第14話 少女リリーの過去話 その1
「ありがとうございます!」
目の前の男の人が私に感謝の言葉を投げかける。人に感謝されるとなんだかこう、こそばゆい感じがしてうれしくなる。
「いえいえ、いつでも頼ってくださいね!」
そう返すと男の人はもう一度礼を言いかえっていった。けがをした腕を直しただけなのに大げさなんだから。
そうこうしていると声をかけられる。
「ほらリリー、そろそろ王様に会う時間だよ。行こ?」
私、バレバン・リリーの姉であるフレイヤは天才だ。周りにもそういわれているし、私もそう思っている。というのも、なんとフレイヤ姉さんは聖術を学び始めて僅か半年で聖女にまでなったのだ。ふつうは上級聖術を覚えるのにも5年から10年はかかるらしい。つまり姉さんはすごい。さすがは私の姉さんだ。
私は姉さんと同じ時期に聖術の勉強を始めたけど、まだ上級までしか覚えられてないため肩書は上級神官である。
そんなことを思い聖術へのモチベーションを上げているといつの間にか王城についていた。
なぜ王城に来たかだって?それはなんと!姉さんが今回の勇者パーティーに選ばれたからなのさ!姉さんは優しくて困っている人はすぐに助ける。私も姉さんみたいになりたくて努力してるけど……どうだろうか。いつか追いつけるかな?
「じゃあリリー、今から王城に入るけど行儀よくするんだよ?」
そう確認してくる姉さんに分かってると返事をし、王城に入る。
中はすごく豪華で高価そうなものがたくさんある。床にひいてある赤い絨毯もなんだか上等のもので、本当にこれを踏んで歩いてもいいのか心配になってくるほどだ。
しばらく姉さんについて歩くとひときわ大きな扉にたどり着いた。扉の近くにいた兵隊に姉さんが聖女フレイヤだと告げると扉が開かれる。
扉の先にはすごく豪華な椅子に座った王様のような人と兵隊さん数人、それから姉さんのパーティーメンバーになるだろう人たちとこれまた高価そうな絨毯。
まずいぞ。さっきから思考の七割くらいが絨毯のことだ。集中しないと。ところでこの絨毯ほんとに踏んでいいんだよね?
そして何事もなく王様への謁見と勇者パーティーの顔合わせが終わった。男の人二人と女の人二人のバランスの良いチームだ。………何を言っているんだろう。
バランスといえば、勇者パーティーは基本的に勇者、剣聖、聖女、賢者の四人らしい。なんか、今までの経験?からいってその組み合わせが一番攻守のバランスがどうとか。
ところで、勇者パーティーはバランス姉さんは明日にでも王都を発つそうだ。
…………少々急ぎすぎな気がしないでもないけど。
「リリー、もう午後だけど今日は夕方まで王都で遊ぼうか」
「……え?いいの?姉さんは修行とかした方が……」
そう言うと姉さんは私の頭をなでてくる。
「さみしいって顔に書いてあるぞ~、しばらく会えなくなるから一緒に遊ぼ?」
どうやら顔に出ていたらしい。恥ずかしいな……いや、姉さんが人の顔から感情を判断する技術に長けているという可能性もまだあるかな……?
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