第34話 少女リリーの過去話 その11
師匠と別れた後しばらく走ってやっと村が見えてきた。そのままの勢いをできるだけ殺さないように冒険者ギルドに駆け込み、担いでいた二人を優し目に投げ捨てた後、受付嬢に簡単に事情を説明する。
「そ、それは本当ですか!?すぐに調査依頼を出します!」
最近活躍している上級職の証言だからかすぐに信用してもらえたようだが、依頼を出して承認して……なんてやってるほど時間に余裕があるわけじゃない。もういっそそこらにいる上級を引っ張って連れて行こうと決意する。
「あの、上級の人にすぐにでも来てもらいたいんですけど、今どのあたりにいるとかってわかりますか?確かこのギルドには上級職の方が五人ほどいましたよね?」
心の焦りが滲みだしたかのように早口になってしまったが、できる限り丁寧に受付嬢に私の希望を伝える。
「それが……上級の方はみんなこのギルドにはいないんです。依頼に出ているのは三人だけなので残りの二方はこの村のどこかにおられると思うのですが…………」
村のどこか……。まずいな、今から村を回って探している時間なんてないぞ。ギルドのメンバーに呼び掛けて捜索を……いや、私にそんな人望はないし、それでも時間がかかるだろう。…………かくなる上は仕方ない。
私だけで戻ろう。この場では何よりも速度が大事だ。上級職を今から探すぐらいならば、私一人ででも戻った方がいいだろう。しかしまずいな、その場合私がここに来た意味は……いやいや落ち着け。初心者の二人を逃がせたし、ギルドに情報共有もできた。戻ってきた意味などたくさんあるだろう。そう結論づけ、冒険者ギルドで報告などをしたことでいつの間にか回復していた体力を酷使し来た道を駆け戻る。
※
村に走っていったリリーちゃんの背中が完全に見えなくなって少しした頃、ついにあのやたら大きな気配の主が私の目の前に姿を現しました。
「初めまして、こんにちは。私は賢者のプルチネと申します。あなたの名前をうかがっても?」
「……四天王、マイストレスト」
「わあ、いいお名前ですね。ところで少し私とお話でもしませんか?実は魔族の友達が欲しいと思っていたん───おっと」
私の会話を遮るように放ってきた漆黒の魔力弾をとっさに避ける。できればこのまま会話で時間稼ぎをしていたかなと思っていたのですが、そううまくはいきませんね。
残念ながら予想通りに四天王だったので足止めをする必要が出てきました。なぜこんな場所にいるのか、何が目的なのかはいったん置いておいて、とりあえずこの方が村に向かうのを止めなければ。
すっかり戦闘する気満々の四天王さんを警戒しながら上級魔法を無詠唱で行使し、あたりの天気を雷雨に変える。私の使える特級魔術や、得意な上級攻撃魔術は水や雷を使うものが多いので、これによりバフがかかるのです。
「さてと、全力でお相手いたしますが、勢いあまって倒してしまうかもしれませんね」
その言葉を戦いの嚆矢としてお互いが魔力を練りだし、次の瞬間漆黒の魔弾と雷撃が二者の中心で爆ぜた。
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