第5話 弟子
エルナを教会に連れてきた私は、まず立場をはっきりさせることにした。シュワードさんの許可は……まあどうとでもなるだろう。多分。
「じゃあエルナ、今日から君はとりあえず私の弟子として教会の手伝いをしてもらおうかな。」
「は、はい!わかりました」
よしよし、いい感じじゃないか。従順でかわいい子だ。とりあえずは服だな。いつまでもボロボロの服ではいけないだろう。まあ都合よく女性用の服が教会においてあるとは思えないので、街で適当に見繕うしかないのだが。
しかしまた街へ出るのか……ここに帰ってくる道中で買ってくればよかったな。ちょっと面倒くさいが行くか、と決意を固めていると誰かが教会に入ってきた。まあこんな協会に出入りするのなんて私たちとシュワードさんくらいなものなのだが。
しかしこれはちょうどいい。ナイスタイミングで帰ってきてくれた。
「シュワードさんおかえり。いきなりだけど私はこの子を弟子にすることにしたんだ、しかしいつまでもこんな服を着せておくわけにもいかないだろ?そこで町で適当に服を見繕ってこようと思うんだけど、代わりに行ってきてくれないかな?」
「少女用の服でしたら、教会にありますよ?昔いた僧侶たちが置いて行ったおさがりでよければですが」
………服、あるのか。
「じゃあとりあえずその服を着てもらおうか」
「まずはお風呂に入ってもらった方がよいのでは?」
「確かにそうだね、じゃあ私がいれてこよう。さあエルナ、行こうか」
「は、はい」
風呂に入って服を着替えたエルナは寮の一室で寝かせて、私はシュワードさんと話をしていた。
「聖女様、あの子はどうしたのですか?まさか誘拐?」
「そんなわけないだろう。貧民街の子だよ。チンピラに絡まれているところを助けたんだ。家族もいないようだから面倒を見てあげようよ。私が聖術でも教えれば将来は教会か冒険者でやっていけるだろう」
まったく、失礼な話だ。というかもしかしてシュワードさんは私を誘拐もしそうだと思っているのだろうか。……近いうちに誤解を解く必要があるかもしれない。
「そうでしたか……でしたら私はここにおいてもかまいませんが、あまりこういうことをするのは控えてくださいね。貧民街にいる子供たち全員を助けることなどはできないので」
「そのあたりはきちんと弁えているとも。今回だけだよ。今回は別の目的もあったしね」
「ん?別の目的ですか」
「……あぁいや、ナンデモナイヨ」
危ない口が滑った。
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