第34話 スイーツ巡り

       【スイーツ巡り】

①カスタードシューアイス

・学校の最寄り駅から徒歩5分ぐらいのところ

・日向の思い出の場所

・前にカスタードシュークリームを食べた。とろとろでうまうま


②カスタードワッフル

・明莉ちゃんオススメの店

・学校付近にある

・食べれば幸せらしい


③カスタードクリームスイートポテト

・日向の家の近くにある

・まだ誰も行ってないので行ってみないと味はわからない




 このスイーツ巡りについて書かれたメッセージが沙夜から俺と椎名さんに送られてきたのは7月30日。


 この1から3まで1日で全て回るのかはわからないが、どれも食べてみたいものばかりだ。


 全部行くの?と俺と沙夜と椎名さんのグループへメッセージを送ると主催者の沙夜が、可愛いクマがうん!と言っているスタンプを送ってきた。


 このスタンプ可愛いな。無料みたいだし俺も持っておこう。


 先ほどからメッセージでやり取りしているが、実は沙夜は隣に座っている。それも俺の肩に寄りかかって。


「日向は、どれが食べたい?」


「どれも食べてみたいなぁ。けど、このカスタードクリームスイートポテトが気になるかな」


「あっ、私もそれ気になる。スイートポテトも好きだから」


 好きなものの話、特にカスタードスイーツについて語っている時の沙夜は、いつも楽しそうだ。聞いているこちらも楽しくなる。


「明日からが楽しみ……」


 スマホの画面に移るカスタードシュークリームを見てうっとりする沙夜の目はキラキラしていた。





***





 翌日。学校の最寄り駅集合で、その場所へ行くと先に椎名さんが来ていた。

 

 白のティーシャツとデニムショートパンツを履いた椎名さんは、俺が来たことに気付くとスマホから顔を上げた。


「おはよ、河井くん!」


「うん、おはよう椎名さん」


 椎名さんの明るい笑顔を見て、眠たかったが、眠気が覚める。


「今日も暑いね~、どうぞ使って?」


 そう言って椎名さんは小型扇風機を貸してくれた。


 暑い中、ここまで来たので扇風機の風がとても気持ちいい。少し涼んだ後は、椎名さんも暑いと思うのですぐに返した。


「ありがとう、椎名さん」


「えっ、もういいの? 使っててもいいよ?」


 彼女はそう言うが、椎名さんが暑くて手で扇いでいるのを見たので返した方がいいだろう。


「ううん、大丈夫」


「そっかそっか、なら、こうしたら……ね?」


 椎名さんは俺の横に並び、手で持った扇風機をちょうど真ん中辺りに扇風機をもっていく。


「し、椎名さん?」


 距離が近く、俺は驚いた。こういう誰とでも仲良くなれる系の女子はこの距離が普通なのか。にしても近すぎるが。


 彼女持ちの俺が見ていいものではないが、椎名さんのあれの大きさに二度見しそうになった。


「これなら2人で涼しくなれるよ」

 

「う、うん……」


 少し彼女から離れても椎名さんは、寄ってくる。なので逃げられない状態だ。


「後は沙夜ちゃんだけだね」


「そうだね。電車1本乗り遅れたらしいから遅くなるかもとはメールで来てるけど」


「そうなんだ。じゃ、沙夜ちゃんが来るまで何か話そっか。私、河井くんのことあんまり知らないから知りたいなっ」


 そう言えば、椎名さんのことはあまり知らないなと思い、頷く。


「椎名さんは、軽音楽部でボーカルやってるって言ってたけどライブとかしてるの?」


 軽音楽部のライブを見たのは新入生オリエンテーション。文化祭や定期的に中庭でやっているのは聞いたことがあるが見に行ったことはない。


「してるよ。今度は文化祭かな。良かったら沙夜ちゃんと見に来て欲しいな」


「うん、沙夜を誘ってみるよ」


「うんうん、待ってるよー。河井くんは、部活はしてないんだよね……好きなこととかある?」


 好きなこと、つまり趣味だ。言う前に頭の中で考えてから答えることにした。


「バスケ、読書、後は沙夜に教えてもらってからチェスが好きになったかも」


「元バスケ部だったりして?」


「うん、バスケ部に入ってたよ。やめたけど毎週日曜にはよく旭とやってる」


「へぇ~久保くんと。見てみたいなぁ河井くんのバスケ姿」


 彼女は、俺の顔を覗き込むじっと見てきた。さらさらの綺麗な髪が肩に落ちてきて、綺麗な瞳に自分がうつる。


「見ても面白くはないと思うよ」


「そうかなぁ~。あっ、沙夜ちゃん来たよ」


 椎名さんは、少し俺から離れて大きく手を振った。


 別に集合時間に遅れたわけではないが、1番最後だと気付き、沙夜は改札を抜けて走ってきた。


「お、お待たせ……ごめんね、遅くて」


 はぁはぁと息が乱れ、呼吸を整えることなく謝るので俺は「大丈夫」だよと優しく言う。


「おはよ、沙夜ちゃん。私も河井くんも今来たばかりだから気にしないで」


「ありがと……じゃあ、カスタード巡りしよっか」




***


 


 

 学校の最寄り駅から徒歩5分ぐらいのところにあるカスタードシューアイス。ここは前に沙夜と来た場所でもあり、小さい頃の思い出の場所だ。


 前回は普通のシュークリームを食べたが、夏なのでシューアイスを食べることに。


 お持ち帰りにし、陰になっているベンチに3人並んで食べることにした。


「はむっ……むむむっ! うんまぁ~だね」


 一口食べた沙夜が、笑顔でこちらを向く。食べ方も可愛いし、なにより笑顔が可愛い。あれ、どうしよう、さっきから可愛いしか言えなくなってる。


 可愛いと思っていたのは俺だけではないらしく椎名さんもだった。


「沙夜ちゃん、天使。美味しいね、シューアイス」


「うん、美味しい。2人ともこの後、カスタードワッフルとカスタードクリームスイートポテト食べれそう? 私は行く予定だけど、無理しなくていいよ」


 この後すぐに行くらしく、俺と椎名さんは顔を見合わせる。おそらく同じことを思っているはずだ。


「俺は最後まで付き合うよ」

「私も! カスタードスイーツならいくらでも食べれるからね」


 沙夜がこの日のためにいろいろ店を調べてまとめてくれたことを知っているからこそ最後まで彼女に付き合いたい。


「2人とも……ありがとう」






***





『今日は、楽しかったね』


「うん、どのカスタードスイーツも美味しかった。カスタード巡りを提案してくれてありがと」


 カスタード巡りをしたその日の夜、俺と沙夜は電話で今日はどうだったかと語り合う。


『いえいえ。そうだ、日向……明日は空いてる? お母様がその日なら会えるって』


「明日……うん、大丈夫だよ」


 ついに沙夜のお母さんとの対面。冷たい人と聞いたから今からとても緊張してきた。


『それなら良かった。じゃあ、そろそろ寝るね。おやすみ、日向』


「うん、おやすみ」







         

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