第13話 全力のていこう

 世の中の人間は平等ではない。何故ならば人には才能という格差があるからだ。そして客観的に見ても、自己評価としても、私にはそれがある方だろう。ちなみに今目の前で私の肩を切り裂き少々のどや顔が見え隠れしている剣聖サマもまぁ優秀な方だではある……が、私ほどではない。

 


 そんな剣聖を軽くにらみながら私は聖術を発動させる。この剣聖には……そうだな、私が正真正銘全力をもって相手をしようじゃないか。


 『特級聖術・凱旋天門』


 これはバフ系聖術の特級で、大きな門を作り出す。この門でどうこうするわけではないが、この周りの私含み私が味方と認定したものには祝福バフが、敵対者にはデバフが降りかかる。


 この聖術の効果により、聖女で普段部屋から出ないような私でも剣聖と同程度の身体能力になる。







 剣聖ユクルは自分の読みが外れたことに驚いていた。



 特級職とは、卓越した才能と努力によりその道の特級の技を一つ習得することでなることができる。特に聖女なんかはどの特級聖術を習得して聖女になったかが二つ名になることが多く、今絶賛勇者パーティーとして活動している華炎かえんの聖女なんかは攻撃系の特級聖術である『聖炎華』を習得することで聖女になっている。


 目の前の聖女は二つ名の「殲滅」からしてほぼ確実に攻撃系の特級聖術だと思っていたのだが、どうやらバフ系だったらしい。


 まあいい。正直、超火力の特級聖術を撃ち込まれる心配がなくなったことでいくぶん戦いやすくなったとすら思う。


 『特級剣術・絶剣ッ!』


 確実に目の前の少女を殺害するために自身の最高の剣技を使って距離を詰める。




 ─────が、それはかなわなかった。ゴンッという音とともに透明な壁にぶつかったのだ。


 いや、違う。これは壁ではなく私を囲ういうなれば結界のようなものだろう。たしか聖術には封印系のものもあったが、おそらくそれだろう。しかし特級でないのなら恐るるに足らない。



 『特級剣術・絶剣』



 再び発動した剣技により結界を切り裂こうとする…………が少し傷がつくだけで破壊できない。


 そう、特級剣術で……破壊できなかったのだ。その理由に思い至るより先に眼前の少女がその聖術の正体を特に自慢する風でもなく淡々と告げる。


 『特級聖術・神想封過』


 「なん……だと?」


 二個目の特級聖術ッ!?ありえない。いや、できないことはない。事実こいつの姉は二つの特級聖術を使っていた。


 だが!そういうわけではない。複数の特級技を有する聖女が、なぜ!勇者パーティーどころかその候補にも入っていない!?


 完全に読み違えたといっていいだろう。正直舐めていた。とりあえず何とかしてこの封印術から脱出を────


 『特級聖術・聖光の天昇ルクス・シーラム





  眼前には天からもたらされた光が屹立している。外見は神々しいその光は実際には最大火力の聖術。破壊の権化である。つまりその光が下りた場所には何も残らず、その真下にいたはずの剣聖と呼ばれた男もまた、その命を絶たれた。 


 そしてその術者の少女はをその顔に浮かべてつぶやく。



 「…………疲れたな」

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