第29話 対面

 城内はすごく静かだった。まあいくつか想定していたうちの一つではある。魔王が私たちの接近に気づいていないわけがないし、城内のものを移動させたか後で奇襲でもかけるつもりなのだろう。

 ブレンク君もさすがに昨夜の言いつけを守ってくれる気はあるらしく、扉……いや、さっき彼が切断したため扉だったものになってしまったものをくぐった先で待ってくれていた。


 「一応、警戒はしていこう」


 そうみんなに声をかけ、とりあえず歩く。


 王城とは違い、黒を基調にしてところどころ金色の装飾がされている。私的にはこちらの方がかっこいいと思うのだが……まあ私の感性はどうでもいいだろう。……王城もこっちにすればいいのに。


 進んでいる最中に事前に立てていた作戦を元に陣形らしきもの(といっても並び順を変えただけだが)を組み、何事もなく大扉までたどり着く。王城といい、このやたらでかい扉は城あるあるかなにかなのだろうか。


 そして、その扉の先にはやはり、魔王がいた。いや、私は魔王にあったことがないから正確には魔王らしき人物なのだが、四天王より圧倒的に強い力を持っていそうなので魔王で間違いないだろう。


 部屋の中心で私たちを待っていたように佇んでいた魔王さんはフォカプを見ながらボソリとつぶやく。


 「ふむ、なるほど。随分早いと思ったらそういうことか」


 そういうことって何だろう、私も今回の攻撃は早いと思うんだが、フォカプと何か関係があるのだろうか?というか割と話ができそうな雰囲気がただよっているんだけど、これ攻撃していいのか?

 いや、とりあえず相手の出方を見て相手が攻撃してきたらこっちも攻撃を開始する感じで……いや、魔王相手に先制を取られるのはまずいか。


 いや、それよりも疑問を解決しよう。


 「随分早いとはどういうことだい?この攻撃のタイミングに思い当たる理由があるなら聞いてみたいんだけど……」


 そう私が問うと、魔王は少しの時間、だが確実に深く考えたであろう後ため息を一つつき、答える。


 「いや、もう手遅れだろう。さあ、戦いを始めよう。そのために来たのだろう?」


 いやいや、手遅れなら手遅れでその理由を聞きたいものだが……まあいい。どちらにせよ、ここで勝てばすべてが解決するのだ……おそらく。


 …………うん。魔王がいなくなれば少なくとも人類の脅威はなくなるし、勇者パーティーとかいう定期自殺遠征制度もなくなる。私の国とその国民、というか私の比較的大事めな人達に不利益が及ぶことはない……はずだ。


 目の前の割と知的そうな魔族の王を見ているとなんだか殺すのが申し訳なくなってくるが……うん。仕方ない。相手から始めたことだし、うん!






 こうして、私たち四人と魔王との戦いは始まった。

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