第14話中国からの迎え

 2023年7月6日。

 牛魔王は、悟雲から小香シャオシャンの居場所を聞いてすぐ翌日に向けて日本に行く準備をした。妻の羅刹女や息子夫婦も行くと言ったが、断った。


 翌日の2023年7月7日。

 その日は七夕だった。牛魔王は日本に着いて悟雲から聞いた小香シャオシャンがいる久保村家の住所を頼りに探していた。

 たまたま目にする商業施設や飲食店、デパートでは七夕の飾りがよく目立ち、牛魔王はふと5年前の七夕の日に4歳だった小香シャオシャンが索餅を嬉しそうに食べていた事を思い出していた。

 

 そんな孫の顔を見たい。

 そして、一緒に中国へ帰ろう。


 牛魔王は日本に来るまでずっと考えていた。


 アポイントメントなしで祖父が来る事を知らず、小香シャオシャンは久保村家で昼食の準備をしていた。

小香シャオシャン!この素麺をテーブルに置いて!」

「はい!」

 悦子に頼まれて小香シャオシャンは、素麺が入った器をテーブルに置いていた。

 その時、チャイムが鳴り、伊代が玄関のドアを開けた。そこにいたのは、小香シャオシャンの祖父の牛魔王だった。

 中国語で話しかけられてどうしたらいいかわからない伊代は家族と小香シャオシャンを呼んだ。全員が玄関に行ったが、牛魔王の姿を見た小香シャオシャン

「祖父…(お祖父様…)」

 金縛りに合ったかのように固まり、驚きのあまりそれ以上何も言えなかった。

小香シャオシャン、この方もしかして…」

 悦子が聞くと

「私の祖父…。牛魔王…」

 小香シャオシャンが説明すると

「牛魔王!?」

 虎太郎が叫び、

「この人が牛魔王!?マジで!?」

 希子がびっくりして高い声を出した。

「お祖父様、なぜこちらに来られたんですか?」

 小香シャオシャンがようやく口を開いた。

小香シャオシャン、元気でよかった。嬉しい。ずっと心配してた。小香シャオシャン、俺はお前を迎えに来たんだ」

 牛魔王が優しい声で話した。

 だが、小香シャオシャンは辛そうな顔になってきた。それに気づいた悦子は

小香シャオシャン、お祖父さんはなんて仰ってるの?」

 悦子にそう聞かれ、小香シャオシャン

「お祖父様は…私を迎えに来たって…」

 と訳すると

「じゃあ、あなたは中国に帰るの?」

 伊代に聞かれたが、小香シャオシャンは凍りついて答える事が出来なかった。

小香シャオシャン…」

 虎太郎が声をかけても小香シャオシャンはずっと凍りついたままだった。

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