第19話牡丹の考え

 ヨハンセンの依頼から3年が経った。この3年、鬼に関する事件は聞かなくなり、マスコミは、政治家の汚職事件や芸能人のスキャンダルなどに注目していた。


 2029年5月28日。

 唯一の妖怪の政治家の金長牡丹は、国家で他の党の裏金問題の話を1時間以上聞いて辟易していた。

 牡丹は、自宅に戻って鬼塚に電話した。以前から牡丹は鬼塚の部下の妖怪と人間の血を引いた小香シャオシャンに会いたいと思い、明日会う事になっていた。そのための確認で鬼塚に電話していた。


 2029年5月29日。

 小香シャオシャンは15歳になった。

 その日、鬼塚から小香シャオシャンに来客が来る事になり、小香シャオシャンは待機していた。すると、ビルの前に黒い車が止まり、中から宝塚の男役のような見た目の女性が秘書の女性と共に出てきてビルに入った。

 ノックをする音がし、鬼塚がドアを開けると金長牡丹と秘書の白鳥道子だった。鬼塚は、入るよう勧めて牡丹と白鳥道子は入り、小香シャオシャンの向かいに2人は席に座った。小香シャオシャンは憧れの牡丹に凄く緊張していた。

 小香シャオシャンがお辞儀をして座ると牡丹は中国語で

「是小香吗?我是金长牡丹。我很荣幸能够见到你。(小香シャオシャンさんですか?私は金長牡丹です。お会いできて光栄です。)」

 と挨拶すると小香シャオシャンも中国語で

「是雷小香。我钦佩你很久了。我很高兴认识你。但是,牡丹。我会说日语,所以用日语说也没关系。(雷小香レイシャオシャンです。お会いできて嬉しいです。私は以前からあなたに憧れています。でも、牡丹さん。私は日本語を話せますから日本語で話して大丈夫です。)」

 と返した。

 鬼塚は牡丹に

「牡丹さん、中国語話せるんですね」

 と感想を言うと牡丹は照れ臭そうに

「中国の方と話す機会があるのでそのために勉強してました」

 と答えた。

「ところで、小香シャオシャンさんはお祖父様とお祖母様が牛魔王と羅刹女で、お父様は聖嬰大王なんですよね?」

 牡丹が小香シャオシャンに尋ねると、小香シャオシャンは頷いた。

「はい、そうなんですよ。祖父母は優しいですが、父は少し厳しいんです」

「そうなんですね。なんだか意外ですね」

「よく言われるんですよ!」

 小香シャオシャンと牡丹は楽しそうに話した。だが、すぐ小香シャオシャンは以前から聞きたかった妖怪と人間が平和に住む世の中と鬼について聞いた。牡丹は

「私の中のテーマなんですよ。妖怪と人間が手を取り合って平和に住む世の中は…。悪い事をしてる妖怪が原因でまだまだマイナスなイメージがあるからどうにかそれを払拭させたいんですよ」

 と難しい顔して答えた。

「中国でも妖怪についてネガティブなイメージが根付いているせいで、私は学校で虐められていて嫌になって日本に逃げて来たんです」

 小香シャオシャンが話すと牡丹は

「中国もそのような状況なんですね…」

 と悲しそうに答えた。

「けど、まさか日本もこのような空気でしかも鬼のせいでこうなっていたとは…」

 小香シャオシャンはショック受けていた。3年前にヨハンセンから鬼が数々の殺人事件を聞いて小香シャオシャンの中で妖怪と人間の友好関係について考え始めた。

 2人の会話を聞いて鬼塚はある事を思い出し、

小香シャオシャンさん、以前、源頼光が酒呑童子を殺した刀が京都にあるって聞いたって話してたじゃん?そういうの専門の人、僕知ってる!」

 そう話すと

「もしかして、鬼塚さんを育てた方ですが?」

 牡丹が尋ねると鬼塚は首を横に振り、

「桜田先生の教え子で京都の大学で妖怪の研究してるんですよ。桜田先生と同じように」

 あっさり答えた。

「その人は鬼の事も研究してるから何か知ってるかも」

 鬼塚の一言に小香シャオシャンは京都に行きたくなった。

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