第24話牡丹の死

 それからも鬼は人間達を殺害する事件が起こり、人々は怯え始めた。

 これは社会問題となり、中には妖怪と人間の共存を訴えてきた牡丹を責める者が出てきた。


 2033年4月4日。

 4年前に、博物館で警備員を殺害した鬼の正体が酒呑童子だった事がわかった。鑑識などで調べたところ、警備員のお腹に刺さっていた爪を調べ、このような結果が出た。

 このニュースは周囲を驚かせていた。酒呑童子は大昔に退治され首は京都にある首塚大明神に葬られたため、現代にいる事はあり得なかった。

 どうして今になって酒呑童子が出てきたか謎だった。


 このニュースを聞いた小香シャオシャンの所属している研究チームでは、自分達の身を守るため、酒呑童子について研究しなかった。

 その夜、小香シャオシャンは悟雲に電話した。

「悟雲さん、どう思いすか?酒呑童子の事」

「そうだな。生まれ変わりって感じがするんだ…」

「生まれ変わり?」

「よくアニメであるだろ!転生したら○○だったってやつみたいな」

「なるほど。でも、鬼って生まれ変わるんですかね?」

「それはわからない。けど、DNA鑑定とかした結果でわかったから何処かで生きてるんじゃねーか」

「あり得ますね」

小香シャオシャン、お前気をつけろよ」

「悟雲さん、私今年で19歳ですよ?大丈夫ですよ」

「年は関係ない!お前だっていつ狙われるかわからないだろ!」

「はい…」


 それから1ヶ月経った2033年5月2日。

 牡丹はこの日、都内の街頭で演説していた。その演説の中では

「今、酒呑童子が原因で皆さんは怯えて過ごしている事を胸中お察しいたします。源頼光のように早く酒呑童子を退治し、この世の中を平和にしていきたいです!」

 牡丹は泣きながら訴えた。だが、この時事件は起こった。

 牡丹の真後ろに酒呑童子が現れ、牡丹に噛みついてきた。牡丹の首から大量に血が流れ、演説は中断され、周囲はパニックになった。牡丹は病院に運ばれたが、数時間後に死亡が確認された。


 翌日の2033年5月3日。

 小香シャオシャンは鬼塚から連絡を受け、東京へ牡丹の葬儀に参列した。

 小香シャオシャンは葬儀の間、ずっと泣いてた。9歳だった小香シャオシャンに希望を与え、同時に憧れだった。


 牡丹死去のニュースで、牡丹が殺されている動画が度々流れ、子供の中にはトラウマになり、幼稚園や学校に行けなくなった子がいた。

 牡丹は元々好感度があったため、支持者の中には牡丹の仇を取ろうとしている者がいたが、牡丹の妹達にそれが知られ、止めさせた。


 実は、牡丹が殺害される数年前、京都にある首塚大明神では塚に葬られた酒呑童子の首が無くなり、その1週間後、博物館で警備員が殺害された。

 ニュース番組で流された動画を分析した研究者の調べで、牡丹を殺したのは、博物館で警備員を殺した酒呑童子だった事が判明した。

 

 牡丹が亡くなってから小香シャオシャンは塞ぎ込んでしまい、小巻は心配し、小香シャオシャンに暫く休むよう助言した。それから暫く、小香シャオシャンは研究チームの仕事を休む事になった。

「牡丹先生…… 这是痛苦的... 我想多谈谈...(牡丹さん…。辛いよ…。もっと話したかったよ…)」

 牡丹は子供のように泣いた。


 人々が牡丹の死に悲しんでいた頃、沖縄で流れ星が流れていたが、後にその正体が流れ星ではない事が判明した。

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