第6話小香、GPSを破壊する!

 2023年5月17日。

 朝、養護教諭の水戸雪乃と山寺孝子は作業をしていた時、電話がかかってきた。

 水戸雪乃が電話に出ると

「水戸先生ですか?私、黒田照子の伯母の甲斐憲子です!」

 刺々した声の甲斐憲子だった。

「おはようございます」

 水戸雪乃は事務的に返事したが、甲斐憲子はそんな事は気にしない様子で

「先生、なんでうちの姪に保健室へ相談しに来るのを断らなかったんですか?」

「前回もお話ししましたが、今の保健室は具合の悪い生徒だけじゃなくて心の悩みを抱えいる生徒も受け入れているんです!」

 このような会話は何度もあった。その度に、水戸雪乃は懇切丁寧に説明するのだが、甲斐憲子には伝わらなかった。

 1時間後、電話を切ると山寺孝子から

「また照ちゃんの伯母さん?」

 そう聞かれると

「そうなんです。またなぜ照ちゃんが保健室に来るのを断らなかったのかって…。これで何度目か…」

 水戸雪乃は頭を悩ませていた。

「相手にしないほうがいいよって言いたいところだけど、無理だよね…。また何でも屋さんに来てもらう?」

 山寺孝子が提案した。

「そうですね…。この間来た妖怪の女の子、あの子に来てもらった方がいい気が…」

 水戸雪乃はそういうと鬼塚に電話をかけた。








 鬼塚に言われ、小香シャオシャンは学校に向かった。小香シャオシャンは甲斐憲子にムカムカしており、鬼塚から依頼を聞いた瞬間、妖術を使いたい旨を伝えたが、怪我や事故の元になるかもしれないため、却下された。

 早速、小香シャオシャンは、校長と水戸雪乃と山寺孝子に挨拶し、小香シャオシャンのために用意された椅子に座り、プールの監視員のように甲斐憲子が来ないか目を光らせていた。保健室に来た他の生徒の目には椅子に座り周りを見ている怪しい子供に映った。

 その度に

「お気になさらず」

 と笑顔で返した。

 すると、照子が入ってきた。

 照子の姿に気づき、小香シャオシャンは声をかけた。ふと小香シャオシャンはある事に気づいて、照子のスマホのケースを外した。外した途端に、黒い小さな物体が落ちた。よく見るとそれは、GPSだった。

 小香シャオシャンは、これを照子だけでなく、水戸雪乃と山寺孝子にも見せた。

「もう、憲子ちゃん信じられない」

 照子は呆然とし、水戸雪乃と山寺孝子は甲斐憲子の異常な行動に言葉が出なかった。

小香シャオシャンちゃん、どうするの?」

 照子からそう聞かれると小香シャオシャンは、GPSを床に置き、それを力一杯踏み潰した。GPSは破壊され、制御不能となった。

「これで大丈夫!あの伯母さん、今頃焦ってんだろうな…」

 小香シャオシャンは上機嫌になった。


 だが、小香シャオシャンの予想は外れ、GPSが壊された事に気づいた甲斐憲子は仕事に集中できなくなった。


 照子は安心して水戸雪乃と山寺孝子に、自分の悩みについて聞いてもらう事ができたが、放課後、事件が起こった。

 甲斐憲子は、学校に入り、保健室に行くと小香シャオシャンの肩を激しく揺らしながら、罵詈雑言を浴びせていた。水戸雪乃と山寺孝子は甲斐憲子を止めて収まり、照子の手を引っ張って学校を去った。


 GPSを壊された甲斐憲子は朝だけでなく昼や放課後もクレームを電話を入れ、終いには、何でも屋に依頼した事まで悪口を言い始めた。

 これが毎日続き、学校側は毎回飽き飽きしていた。

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