第50話 お泊まり

「はむっ……むむむっ!」


 ホットドッグを食べた後、沙夜はシュークリームを食べていた。


 食べている姿があまりにも可愛すぎてじっーと見ていると舞桜から見られていることに気付いた。


「日向、本当に古賀さんのこと好きなのね。彼女、可愛いから見とれてしまうのはとってもわかるけど、私のことも見てよ……なんて」


 舞桜はそう言って顔を赤くして、手で顔を隠した。


(自分で言って恥ずかしくなってる……)


 見たらいけないのかと思い、すっーと目線をそらすと舞桜に肩をガシッと掴まれた。

 

「さっ、さっきの忘れて! ね、日向?」

「う、うん……こ、怖いよ?」


 しばらくユサユサされていると食べ終えた沙夜が後ろから服を少し引っ張ってきた。


 後ろをチラッと見ると沙夜からじとっーとした目で見られた。


「大原さんと仲良さそう……。私より大原さんのこと好きなの?」

「……心配しなくても沙夜が1番だよ」

「ふふっ、良かった」


 沙夜は、俺の腕にぎゅっと抱きつくと小さく笑う。


「次何食べよう……」

「まだ食べるの!?」





***




 文化祭1日目が終わり、沙夜が泊まりに来た。何もなしでくるのはさすがにあれなので、彼女は一度家に帰ってからこちらへ来た。


 一緒に夕食を食べた後、沙夜は先にお風呂に入りでてきた。


「じゃっじゃーん、モコモコクマさん」


 お母さんは沙夜の肩にポンッと手を置き、読書していた俺に言った。


 顔を上げるとそこにはそれはパジャマなのかと突っ込みたくなるほど可愛らしいクマのパジャマを着た沙夜がいた。


「見て可愛すぎない!? 沙夜ちゃんに着せたくて買っちゃったっ」


 いや、買っちゃったってお母さん……。可愛すぎるのはわかるけど、沙夜を困らせるのはやめてほしいだけど。


 お母さんは、クマのパジャマを紹介し終えるとお風呂へ行ってしまい、リビングには俺と沙夜だけになった。


 再び、彼女のことを見ると口元が緩んできて手で隠そうとすると沙夜は俺のところに来て、聞いてきた。


「日向……どうかな」

「! えっと……凄い可愛い。似合ってるよ」

「ふふっ、それなら良かった。これ、ふかふかだから触ってみて」


 沙夜は俺の手を取り、クマのパジャマを触ってもらおうとしたが、手はまさかの場所へ。


 あれ、ふかふかって聞いたのに柔らかい……って、そんな場合じゃない!


 慌てて、手を離すと目の前にいる沙夜は、顔を真っ赤にしていた。


「ご、ごめん!」

「……日向が謝る必要はないよ。私がこのふかふかを触ってほしくてやってしまったことだから」

「ほ、ほんとごめん……」

「……私は日向ならどこを触られても嫌じゃないよ。寧ろ、触ってほしいな」


 そう言いながら彼女はクマのパジャマのチャックを下げていくので俺は慌てて止めた。


「ストップストップ!」

「日向? 顔近いけどキスしたくなった?」

「いや、そうじゃなくて急に脱ぎだそうとするから」

「脱ぐ? ちょっと暑いから少し下げようと思っただけだよ」

「えっ……あっ……なんかごめん」


 寧ろ、触ってほしいなとか言われた後だったから勝手に変な想像をしてしまった。そうだよな、リビングでそんなことするわけないよな。


「日向がお風呂上がったらたくさんイチャイチャしようね」

「う、うん……」


(今日、俺、寝れるかな……)





***




「ん~気持ちいい。寝るの最高……」


 ごろんと俺のベットに寝転んだ彼女は、幸せそうな表情をして目を閉じた。


「パジャマ持ってきたって言ってたけど、クマのパジャマで本当にいいの?」


 クマのパジャマはほぼ強制的にお母さんから着せられたもの。嫌なら無理して着なくていいよと言おうと思っていたが、沙夜は、コクりと頷いた。


「日向が可愛いって言ってくれたから今日はこれで寝るよ。日向、早く隣来てほしいな」


 彼女は端により俺が寝転ぶのを待っていた。このベットは1人用なので2人が寝転ぶと狭いと気がするが、来てほしいと言われたので取り敢えず隣へ寝転んだ。


 横を向くと彼女と目が合い、沙夜が笑ったのでつられて俺も笑った。


「日向、ぎゅーしてもいい?」

「いいよ」

「やったっ、ぎゅー」


 モコモコのパジャマで沙夜は背中に手を回して俺に抱きつく。


 心臓のドキドキが彼女に伝わっているんじゃないかと思うと恥ずかしい。俺も沙夜みたいに急に何をされても大丈夫な耐性がほしい。


 抱きつかれて危ないところまでいってはいない。このまま寝るまで色々抑えよう。


「日向はぎゅーしない?」

「したら苦しくならない?」

「そっとなら大丈夫……」

「そっと……」


 ぎゅーされるだけでドキドキしているというのに抱きしめるなんてしたらどうなるか。けど、沙夜がしてほしいというならそんなこと気にしてられない。


 同じく手を彼女の背中に回すとぎゅっと抱きしめて自分の方へ寄せた。

 

「日向からいい匂いがする」

「沙夜と同じだと思うけど」

「自分の匂いはわかんない……」


 同じものを使ったので俺も沙夜も同じ匂いのはずだ。それなのに沙夜の方がいい匂いだ。


 嗅ぎすぎると変態みたいなるので、匂いのことは一旦、忘れる。


「そうだ。今度、日向と行きたいところがあるんだった」

「行きたいところ?」


 飲食店かなと思っていると予想は当たっていた。


 カフェ『sakura』。そこではプチシューが食べることができ、種類がたくさんあるらしい。もちろん、カスタードがある。


「抹茶、イチゴ、カスタード……後、期間限定で芋があるんだよ」

「へぇ~、それは気になるかも」

「プチシュータワーっていうのもあってね、チャレンジしようか迷ってる」


 プチシュータワーとはなんだろうか。プチシューが積み重なっているのは想像がつくが、いくつぐらいあるのだろう。


「日向と久しぶりに放課後デート楽しみにしてる」

「うん、俺も」


 付き合う前から沙夜とはよく放課後にカフェに行ってカスタードスイーツを食べている。最初が4月からとなるともう6ヶ月経ったのか。時が経つのは早いな。


「日向、寝る前に」


 沙夜はそう言って顔を近づけてきて、キスをした。


 キスは短く、これで終わりにしたかったが、今度は自分からキスをした。


「沙夜、好きだよ。誰が何と言おうと俺は沙夜の味方だから」


 小さな手を取り、指を絡めてぎゅっと握ると沙夜は頭を胸にぐりぐりと押し当ててきた。


「日向……私も好き。ううん、大好き。これからもずっと一緒にいてね」

「うん、俺は沙夜の側にいるよ」

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