第33話星熊童子②

 世間が騒いでいる一方、星熊童子は構わず殺害を行っていた。星熊童子が、殺している現場を見て命からがら逃げた者の話によると

「殺す事を楽しんでいる」

「殺す事に喜びを感じているようだ」

 そんな星熊童子は、童子切安綱という刀を恐れていた。童子切安綱はかつて源頼光が所持していた刀で、頼光は、その刀で酒呑童子達を退治した。童子切安綱は現在、西遊記の悪役で有名な牛魔王の孫・小香シャオシャンが、所持している。


 2035年4月25日。

 妖怪の長と言われている山本五郎左衛門と神野悪五郎は酒呑童子が復活した事や妖怪と人間の架け橋になった牡丹が殺害された事に、嘆いていた。

 京都を訪れていた山本五郎左衛門と神野悪五郎はレストラン菊水にいた。そこで、待ち合わせをしていた。数分後、約束の時間になり、相手がやってきた。それは、チャイナドレスを着た女だった。

「山本五郎左衛門様と神野悪五郎様ですか?」

 女が尋ねると

「そうだが」

 神野悪五郎が答えると

「お前は誰だ?なんだか妖怪と人間が混ざった臭いだな」

 山本五郎左衛門が手を仰いだ。

「申し遅れました。私、雷小香レイシャオシャンと申します。お会いできて光栄です」

 小香シャオシャンはお辞儀をした。


 実は、妖怪達から山本五郎左衛門と神野悪五郎が京都に来る事を知った小香シャオシャンは、2人によく連絡している妖怪に是非会いたいと伝えるようお願いし、今日に至った。


雷小香レイシャオシャン…。するとお前は唐から来たのか?」

 山本五郎左衛門が聞くと

「その通りです。私は9つの時、妖怪の血を引いている事が原因で虐めに遭い、この日本に逃げてきました」

 小香シャオシャンがそう答えると、2人は手を叩いて笑った。

雷小香レイシャオシャン、逞しいな。気に入った。妖怪の血とは?」

 今度は、神野悪五郎が聞いた。

「私の祖父母は牛魔王と羅刹女、父は聖嬰大王…幼名は紅孩児です」

 小香シャオシャンは緊張した。

「なるほど。というと、母親は人間か?」

 山本五郎左衛門が考えながら聞くと

「はい。その通りです。山本様」

 小香シャオシャンが答えた。


 小香シャオシャンが山本五郎左衛門と神野悪五郎に会って話す目的は、数年前、何でも屋の依頼でトロールのヨハンセンに問うた『人間と妖怪が手を取り合って暮らしていくにはどうしたらいいか』という答えを妖怪の長の口から聞きたいという事だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る