　フォカプが合流した、ということはつまりあっちの決着がついたのだろう。

　「よしフォカプ、さっそくで悪いけど速攻だ。さっさとケリをつけるよ。」

　「ん、りょう、かい。」

　フォカプが合流したことにより警戒したのか爆破男が距離を取りこちらの出方をうかがっている。これは後衛二人である私たちには好都合だ。

　「フォカプ、相手は凱旋天門の影響下でも普通に動いてくる化け物だ。魔王と同じかそれよりも少し弱い想定で動くとして、とりあえずフォカプの魔法を当てるのを私が支援する感じで行こう。」

　「ん」

　凱旋天門ももうそんなに持続させられるわけじゃないし、速攻で行く。

　『神想封過』

　当然のように避けられるが、今回の私は一味違う。距離をとるのではなく自ら肉薄する。ん？さっきの特級聖術が意外と効いているのか？動きがほんの少し鈍くなっているよ？

　「がっ、は……」

　迎撃のために振るわれた拳を受け、止める。すさまじい衝撃に肺から空気が漏れるが気合いで我慢する。

　『神想封過ッ！！！！！』

　ゼロ距離からの特級聖術。もちろん私はギリギリで退避し、爆破男のみを結界内に閉じ込めることに成功する。

　「フォカプッ！！」

　『雷霆の神槍（ライトニングニル）！！』

　フォカプから放たれた凄まじい魔力を携えた雷の槍は、私がとらえた爆破男に直撃する。賢者の放った高威力の雷撃が避けることすらできずに直撃したのだ。これで死んでいても問題はない、のだが……。

　「うっそでしょ……」

　「わ……」

　城爆破男は耐えきって見せた。何か防御系の魔法を使ったのか、魔力による身体能力の強化をすべて防御性能に回すことで耐えきったのかはわからないが、全身に火傷を負いボロボロになりながらその男は立っていた。そしてそれに気を取られ私は気が付かなかった。神想封過と凱旋天門が解けていることに。

　────目が、あった。

　体を危険信号が駆け巡り、回避行動をとるよりも先に私の体が吹き飛ばされる。

　「っぐ……」

　なんだ？何をされた？吹き飛ばされながら見たのはボロボロになった全身からさらに湯気のようなものを立ち上らせた爆破男。

　「っづぅ！」

　背中から城の瓦礫にぶつかることで止まったが、痛い。背中も痛いが、おなかが何よりも痛い。見れば何だかグロテスクなことになっている。さっきから回復系の上級聖術をかけているのだが治りが凄まじく遅い。上級聖術って部位欠損でも治せるんだけど、この傷はそれ以上らしい。いや、今気が付いたがこれ傷口がどんどん焼かれて広がっていってるな？本来なら傷跡から広がる火傷で全身を包まれて死に至るといった感じなのだろうが、上級聖術で火傷を無理やりねじ伏せ傷口を治しているため治療がやたらと遅いらしい。

　「くっそが！いっっったい！！！！」

　思えば、なんでこんなことをやっているのだったか。本来私は王都の側の人間だったはずだ。それがなぜ王都に攻撃を仕掛け始めたんだった？いや、もともと私は王に忠誠を誓っていたわけでも王都に人々のために何かをしたいわけでもなかったな。であれば私のこの行動は善悪に基づくものではないのだろう。そうだ、姉さん。姉さんと一緒にいたかったからとりあえずこんなことをしているのだ。とりあえず？とりあえずでこんなことをしているのか？そうだ、私はもともと他人のためにここまでするような人間ではなかったはずだ。いっそ姉さんを回収して逃げた方が……いや落ち着け。凄まじい痛みだから心が折れそうになっているのか？こんなことは今考えることじゃない。

　「だいたい、人間の行動なんて基本的に自分本位だろう。命の価値が軽いこの世界ならばなおさらね」

　そう、だから娯楽小説に夢を見たんだった。懐かしいことを思い出したな。まあいい、思考が多少逸れはしたが、傷は治すことができた。見ればフォカプが爆破男から距離を取り、警戒のまなざしを向けている。私も早く復帰しなければ。