第9話 剣聖襲来

 いやぁ今日は実にいい日だ。エルナに買ってきてもらった小説を読みながらこれまたエルナに買ってきてもらったお菓子をほおばる。


 エルナは先ほど冒険者ギルドに行ったが、これも実に喜ばしい。着実にこの町での教会の地位が上がっていることだろう。いや実際そんなに効果はないかもしれないが、それでもないよりはましだろう。エルナの師匠として聖術を教えているというアリバイもあるし、本当に素晴らしい毎日だ。




 そんな素晴らしい日に限って問題ごとが起こるのは本当にやめてほしい。


 教会の寮の中で誰かが走っている音が聞こえたかと思うと、私の部屋にシュワードさんが訪ねてくる。


 「聖女リリー、少しよろしいですか?剣聖ユクル様がいらっしゃったのですが、何やらあなたに用があるとのことでして……」


 剣聖ユクル……面識自体はある。あの微妙に胡散臭い笑顔はそうそう見るものではない。しかし何をしに来たんだ?そういえば今回の勇者パーティーは辞退したんだったか。


 あれか?今朝エルナが言っていた魔物の活性化云々の件か?まあなんにせよ面倒ごとだろう。ここは居留守だな。


 「私はいないって伝えてもらってもいいかい?」


 「いえ、それが……」


 「居留守とはひどいじゃないか、リリー」



 来てるのかよ……。









 仕方なくユクルを部屋にあげる……なんてことはせず、私が部屋の外の廊下に出てユクルと対峙する。何やら大事な話だということなのでシュワードさんには席を外してもらっている。


 「で、何の御用でしょうか剣聖サマ?私ちょっと聖女としての仕事で忙しいのですけど?」


 「まあまあ、そんなに邪険にしなくてもいいじゃないか。僕が何かしたかい?」


 面倒ごとを持ってそうなんだよ!あと笑いかけるな胡散臭い。


 「邪険にはしていませんよ?しかしあなたの方こそ少しなれなれしいのではないですか?私たちが合うのこれで三回目とかでしょう」



 「そうだね、君の姉君が勇者パーティーで聖女をしていたころに何度かあったくらいかな」


 「────そうですね。で、何の用事でいらしたのですか?先ほども言ったように私は忙しいのですけれど」


 「そうだね……今ペノム村で起こっている魔物の活性化、規模自体はまだそんなに大きくないみたいだけど、君はどう思う?」


 正直別に何も……エルナの口ぶりからしてもそのうち対処できそうな感じではあるし、規模が大きくなっても上級冒険者が出張って何とかするでしょ。


 「どう……とは?質問が曖昧過ぎて答えにくいのですが。規模は小さいのですよね?」


 「そうだね、今はまだ……小さいかな」


 「であれば冒険者の方々が何とかするのでは?彼らはこの辺境を魔物たちから守る要ですし、十分対処可能でしょう。剣聖様がどうこうする必要はないと思いますが……」



 「確かにそうだね……じゃあ質問を変えよう。あれを僕が起こしたものだって言ったら……どうする?」

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