第15話小香と祖父

 2023年7月7日。

 悦子は牛魔王に中に入るよう促し、食事もどうか尋ねたが、小香シャオシャンを迎えたらすぐ出るから食事はいらない事を悦子に伝えた。

 牛魔王は小香シャオシャンに今まで悟雲から聞いた話をし出した。それに対して

「悟雲さんに伝えましたが、お祖父様、私は日本にいると決めたから帰りません!」

 小香シャオシャンは真っ直ぐな目で祖父を見つめた。

「どうして?お祖母様も父上も母上も心配してるぞ」

 牛魔王は優しい声で言ったが、小香シャオシャンは睨みつけて

「嫌です!悟雲さんから聞きましたが、希腊シーラ衛城ウェイチャン愛琴アイチンは私を虐めた事を反省してないって!それに私は…」

 小香シャオシャンは訴えるように話したが

「わかるよ!お前は、金長牡丹の影響で日本に行きたかったんだろ!日本に行けば、妖怪を受け入れてくれるって聞いたからだろ?そんなの大人になってからでもできただろ?」

 牛魔王はしゃがみ、小香シャオシャンの顔を見て話した。

「私達が言うのもあれですけど、小香シャオシャンは自立した9歳の女の子です。ここに来た時に話してくれましたが、あなたやお祖母様やお父様みたいな妖怪になりたいそうです」

 悦子がそう言って小香シャオシャンはそれを訳して牛魔王に伝えた。

小香シャオシャン、俺達は散々悪い事をしたんだぞ…。そんな風に思ってたなんて…」

 牛魔王は小香シャオシャンの目を見て話し、小香シャオシャンは頷いた。すると小香シャオシャンは自分の部屋に行き、西遊記の本を持って戻って来ると本を祖父に見せた。

「この本を読んでお祖父様達のした事がよくわかりました。けど、牛魔王も羅刹女も聖嬰大王も私のお祖父様、お祖母様、父上なのは事実で、今まで通りすごい祖父母と父親って気持ちです」

 小香シャオシャンはテーブルに本を置くと

「だけど、私は帰りません。二度とあんな思いはしたくないです」

 小香シャオシャンは牛魔王の手を握った。

「そんな〜!お前がそんな目に合わないために虐めた奴らを退学にして…」

「退学にしなくていいです!」

 小香シャオシャンは遮った。

「それに婆さんが言った通り、私はここに着て自立した女の子になったし、もう希腊シーラ達は言っても治らないからそれならここで暮らしたいです!」

 小香シャオシャンは反抗的な言い方をし、手を離した。

小香シャオシャン、暮らしたい気持ちはわかるけど、久保村さん達に迷惑かかるから中国へ戻ろう!さぁ、久保村さん達にご挨拶しなさい」

 牛魔王は帰ろうとしたが、小香シャオシャンは動かなかった。牛魔王はもう一度呼んだが、小香シャオシャンはそれでも動かなかった。

小香シャオシャン、帰ったほうがいいんじゃない?」

 伊代が声をかけたが、小香シャオシャンは祖父のほうを向いて

「お祖父様、ごめんなさい!私はやっぱりここにいたいです!」

 小香シャオシャンは泣き出した。牛魔王は困ってどうしたらいいかわからない様子だった。

 悦子が小香シャオシャンを慰めた。牛魔王は心が痛かった。中国にいた時、小香シャオシャンが泣くと毎回牛魔王は孫が可哀想で何かしなきゃと思ったりしていた。

 小香シャオシャンの熱意に牛魔王は完敗した。だが、牛魔王は小香シャオシャンにある提案をした。

「可爱的孙子(可愛い孫)、1つお願いがあるんだ」

 牛魔王にそう言われ、小香シャオシャンは顔を上げた。

「お願い?」

 小香シャオシャンは首を傾げた。

「春節の間、帰って来てほしい。それで終わったら日本に戻る。どうだ?」

 牛魔王はそう提案し、小香シャオシャンは素直に従った。

 そして、牛魔王は安堵して中国へ帰って行った。

 悦子は小香シャオシャンに今後、どうするか尋ねると何でも屋の給料を少しずつ貯金をし、貯まったら久保村家を離れ、1人暮らしする事を話した。久保村家の面々は納得し、春節の期間に中国に帰ったら祖父母と両親との時間を大切にするよう助言した。


 中国に帰った牛魔王は事の次第を羅刹女と聖嬰大王夫婦に説明したが、暫く納得できない様子だったが、小香シャオシャンが決めた事だからと説得し、ようやく羅刹女と聖嬰大王夫婦はわかった様子だった。


 それから小香シャオシャンは、相も変わらず何でも屋で仕事をし、久保村家では悦子と伊代の手伝いや虎太郎から勉強を教わったりして過ごしていた。

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