第28話 作戦

 このままではだめだ。もう明日にでも魔王城についてしまうのにあまりにもまとまりがなさすぎる。勝てるビジョンが一ミリもわかない。

 とはいえ私にはみんなの気持ちをまとめるような言葉を吐くことも、みんなの心を集めるカリスマ性もない。なので最低限出来ることをやっておこうと思う。


 今は野宿中でちょうどパーティー全員で食事をとっている。ということで、まず私は剣聖ブレンク君に話しかける。


 「ブレンク君、私たちは明日にでも魔王城に突入するわけだけど、今の私たちにチームワークなんてないだろ?君……死にたい?死にたくない?」


 「……俺は死なない」


 三つ目の答えを用意するんじゃないよ。思わずそう言いそうになるのを飲み込み、怪訝な顔をしているブレンク君と今度はほかのメンバーにも向けて言葉を紡ぐ。


 「私たちにもできそうな作戦を二つほど考えた。」


 その言いだしから始めた説明を簡単にまとめるとこうだ。


 まず一つ目、ルーズが凱旋天門でバフとデバフをかけ、ブレンクが特攻。ブレンクが死んだ時点でフォカプと私が中距離から魔法をぶっ放すというもの。


 続いて二つ目はこれまたルーズが凱旋天門でバフとデバフをばらまき、今度はフォカプと私の中距離狙撃から始まる。魔王が遠距離攻撃手段を持っていてもさすがに私たちの二人がかりなら迎撃できるだろう。魔王が近づいてきたらブレンク君に足止めをしてもらい私たちは距離を離す。十分離れたらまた私たちが中距離攻撃を始めるといった感じだ。


 「個人的に二つ目を推したいんだけど……どうだい?」


 「ああ、かまわないぞ」


 「別に……いい」


 「私がやることはどっちみち変わらないね」


 各々肯定の意を示してくれる。ひとまずまとまったことは安心だが、どうも安心しきれないのは私が心配性だからだろうか。いや、あの相手は魔王なのだ。心配しすぎて困ることなどないだろう。そう自分に言い聞かせ、かろうじて作戦らしきものをとれそうであることに進歩を感じながら眠ることにした。


 ※


 勇者パーティー決戦前夜の作戦会議が終わり、眠りにつくものと眠る前に祈る者の二通りに分けられた後、ボソリとこれまでの旅の成果を鑑みての達成率を思案するものがいた。


 「旅程、は……順調。まおう討伐は、ぜんてい、として……このぺーす、なら。四天王さんにゅう、まえに……ちゃんと、


 ※


 そして夜は何の問題もなくあけてしまい、運命の、魔王討伐の日が来た。私ことリリーはもちろん魔王にはいろいろと思うところがあるのだが、それはとりあえずしまい込み、集中して目の前にそびえ立つ城を睨む。


 「じゃあ、行こうか。」






 その掛け声をする直前、剣聖は魔王城の扉を切断して入ろうとしていた…………ほんとに後で殴ろう。いやマジで。

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