第38話 沙夜のオススメスポット
中華街から離れて俺と沙夜は、歩いてとある場所へ移動する。俺は、彼女からどこに行くかは聞いていないので着くまでのお楽しみだ。
「日向とデート、楽しい……次は、日向が好きな場所に2人で行きたいな」
沙夜といて思ったことがある。好きなものを共有をすることによって、彼女の知らなかったことが知ることができる。
(好きなものの共有っていいな……)
「うん、今度は俺が好きなところに沙夜を連れていくよ」
「わぁ~、密室?」
「何でそう思ったの?」
「ふふふっ、日向もそろそろ私とシタくなったかなと思って……」
「!」
俺はそんなにヤリたそうな顔をしているのだろうか。
沙夜のことは好きで、触れたいとかそういうことは思うが、キスから先のことはまだ早い気がする。彼女のことが大切だからこそ焦って先に進めるというのはあまりしたくない。
「あっ、ここだよ。絶景スポットであり、私のオススメスポット」
中華街から歩いて着いた場所は、綺麗な海だった。海の近くだからか少し風が強い。
2棟の赤煉瓦倉庫の近くには海が広がっている。これは、彼女の言う通り絶景だな。
「素敵な場所……写真撮る?」
今日は、食べてばかりで2人での写真は1枚も撮っていなかったので彼女に提案する。
「うん、思い出に残したいし撮ろう……」
彼女が頷いてくれたので一緒にここで写真を撮ることにした。
お互いに近づいて、写真を何枚か撮る。俺のスマホで撮ったので写真は後で沙夜に送ることにした。
その後は、しばらくお互い言葉を交わさず海を眺めていると沙夜が俺の腕をつつくので、彼女の方を見る。
「ね、キスしよ?」
「キス? ここで……?」
「うん、ここで。私たちの近くには誰もいないし、見られる心配はない……」
彼女が後ろを振り返り、周囲を見るので、俺も周りを見てみる。確かに近くに人はいないから見られることはないだろう。
「そう、だね……」
「じゃ、我慢しないよ」
彼女がそう言うと俺の方へ近づき、背伸びをして唇を重ねてきた。
長めのキス。理由はわからないがこの前よりふわふわした気持ちになるのはなぜだろうか。
沙夜は、唇を離すと俺の胸に寄りかかってきた。ふわっと良い匂いがしてきて、彼女をぎゅっと抱きしめようとしたが、小さな声が聞こえてきて手を止めた。
「日向、お腹が……」
「えっ、もうお腹空いたの?」
「うん……たくさん食べたけど、足りなかったみたい」
コクりと頷く彼女が可愛いと思い、俺は優しく頭を撫でる。
「何、食べたい?」
「パンダシューが食べたい……かも」
パンダシューって何だろうか。シュークリーム的なやつかな。
彼女から詳しく聞くとカスタードクリームと生クリームが入っているスイーツらしい。
食べれるかはわからないが、とても気になるスイーツだ。
海から離れて中華街の方へ戻り、パンダシューというものを食べることに。
「ほんとにパンダだ……」
「可愛いでしょ?」
作ったのは沙夜ではないんだが、どや顔で俺にパンダシューを見せてきた。
(なぜどや顔……)
「うん、可愛い」
「ふふん、じゃ、最初に一口どーぞ」
俺はもうお腹一杯で一口だけ食べる予定だったが、彼女は先に食べていいよと俺に渡してくれる。
「沙夜が買ったんだし、先にいいよ。なんなら全部食べてもいいし」
お腹が、空いているのは沙夜だ。俺は余ったら食べると言っているので、後の方がいいだろう。
「先に日向に食べて欲しいな……」
キラキラした目で見てくるので断りにくく俺は、一口もらうことに。
「美味しっ……いや、うまうまだな」
「ふふっ、うまうまでしょ。後、もらってもいい?」
「うん、いいよ。俺はもう食べれないから」
胃薬いるかなぐらいにお腹が一杯なので後は、沙夜に食べてもらおう。
「じゃ、食べるね……うんっ、やっぱり好き。カスタード、ラブ」
沙夜のカスタード愛は本当に凄い。
今日、彼女は俺と行きたいからここに誘ってくれた。けど、本当は違う。沙夜は、この前あったことに対して何かあるからここへ来たんだ。
「沙夜、宝生にまた何か言われた?」
「! 日向は凄いね。私が怒ってる時、いつもよりたくさん食べること知ってたの?」
「えっ、あっ、ううん、知らない。初めて知った。ただ、忘れたい出来事があって自分の好きなことをしに来たのかなって思ったんだよ……話なら聞くよ」
そう言うと沙夜は、パクっとパンダシューを食べ始め、あっという間に完食した。
そして、彼女は俺に中学のバレンタインの時に宝生にされたことを話してくれた。
「だから宝生くんのこと嫌いなの。中学の時には大好きなカスタードを粗末にした。この前は、日向のことを悪く言った。怒らないわけないよ」
「うん、それは俺だって怒る。好きな人のこと悪く言われたら」
「……もう気にしてないから大丈夫。日向、話聞いてくれてありがと」
「ううん、こちらこそ話してくれてありがとう。話した方が気持ちが楽になることもあるからこれからは気軽に話していいよ」
そう言うと彼女は、俺の手を取り、ニコッと微笑んだ。
「ありがとう日向」
***
その日の夜。私は、明莉ちゃんとビデオ通話で話していた。
「でね、パンダシュー食べたの……」
今日あった楽しい出来事を話すと明莉ちゃんは、楽しそうに聞いてくれていた。
『へぇ、いいなぁ~。行ったことないから私も行ってみたい』
「なら私と今度行く?」
『あっ、いいの? 私でいいなら一緒に行こっ』
「うん、行こ」
中華街での話が終わるとこの前のカスタード巡り、実は10店舗行くつもりだったことを話したりした。
今日はほぼ外にいたのでだんだん眠くなってきた。そろそろ電話を切ろうとしたその時、明莉ちゃんが私の名前を呼んだ。
『ね、沙夜ちゃん』
「どうしたの?」
『私、気になる人ができたの。だから相談に乗って欲しいなって……』
「恋愛相談ってこと? もちろんいいよ」
明莉ちゃんには日向とのこと相談に乗ってもらった。私じゃ正確なアドバイスはできないかもしれないけど、相談に乗ってあげたい。
『ありがとう。私、────』
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