第16話トロール

 小香シャオシャンが日本に来て3年が経った。

 その間に、小香シャオシャンは牛魔王と約束した通り春節には中国に帰り祖父母と両親と過ごしていた。

 また、小香シャオシャンが日本に来て1年後に久保村家を離れ、笹塚のアパートを借りた。その翌年には、新入社員が3人入社し、小香シャオシャンは教育係を任せられた。

 一方、社会面では、金長牡丹が都知事選に出馬し、話題になったが、結果は落選だった。牡丹を含む妖怪をよく思わない人間がまだいたからだった。


 2026年7月5日。

 何でも屋にある依頼人がやってきた。

 依頼人は、北欧の妖精で絵本などで描かれているトロールだった。鬼塚に中に入るよう声をかけられ、中に入り、椅子に座った。トロールを今まで見た事ない一同は緊張した。

「トロールが何の用で来たんでしょうね」

 昨年入社した金田一育也が言うと同じく昨年入社した目木千鶴が

「やめなさいよ!」

 と肩を叩いた。千鶴の6歳上の姉は昨年妖怪と結婚したため、妖怪には理解があった。

 また、もう1人の昨年入社した藤村莉々は

「まぁ、鬼塚さんと小香シャオシャンさんが事情聞くから」

 と執りなした。

 鬼塚と小香シャオシャンに向かって依頼内容を聞いた。

「おら、ニコライ・ヨハンセンど申します。盛岡で野菜農家してまして、腰痛めだんで農作業手伝ってほしいんだ」

 トロールが腰を摩りながら話すと

「因みに、期間はどのくらいでしょうか?」

 小香シャオシャンが尋ねると

「1週間だ」

 ヨハンセンは、答えた。

 何かに気づいたか千鶴が

「あの、気になってたんですが、日本語上手ですね!方言も話されて!長いんですか?」

 と尋ねた。

「今年で日本さ住んで55年だ」

 ヨハンセンは答えた。

「それで、明日から1週間ヨハンセンさんのお手伝いをするという事でよろしいでしょうか?」

 鬼塚からそう聞かれ、ヨハンセンは頷いた。

 そして、ヨハンセンは4人来てほしい事を伝え、何でも屋を去った。

 その後、何でも屋では誰が行くか話合い、本郷は他の依頼を担当してるため行けず、また、子供がいる一華と一昨年結婚し現在妊娠6ヶ月の伊万里も行けなくなり、その結果、小香シャオシャンと金田一と千鶴、莉々が翌日岩手県に1週間行く事になった。


 翌日、小香シャオシャン達は岩手の駅に着くとタクシーに乗った。ヨハンセンの自宅に着くと、ヨハンセンとヨハンセンの飼い犬のグレートピレニーズのビョルンが出迎えてくれた。

 着いた4人は早速農作業を始め、ヨハンセンは監督よろしく4人を見て回っていた。

 小香シャオシャンはビニールハウスで、トマトを収穫していたが、ヨハンセンが来る前に、ビョルンがやって来て見張るように小香シャオシャンを見ていた。動物が好きな小香シャオシャンはクスッと笑ってしまった。するとビニールハウスにヨハンセンが入って来ると

「ビョルン、おめ来てらったんだ。外さ出で遊んで来なさい」

 そう言うとビョルンは安心したのかビニールハウスを出た。

小香シャオシャンさん、やんべに取らねぁーでちゃんと見で収穫してくなんしぇ」

 ヨハンセンは小香シャオシャンにそう助言し、腰を摩りながら水色の箱を出し、小香シャオシャンに腐ってるトマトを入れるよう渡した。

 小香シャオシャンは改めて作業をするとヨハンセンは小香シャオシャンをじっと見てその後、小香シャオシャンの頭から爪先までよく見ていると

「ヨハンセンさん、どうかされました?」

 小香シャオシャンは少し引いていた。

小香シャオシャンさん、おめ、妖怪だべ?」

 ヨハンセンにそう聞かれ、小香シャオシャン

「え…?」

 と呆然とした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る