第21話童子切安綱

 2029年6月17日。

 小香シャオシャンと牡丹は、小巻の車で博物館へ行った。源頼光が酒呑童子を殺した際に使った刀を見るためだった。

 お目当ての刀を見た小香シャオシャンは目を輝かせて見ていた。

「この刀は童子切安綱っていうのよ!」

 小巻が説明した。

 だが、展示されている童子切安綱が微かに動いたのを小香シャオシャンは見逃さなかった。


 今度は別の博物館に行き、酒呑童子に関する展示を見た。

 今までアニメや童話の世界でしか聞いた事なかった鬼に、小香シャオシャンは熱心に展示を見ていた。その熱心さに、牡丹と小巻は感心していた。

 近くのレストランで食事をしている時、小巻は

「中国の妖怪って言ったらやっぱり孫悟空やあなたのお祖父様達なの?」

 と小香シャオシャンに聞いた。

「はい。後は妲己という狐の妖怪がいますし。孫悟空はご子息が日本に住んでます。私、会った事があります」

 小香シャオシャンはそう言って悟雲達の話をした。

「そうなんだ。意外ね。孫悟空と牛魔王は義兄弟だったから何かしら繋がってるのね」

 小巻は興味深そうにしていた。

「やはり妖怪や妖怪の血を引く者が人間社会で逞しく生きている話を聞いてやりがいを感じます」

 牡丹はほっとした。

 その後、小巻が小香シャオシャンと牡丹に京都を案内し、ホテルに戻った。

 ホテルに戻り、小香シャオシャンは童子切安綱が動いていた事を考えていた。


「まさか、酒呑童子が生まれ変わっているのでは…」


 小香シャオシャンは考え過ぎてしまった。


 翌日の2029年6月18日。

 その日は、小巻の勤める大学へ行き、見学だけでなく、特別に小巻が授業に小香シャオシャンと牡丹を呼んだ。授業は盛り上がり、学生らは、どんどん質問した。


 その夜、博物館では童子切安綱が揺れるように動いていた。それを警備員を殺して無断で入った鬼がいた。


 2029年6月19日。

 昨日、博物館で警備員が鬼に殺害され、死亡したニュースが流れ、小香シャオシャンは驚きを隠せなかった。牡丹は、ショックで寝込んでしまった。

 小香シャオシャンは、牡丹の看病をした。


 一方、博物館では、警察の取り調べが行われた。その結果、殺人以外に童子切安綱がガラスを割り、飛ぶように何処へ行ってしまった事がわかった。


 小香シャオシャンは3年前にヨハンセンの家で聞いた話を思い出した。その時、ヨハンセンはこう言った。



「鬼だ。鬼が蔓延って犯罪犯したりしてらがらなんだ」



「強いで言うんだら鬼鎮める方法探してからだなはん。例えば、鬼殺せる刀探すとが」


「刀は例えだよ。後、これは噂だんだども、源頼光が酒呑童子を殺した刀があるらしいだよ!」



「もしかして…酒呑童子…?」

 小香シャオシャンは呟いた。


 だが、警備員を殺した鬼は結局見つからず、分からず終いだった。


 その夜、小巻から連絡があり、牡丹の体調を心配していた。小香シャオシャンは夕方に牡丹が元気になった事を伝え、小巻は安堵した。だが、体調とメンタル面を考え、牡丹は早めに帰る事になった。

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