第9話鞍馬の少年

 2023年6月1日。

 京都に住む鞍馬桃太郎は、噂で牛魔王の孫が中国から逃げるように日本に来たと話を聞いた。あの悪役の孫だから強いのだろうと桃太郎は幼稚な考えをした。

 鞍馬山の天狗、初代僧正坊のひ孫で桃太郎は昔から名前がや幼稚でルーズな性格で馬鹿にされたりしていたが、術は僅か5歳で全て使えるようになった。


 東京に着いた桃太郎は適当に新宿をぶらついていたが、ビルから数名の人が出て来た。その中には1人の少女がいたのを桃太郎は見逃さなかった。

小香シャオシャンちゃん!」

 一華にそう呼ばれた少女は

「はい!」

 小香シャオシャンが返事をしたその時、桃太郎はダッシュして少女のところまで来た。一同は何事かと思ったが、桃太郎は無視して

「牛魔王の孫ですか?初めまして!鞍馬桃太郎です!」

 桃太郎が自己紹介すると

「鞍馬…桃太郎…。聞いた事あるな…」

 鬼塚が呟いた。鬼塚は小学生から高校まで京都に住んだため、京都の知り合いの妖怪が何匹もいた。

「牛魔王の孫ですよね?」

 また桃太郎が聞くと

「そ、そうですが…」

 小香シャオシャンが引いた。

「僕と勝負してください」

 桃太郎が頭を下げると小香シャオシャンは後退りをし、断った。桃太郎はまだ諦めてない様子で、

「また来ます!」

 と言って去った。

 一同は何事かと思ったが、鬼塚だけは思い出そうとしている様子だった。


 翌日の2023年6月2日。

 桃太郎は何でも屋に道場破りのように入り、小香シャオシャンの姿を見つけると勝負を挑もうとしたが、小香シャオシャンは断り続けた。1時間後、小香シャオシャンは仕方なく承諾した。

 小香シャオシャンは桃太郎と代々木公園に行き、早速桃太郎は天狗の団扇を出し、天狗風を吹かせた。一方、小香シャオシャンは芭蕉扇を出し、風を吹かせた。だが、お互いが吹かせた竜巻になり、公園にいた人々は逃げ出した。

 心配で様子を見に来た鬼塚がすぐ止め、勝負は中断された。

 桃太郎はまだ懲りずに小香シャオシャンにウィンクした。


 帰宅し、久保村一家に桃太郎の事を話すと虎太郎と希子が驚いて小香シャオシャンに鞍馬の天狗の説明をした。虎太郎と希子は実は、妖怪が好きで小香シャオシャンが久保村家に居候する事になった時はすぐ受け入れてくれた。

小香シャオシャンちゃん、大変なのに目つけられたね…」

 虎太郎が言うと希子は

「芭蕉扇でよく立ち向かったね」

 と感想を言った。

「いや、相手が天狗の団扇出したからつい…」

 小香シャオシャンが困った。と言うのも勝負の続きをしようと強制的に言われた。


 2023年6月3日。

 再び小香シャオシャンは桃太郎と代々木公園で勝負する事になった。

 だが、桃太郎は天狗の団扇を吹かせた風でなく、空を飛んだ。小香シャオシャンは術で黒雲を出し、それに乗った。小香シャオシャンは芭蕉扇を出そうとしたその時、桃太郎が小香シャオシャンの腕を掴んだ。小香シャオシャンは振り解こうとしたが、桃太郎は力強く掴んでいた。下に降りても桃太郎は小香シャオシャンまだ腕を掴んでいて小香シャオシャンが足蹴りしてやっと解かれた。桃太郎は地面に倒れたの隙に小香シャオシャンは逃げようとしたが、桃太郎が首を絞めようとしたその時、

「桃太郎!いい加減にしろ!」

 1人の男が走ってき小香シャオシャンから桃太郎を引き離し、桃太郎の頭を叩いた。

 桃太郎は倒れ込み、泣き出した。

 男の後に鬼塚がやって来て

「僧正坊様、やっぱり貴方のご子息だったんですね」

 男は、桃太郎の父親で3代目僧正坊だった。

「バカ息子が申し訳ございません。こんな華奢なお嬢さんに勝負を挑もうとは…。京都に帰ったら厳しく叱っときます」

 僧正坊はそう言うと桃太郎の腕を掴み、京都へ帰って行った。

「覚えてろー!」

 桃太郎が涙目で言った。

 鬼塚は、小香シャオシャンの怪我を心配し、今日は早退するよう助言した。

 小香シャオシャンは帰宅すると悦子に怪我の手当てをしてもらった。以前、小香シャオシャンが昭島の学校で大怪我をしてから久保村一家は外で怪我をするとかなり心配するようになった。


 京都に帰った桃太郎は3代目僧正坊にお灸をすえられ大人しくなったそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る