第11話孫悟空の息子

 『西遊記』の主人公の息子・孫悟雲は、都内の大学に通っていた。悟雲は数週間前からかつて父の悟空と兄弟の契りを交わした牛魔王の孫娘を探していた。

 牛魔王と孫悟空は、唐の時代から1,000年以上経った頃に和解した。日本はその時、江戸時代だった。それ以降お互い連絡を取り合っていた。


 2023年5月20日。

 悟雲は中国にいる父の悟空から牛魔王の孫娘がいなくなったと聞いて孫娘探す事になった。

 悟雲は、同じ大学に通う猪八戒の息子の猪八刑、沙悟浄の息子の沙麗浄、玉竜の娘の玉蘭と共に、孫娘を探す事になった。


 1ヶ月後の2023年6月19日。

 悟雲らは、上野の本屋で1人の少女を見つけた。牛魔王から送られた写真と照らし合わせてみて本屋にいた少女と一致した。

 声をかけようとしたが、誰かと一緒にいたため、出来なかった。

 本屋を出た後、悟雲達は、別日にもう一度上野付近に行こうと話が決まり、出直す事にした。


 2023年6月21日。

 悟雲は、授業が終わった後、スマホの着信音が鳴り、出ると相手は牛魔王だった。

「もしもし…。牛魔王?…実は人間の家族のところにいるみたいで…え?それが上野の本屋に見かけたんだよ!だけど、俺らより先に店出たから後はわからない…。すまん…。では」

 電話を切ると悟雲は少し焦り始めた。孫娘について、ぼんやりした情報しかないため、大学を出た悟雲は帰り道にばったり会った八刑達と再び上野に向かった。

 自分達がいた本屋の周辺を集中して探したが、孫娘はなかなか見つからなかった。最終手段で、SNSも見たが、手掛かりがなかった。

「兄貴、今日はこの辺りにしたらどうだ?」

 八刑の一言で捜索を中断した。



















 2日前の2023年6月19日。

 夕食を終え、虎太郎に買ってもらった『西遊記』の本を読んでいた小香シャオシャンは本に描かれていた主人公の孫悟空のイラストを見て昼間に本屋ですれ違った大学生グループを思い出した。あまりにも唐突だったため、なぜ大学生グループを思い出したか理由が見当たらなかった。

「孫悟空…」

 小香シャオシャンはそう呟いていた。


 この時、小香シャオシャンは自分の祖父母と孫悟空が300年以上前に和解していた事を知らなかった。

 




















 2023年6月28日。

 悟雲は自分のアパートで課題をやり終わり、何気にSNSを見ていた。

 その中で気になる投稿を見つけた。それは、2ヶ月以上前に、老人ホームにて1人の少女が羅刹女が持っていた芭蕉扇を使って庭を掃除している写真だった。悟雲は、投稿した老人ホームにアポイントメントを取り、その後、八刑達にLINEで事の次第を打った。

 悟雲に光が見えてきた。

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