ペノム村と王都は馬車で一日と半日ほどで行くことができる。ちなみにバフをフルでかけた私は三時間くらいで走破できる。私はすごい。…………ちょっと盛った。本当は四時間くらいだ。
じゃあ何で馬車で行くのかって?言わせんなよ恥ずかしい、問題の先送りに決まってるじゃないか。
ところで、当たり前だがこの馬車には実は私以外にも乗客がいる。その中でも今私の目の前で私と同じように馬車に揺られている姉妹の、おそらく妹であろう幼女ががさっきから私のことをガン見しているのだが……なんだろう?
「あのあのっ!シスターさんですかっ!」
お、おう……若干興奮気味にそう尋ねられてしまった。何だろう、何か既視感が……まあいい。
「ああ、そうだよ。私は教会に所属しているシスターさんだよ」
そう言ってやるとその子は目を輝かせる。
「絵本で見たことあります!」
へ―そうなんだー…………ところでこれなんて言って返すのが正解なのだろうか。まずいな、普段幼女と話す機会なんてないからか何も浮かんでこない。とりあえず笑いかけておこうか……ははっ。
「こらっ、シスターさんを困らせちゃダメでしょ!」
必死でうまい返しを考えてると横の姉と思しき少女から助け舟を出される。いや実際だいぶ助かったな。素晴らしいぞ姉(推定)よ。
そして何事もなく、本当に何事もなく馬車が王都に付いた。あれからさらに何度か言葉を重ねたことで仲良くなった姉妹とはバイバイといって別れる。
ついに王都についてしまった。ここから一時間も歩けば王城にはついてしまうだろう。いや、もうそろそろ覚悟を決めよう…………よし!
そういやパーティーメンバーは誰なんだろう?(現実逃避
無難なのを選ぶのであれば前回のパーティーメンバーの聖女枠が私になって勇者枠は新しいのを用意して……ん?今気づいたけどなんで私呼ばれたんだろう?いや分かっている。わかってるんだけど、勇者パーティーの聖女枠が欲しいなら前回のパーティーの聖女ちゃんそのまま使えばいいんじゃないんの?
うわ、なんで今まで気が付かなかったんだろう。他のことを考えすぎてまったく気が付かなかったぞ。しまったな。なんかそう考えるとさらに怖くなってきたんだけど……。
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