第12話 あれ、これが恋?
夕食を終え、ゆっくりした後、古賀さんを駅まで送ろうと家を出ると帰ってきたお母さんと出会った。
「あら、古賀さん。もう帰るの? まだゆっくりしていいのよ、泊まってもいいのよ?」
まだ出会って2回目なのにお泊まりの誘いは普通にされて怖いだろ。
「ふふっ、ありがとうございます。お泊まりはまだ早いと思うので、今日は帰りますね」
「あら、そう? けど、泊まりたくなったらいつでも言ってね」
(どんだけ泊まらせたいんだよ……お母さんは)
「はい。お邪魔しました」
ペコリと頭を下げた彼女は、そう言って駅の方へ歩きだすので、俺はお母さんに送ってくると伝えてから家を出た。
「河井くん、次は、私の家で夕食を食べよ。私が作ってあげる。豚肉コチュジャン炒めって食べたことある? それを作ろうと思うの……」
「ないかも。どういう料理?」
「人によって入れるものは違うかもしれないけど、私は、豚バラと長ねぎ、たまねぎをコチュジャンの旨辛たれに漬け込んで炒める……。ふぅ、喋りすぎて疲れちゃった」
豚肉コチュジャン炒めの説明をして疲れた古賀さんは、俺の方へ寄ってきて軽く肩に寄りかかってきた。
「そうなんだ。そう言えば、古賀さんはいつから料理を?」
「私は、中学生の時だよ。お手伝いさんのお料理はとっても美味しかったけど、高校生になったら家を出て一人暮らしすることはかなり前から決めてから、作れるようになっておこうかなと……」
「凄いね、古賀さんは。俺は、一人暮らしなんてまだ考えたことないな……自立しなきゃとは思うんだけど、中々ね」
「そうかな? 私は、思うことが凄いと思うよ。送ってくれてありがと」
彼女は、小さく手を振り、駅の方へ向かって歩いていった。
***
「ふふっ、楽しみだね」
スイーツバイキングへ行く当日。彼女は、会ってからずっとニコニコしており、電車の移動中ではカスタードの良さについて語ってくれた。
どうやら昨夜はカスタードを食べられることが楽しみすぎて寝られなかったそうだ。
俺はカスタードではないけれど古賀さんとまたこうしてお出かけできることにドキドキしてあまりよく眠れなかった。
そう思っていると彼女は、俺の方を向いて少し背伸びして両手で頬を触ってきた。
「カスタードが食べられることもワクワクしてたけど、それよりも私は、河井くんと休日に会えることにワクワクしてた」
「!」
(それって、古賀さんも俺と一緒だったってことだよな……?)
俺の頬から手を離すと古賀さんは、ニコッと笑った。
「河井くん、今日は楽しもうね」
「うん、楽しも」
***
「あれ、古賀さんと河井くん?」
スイーツバイキングをやっているところへ着くと、クラスメイトである
長い綺麗な髪を持つ椎名さんは、去年から同じクラスでいつも明るく男女共にフレンドリーに話しかけてくれる人だ。
「2人はもしかしてデート……かな?」
最近、俺と古賀さんは、一緒いることが多いので、よく付き合っているのではないかと噂されている。なので、そう思われるのもおかしくない。
「デート……なのでしょうか。私と河井くんは、普通にバイキングを楽しみに来ただけです。椎名さんは一人ですか?」
「ううん、ここで一緒に行く人と待ち合わせしてるよ。私、カスタードが入ったスイーツが好きで───」
「私も好き!!」
「こ、古賀さん!?」
古賀さんは、椎名さんが同士であることがわかった瞬間、彼女の片手を両手で握った。
古賀さんと椎名さんは今年始めて同じクラスになり、こうして会話するのも始めてらしい。それなのにまた俺の時みたいに距離がバグっていた。
椎名さんは、驚きを見せつつもニコッと笑った。
「古賀さんもカスタード好きなんだね。私も好きだよ」
「私も好き!」
古賀さんと椎名さんは、カスタードについて楽しく語りだし、まだ話したそうだったが、あちらは待ち合わせしているので別れることになった。
彼女達は、連絡先を交換し、そしてなぜか俺も連絡先を交換しようと言われたのですることに。
「じゃ、また学校でね」
「うん、また明日」
椎名さんと別れ、俺と古賀さんは、スイーツバイキングをやっている店に入った。
いっぱい食べれるように今朝はあまり食べてこなかったのでお腹がすいている。
「わぁ~河井くん、みてみて美味しそうだよ。幸せすぎる……」
隣でどんどんカスタードの入ったスイーツを皿に乗せていく古賀さんは、目をキラキラさせていた。
カスタードを見てキラキラした目をする古賀さんを見るだけでもうお腹がいっぱいだ。
俺は、古賀さんオススメのカスタードスイーツをいくつか取り、カスタード以外にもスイーツはあるので、それを2つ皿に乗せて取り上げ一旦テーブルに運ぶことにした。
「ん~美味しい。河井くん、このカスタードケーキ美味しいよ。1口食べてみて」
古賀さんは、そう言って、フォークで突き刺した一口サイズのカスタードケーキを俺の方へ向けた。
「はい、あ~ん」
彼女は俺に食べてほしそうな表情をしていたので、1口食べさせてもらう。
「どー? 美味しいでしょ?」
「うん、美味しい」
「ふふっ、でしょでしょ?」
彼女の笑顔にまた見とれていると俺は前に古賀さんが言っていたことを思い出した。
ドキドキしたり、この人と特別な関係になりたいと思ったり、この人を独占したいって思うのが恋愛として好きってことらしいのという言葉を。
俺は彼女といるとドキドキすることがある。となるとこれが恋なのか?
「河井くん、どうしたの?」
「えっ、あっ、ううん、ちょっと考え事」
「考え事? 私で良ければ相談乗るよ?」
どうなのかハッキリとさせたいけど、これは、古賀さんに相談するのは少し恥ずかしい。
「ううん、大丈夫だよ、大したことないから」
大丈夫だよと心配させないようにそう言うと彼女は、残念そうにする。
「そっか……私は最近、河井くんにドキドキされっぱなしで困ってる」
「えっ、俺に?」
彼女は照れながら小さな声で言ったが、俺には聞こえてしまい確認すると古賀さんは、コクりと頷いた。
「今もドキドキしてる……というか2人でいる時はずっと……(あれ、これが恋?)」
彼女も俺と同じであの言葉を思い出し、手を口元へやった。
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