第5話モンスター

 2023年5月14日。

 小香シャオシャンが久保村家に居候して3日が経った。

 久保村家では、家事や掃除の他に、虎太郎から小学校で習う範囲の勉強を教わっていた。その他に、小香シャオシャンは悦子の紹介で先日から何でも屋で働いている。


 小香シャオシャンは、西遊記の悪役で有名な牛魔王と羅刹女を祖父母に、聖嬰大王を父に、人間の母を持つ妖怪と人間のハーフなのだ。


 仕事から帰ってきた小香シャオシャンは疲れ切ってソファで横になった。

 心配した悦子と伊代は具合が悪いのか聞いたら

「違う」

 この一言で終わった。

 5分後に、虎太郎と希子が帰宅した。

 虎太郎は悦子と伊代に小香シャオシャンがどうしてソファで横になっているか理由を聞いたが、わからなかった。虎太郎は、優しく小香シャオシャン

小香シャオシャンちゃん、どうしたの?今日は新しい算数のドリル買ったからご飯食べてからやろうか」

「ドリルやるけど、少し疲れた」

 小香シャオシャンは乗り気ではない様子だったが、そうこうしている内に夕食の時間となった。

「さあ、ご飯の時話し聞くから起きて」

 虎太郎からそう促され、小香シャオシャンはすぐ起きた。

 夕食時に小香シャオシャンはどうして自分が疲れ切ったか話そうとしたその時、元々ついていたテレビのバラエティー番組でモンスターペアレントの話題が出てきた。小香シャオシャンは、テレビを指差し、

「これだ!これのせいで疲れたんだ!」

 興奮気味に訴えると

「モンスターペアレントの事か?」

 虎太郎が尋ねると小香シャオシャンは頷いた。

「一体何でも屋で何があったんだい?」

 悦子が聞いた。









 それは、遡る事7時間前、小香シャオシャンは鬼塚と一華、伊万里と共に昭島市にある中高一貫校へ向かった。

 この学校の校長と養護教諭から依頼を受けたからだ。学校に到着し、校長らから改めて依頼内容を聞いて確認をした。

 依頼はある人物を止めてほしいとの事だった。その人物は甲斐憲子といい、この学校に通う高校2年の黒田照子の伯母だった。甲斐憲子は照子から保健室によく悩みを聞いてもらっている事を聞いて激怒した。ずっと仕事をし、結婚してないため子供のいない甲斐憲子は照子を幼い時から可愛がっており、照子が誰かに依存しない強い子になってほしく養護教諭が照子に優しくしているのは責任ないからだと教えたかったようだ。照子の両親は1人ぼっちの甲斐憲子の肩を持ち、照子には甲斐憲子には優しくしてほしいと思っていた。また、照子には、甲斐憲子同様強い子になってほしいとも考えていた。

 甲斐憲子は、照子が保健室に行かないように照子のスマホにGPSを付け、保健室に行ったらすぐ駆けつけ、照子を教室まで連行するのだった。

 甲斐憲子の行き過ぎた行動は忽ち学校中で有名になり教師も何度も止めたがクレームばかり言われ、遂に何も言えない状態になってしまった。

 何でも屋は昨日から甲斐憲子を説得しているが、上手くいかなかった。

 ちょうど鬼塚達が来ている時も甲斐憲子は鬼の形相で保健室へ行き、照子を連行しようとしていた。鬼塚が止めに入ったが

「こうしないとこの子は強くならないでしょ?それに高校生がいつまでも先生に甘えるのはおかしいから教室まで連れて行くの!」

 この一言で小香シャオシャンは甲斐憲子を殴ろうとしたが、一華に止められた。

 甲斐憲子は小香シャオシャンのところに行き、

「あなたはこんな保健室ばかり行く高校生になっちゃダメだよ〜。自分で解決できなくなるから!」

 小香シャオシャンは怒りが沸々と込み上がり、

「いや、妖怪なんで高校行くか仕事続けるか自分で進路を決めるんで」

 と静かに怒った。

「まあー!そうだったのごめんなさいね〜!」

 甲斐憲子は照子を連行する事を諦め逃げるように去った。


 これが事の顛末だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る