第8話 剣聖

 エルナは聖女であるリリーに弟子入りして半年、とても充実した日々を送っていた。それまでからは考えられないような楽しい日々に心の底から満足していた。


 師匠に本は渡したし、冒険者の手伝いに行こう。


 冒険者ギルドに入ると聞こえてくるうるさいくらいの喧騒にも慣れて、今では心地いいとすら思っている。


 「エルナ、もう少ししたら今朝狩りに行った冒険者の連中が帰ってくると思うからちょっとだけ待っててもらってもいいか?怪我をしているかもしれねぇ」


 「はい!わかりました」


 顔見知りの中級冒険者さんにそう声をかけられる。最近は魔物が少し多く、危険度が増しているので怪我をして帰ってくる人が多いのだ。



 冒険者の階級には下級、中級、上級がある。ちなみに聖女は特級の職業だからペノム村の冒険者ギルドのどの冒険者よりも格上ということになる。やっぱり師匠はすごい。そんなことを考えていると冒険者ギルドの扉が開く。



 狩りに出ていた冒険者たちが帰ってきたのかと、私とギルド内の冒険者たちが扉の方に視線をやるとそこには見慣れない男が立っていた。



 誰だろう、と思い顔見知りの中級冒険者さんに聞こうとすると、それよりも先にギルド内の誰かが「剣聖……」と言っているのが耳に入った。


 剣聖というと聖女と同じ特級職だ。つまり凄い人のはずだが、なぜこんなところに来たのだろうか。その疑問をそのまま冒険者さんにぶつける。


 「あの方、剣聖様なんですか?」


 「ああ、そうだ。現在二人しかいない剣聖の一人。剣聖ユクル様だ。前回の勇者パーティーの一員でもあるんだぞ?」



 冒険者さんが私にもわかりやすいように説明してくれる。


 「そんなすごい人がどうしてこんなところに来たんでしょう?」


 「さあな。大方、最近の魔物の活性化を鎮圧でもしに来てくださったんじゃないか?」




 なるほど。そう言われればそんな気がしてきた。あれ?でも同じ特級職の師匠は特に何かする様子はないけど……いつものことでした。



 剣聖様は冒険者ギルドの中をぐるりと見まわすと、私で目を止める。というか目が合っている。全然逸らしてくれない。私の顔に何かついているのかな。と考えていると、剣聖様がこちらに歩いてきた。



 「そこのシスターさん。この町に殲滅の聖女がいるというのは本当かな?」



 !聖女を探してる。もしかして師匠と一緒に魔物を討伐に行ったりするのかな?しかし、殲滅?なんだろうそれ


 「その殲滅?の人か分からないですけど、聖女様ならこの町の教会にいると思いますよ」


 そういうとその男の人は柔らかな笑みを浮かべて「ありがとう」といい去って行ってしまった。それをボーっと眺めているとまたギルドの扉が開く音がして、今度は冒険者のみんなが帰ってきた。



 「エルナちゃんはいるか?治療を頼みたいんだが……」

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