第30話 少女リリーの過去話 その7
私ことリリーは最近考えていることがある。いやですね?師匠と一緒に冒険者になったのはいいんだけど、なんというか、こう……うん。簡単なんだよね。任務が。まあ考えてみればそりゃそうだ。上級職なだけでギルドトップの実力があるのに、その上級職が特級職とともに活動しているのだ。これで達成不可能な任務があるのであれば、それはギルド側に問題があるだろう。
そこで私は、師匠にある提案をすることにした。
「ほかの冒険者と組みたい……ですか?」
そう怪訝な顔で聞き返す師匠に私は説明を重ねる。
「はい。正直私たち二人がいればギルドの依頼はほぼ可能なのですが、どうせならほかの冒険者に交じって冒険とかしたいのですよ。ほら、二人だけでパーティー組んでるのとかあんまり見ないですよ。一時的なものでいいんでやってみましょう!」
「いいですね。たまには私以外の人と関わるのも大事だと思いますし。では私は今回留守番をしていますね」
ん?何やら勘違いが生まれている気がする。
「何言ってるんですか?師匠も来るんですよ。私一人なんて絶対無理ですよ」
「何が無理なんですか……というか、私がいたらいつもとそんなに変わらなくないですか?」
「いやいや、変わりますよ!冒険者といえば大人数じゃないですか!!」
なんだろう……師匠の目つきがちょっと、うん。なんだろうこのジトーっとした目つきは。私のことを馬鹿にしている……?いやまさかそんなそんな。とりあえずはたいておこう。
「いたっ!き、急に何するんですか!?」
冒険者ギルドに入るとさっそくパーティーを組みたい旨を受けつけの人に話す。するとさっそくにでも組ませたい人がいるそうだ。というか、下級職の駆け出しパーティーと組んでほしいそうだ。いやまあ、言わんとしていることはわかる。どうせ私たち二人がいればまず依頼の失敗はしないし、であるならば初心者に絶対に成功する任務に同行させて雰囲気だの手順だのを学ばせたいのだろう。
────でもなぁ、そういうんじゃないんだよなぁ……もっとこう、うん。まあいいか。とりあえず言われたことをやろうじゃないか。師匠と一緒ならどこでもそれなりに楽しいだろうし。
とりあえず隣にいる師匠に今回の依頼について話しておこう。
「師匠、今回の依頼ですが、面倒ごとを押し付けられましたよ」
「そういうことは押し付けた人の目の前で言わないでください?そして私も隣にいたので聞いていましたからね?わざとですか?わざとなのですか??」
「やっぱり報告って大事ですよね。」
「わざとなのですね!?」
師匠が隣で騒ぎ立てるが、おそらくすぐさま報告した私の成長度合いに感激しているのだろう。まあここで師匠とじゃれあっていても、このめんどくさ……非常に意義のある仕事は片付かないので、臨時パーティーメンバーのところに行こうじゃないか。
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