第47話遺された小香

 2035年8月12日。

 小香シャオシャンは北大路が亡くなって1週間後、北大路の実家がある滋賀を訪れた。

 実家に着くと北大路の両親が出迎えてくれた。

 お線香を上げた後、小香シャオシャンは、北大路の母から

「蓮から貴女の話は何回も聞いたわ。それに、貴女の事、結婚を考えてる女性だって」

 小香シャオシャンはそれを聞いて泣き出し

「蓮さん…私の事、そう思ってたんですね…」

 と涙声で言った。

「あの子、小香シャオシャンさんが酒呑童子を倒したら結婚して静かに一緒に暮らしたかったみたい」

 北大路の母はティッシュを小香シャオシャンに渡して話した。

小香シャオシャンさん、お葬式の時にも言いましたが、どうか酒呑童子共を倒してください。そうすれば、蓮も安心するでしょう」

 北大路の父はそう言って頭を下げた。

「まず…蓮さんを殺した鬼…子供の頃の私を虐めた奴らを倒して蓮さんの仇を取ります」

 小香シャオシャンは真っ直ぐ北大路の両親を見つめた。


 北大路の実家を後にすると小巻から連絡が来た。

「大丈夫?凄く辛かったね…。気持ち治すのに時間かかるかもしれないけど、思い詰めないで。ところで、小香シャオシャンちゃん、貴女有給使ってないでしょ?」

 小巻からそう聞かれ、小香シャオシャンは頷くと

「だから心の傷を癒すためだと思って使ってほしい!」

「けど胡桃沢先生、私は…」

「彼氏が亡くなって辛いのは分かるよ!それに仕事しなきゃも分かる!けど、今の小香シャオシャンちゃんを見たら彼氏はどう思う?仇を取るんでしょ?」

 小巻から厳しく言われ、小香シャオシャンは黙ってしまった。小巻の言う通りだ。今の自分を見て空から見守っている北大路がどう思うから考えなきゃだった。

「わかりました…」

「ただ家にいるのあれだから鬼塚さんから何でも屋の時行った岩手の…トロールの農家さんの連絡先聞いてそこに少しの間行って田舎の空気を吸ってリフレッシュして来なさい」

「わかりました」

 小香シャオシャンは返事した。


 小香シャオシャンを心配した小巻は恩師の養子だった鬼塚に連絡し、事情を説明すると鬼塚はヨハンセンの事を思い出し、小香シャオシャンにヨハンセンのところに行くよう助言した。


 翌日の2035年8月13日。

 小香シャオシャンは岩手へ旅立った。駅に着き、タクシーでヨハンセン宅まで乗った。

 ヨハンセン宅に到着するとヨハンセンと愛犬のビョルンが出迎えた。

 自宅に入ると小香シャオシャンはヨハンセンに今まであった事を話した。

「んだが…。小香シャオシャンさん、辛がっただなはん。大事な彼氏さんがまなぐの前で殺されでその亡ぐなった彼氏さんが小香シャオシャンさんとの結婚考えでらった事後で知る事さ…」

「はい…。彼は酒呑童子を倒したら私と結婚して静かに暮らしたかったって彼のご両親から聞きました」

「亡ぐなった彼氏さんを殺したのは、おめはんを虐めだ人達なんだよね?余計辛えでねぁーが?」

「辛いですよ。そいつらが原因で中国から逃亡して来たんです。9歳の時でした」

「9歳だが!?ニュースで小学生がら高校生までの子が虐めで苦しんで自殺して亡ぐなる子がいだぐらいだよね。虐める人間は一生直らねぁーがら厄介だがらどうすんべーもねぁーし…」

 小香シャオシャンもその話は聞いた事あった。虐めが原因で自殺して亡くなったり不登校になった子供がいたニュースを。

 小香シャオシャン希腊シーラ達にどう立ち向かい北大路の仇を取るか考えなければいけない。

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