第18話 外出

 そういえば最近勇者パーティーが三人目の四天王を討伐したらしい。ここまで半年と少しかかっている…………ふっ、勝った。


 そんなことを考えているとバンッと音がし、その方向を見るとエルナが私の部屋のドアを開けて立っていた。



 「師匠!外に出ましょう!!」


 「外に……?」


 外に出ましょう……?なるほど、どうやらエルナは勘違いをしているようだ。これは早急に正す必要がある。


 「ふむ、まずだよ?エルナ、君は私がさも引きこもりか何かであるかのような口ぶりで話しているが、そんなことはないだろう?ほら、つい先日も森へお出かけに行ったのだし。つまりね?そんなことを言われなくてもそのうち外には出るから。ほら、お菓子でも買ってきておくれよ」


 「…………ダメです。」


 「……え?」


 拒否……されただと……?なにゆえ?



 「一緒に、行きましょう?」


 聖女のような、とても慈愛に満ちた目でそう言われた。


 「やめろ、やめるんだ!いいかい?さっきも言ったが私は引きこもりではないし、必要がないから出ていないだけなんだ。だからその目をやめなさい。いいね?」


 するとエルナはジト目で私を見て言う。


 「でも師匠、ベットからは出た方がいいですと思いますよ」


 そう、ベットの上で小説片手にごろごろしながらエルナを諭していた私に向かって。


 「あのね?必要もないのにわざわざ外に出る必要などないだろう?必要があったらもちろん出るさ。聖女という職にも就いているからね?」


 「でもほら、外に出て少しでも運動しておかないと体にも悪いですよ?」


 無駄……か。エルナの場合、善意で私に言ってくれているのがなおたちが悪い。ここは……もう仕方ないな。



 「エルナ……ごめん」


 「え?」


 私は上級聖術で自らにバフをかけると、身をかがめ、できうる限り迅速な行動でエルナに肉薄する。


 「……ひっ」


 小さく悲鳴を上げりエルナにかまわず私はその勢いのまま空いた扉からなるべく優しくエルナを叩き出した。


 そして最後の仕上げだ。


 『上級聖術・封帝結界』


 自分の部屋に素早く上級の結界系聖術を張る。


 「エルナ!私にはひとまずこの小説を読み切ってしまわなければならないという使命があるんだ!申し訳ないが外出はまた後日にしてお菓子を買ってきてくれたまえ!」




 エルナが外で悔しそうな顔を……していない?いやなんだかぶつぶつといっているような……あれは、詠唱?


 

 『上級聖術・天昇』




 「……え?」


 パリン、と私の結界が割れる音がした。上級聖術?いつの間に?


 ガラガラと崩れ落ちる私の結界の中を歩いてきたエルナは私に笑顔を、そう、とびきりの笑顔を見せながら手を差し伸べる。


 「師匠、一緒に外にお出かけに行きましょう?」


 「……はい」

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