第13話 伝えないといけないこと
スイーツバイキングから帰ってきてから私は、ベッドに寝転がり、お気に入りのクマのぬいぐるみを抱きしめて今日気付いたあの気持ちについて考えていた。
(私は、友達としてじゃない、河井くんを異性として好き……)
前に調べたことがある。ドキドキしたり、この人と特別な関係になりたいと思ったり、この人を独占したいって思うのが恋愛として好きってことらしい。
よく考えたら私は、どれも当てはまっている。河井くんといたらドキドキするし、河井くんと特別な関係にないたいと思うし、独占したい。
この3つの中でも独占したい気持ちが1番大きい気がする。
あの幼なじみさんは、好きなのにまだ自分が河井くんを好きだということに気付いていない。気付く前に私は河井くんに好きになってもらおうと決めた。
今、好きと告白したら河井くんはどう返事をしてくれるんだろうか。好きと言ってくれるだろうか。
前に友達として好きと言っていたから、告白したとしても彼は、無理というかもしれない。友達としては好きだけど、異性としては見られていない可能性はある。
(誰かに相談してみようかな……)
────翌日
「お待たせ、古賀さん!」
手を大きく振ってこちらへ来たのは、白のティーシャツに薄ピンクのスカートを履いてきた椎名さんだ。
「おはよ、椎名さん。ごめんね、急に……」
休日。私は、あるショッピングモールで椎名さんと待ち合わせしていた。
男子とよく交流していそうな彼女なら恋愛相談をするのにピッタリだと思った。
私も男子とはあちらからよく話しかけてきて話すことはあるが、自分から話しかけるのは河井くんぐらいで他の男子には興味がない。
「いいよ、カフェにでも入る?」
「うん、入る。どこがいいとかなかったら私の好きな店でもいい? きっと椎名さんも好きなはず」
そう言って入ったカフェは、パンケーキ屋さん。ここはカスタードが入ったパンケーキがあるので、よく来る場所。
「カスタードクリームパンケーキ! 古賀さん、ここはよく来るの?」
「うん、美味しいよ、ここのパンケーキ」
私が予想していた通り、椎名さんはとてもテンションが、高くなった。やっぱりカスタード好きにはたまらないスイーツ。
「ショッピングモールはよく来るけどこの店は知らなかったよ。教えてくれてありがとね、古賀さん」
「ううん、カスタードスイーツの場所ならたくさん知ってるからいつでも教えるよ」
「ありがと。まさか古賀さんが、カスタード好きとは知らなかったよ~。1年では話したことなかったし、今年はたくさん話そうねっ!」
「うん、たくさん話そ」
(椎名さん、眩しい……)
私と椎名さんは、迷わずカスタードクリームパンケーキを頼み、注文したものがくるまで恋愛トークをしていた。
「やっぱり河井くんかぁ。前に一緒にいたもんね。彼と古賀さん、お似合いだと思う。私、応援するよ」
「ありがとう……。椎名さんは好きな人いないの?」
この前、スイーツバイキングで、食べ終えて、お代わりしに行った時、少し離れたテーブルにいる椎名さんを見かけた。
彼女も私と同じように男の子と来ていた。その男の子は見たことがある。確か名前は……あれ、忘れちゃった……。去年同じクラスだったのは覚えているけど……。
「好きな人? いないよ」
彼女は、首を横に振り、好きな人はいないと言う。どうやらこの前見た彼は好きな人ではないらしい。
「スイーツバイキングで一緒にいた人は? 同じ学校の男の子といたみたいだけど……」
「萩原くんなんだけど、どうしても私とお出かけしたいって頼まれて断れなかったんだよね。私が好きなところでいいからってことでスイーツバイキングになったんだけど……正直、大好きなカスタードの味、あまり覚えてないかも」
椎名さんの性格から誰かからの頼みを断りにくいのはわかる。
1つ気になったのは彼女があまり楽しくなかったように話したことだ。
「萩原くんのこと嫌いなの?」
「ううん、そうじゃないよ。ただ話したことのない男子と話すのって何というか物凄い緊張して、何話せばいいんだろうとか色んなこと考えてたらスイーツを美味しく食べれてなくて」
「そうだったんだ……」
私も河井くんと初めて話したあの日、緊張していた。そしてクレープを美味しく……美味しく……あれ? 私、普通に美味しく食べてた。
緊張して喉が通らない的なこともなく、普通に食べて、食い意地を披露するような形になっちゃってたし。
今さら恥ずかしくなっていると、店員さんがパンケーキをテーブルに置いた。
「お待たせしました。カスタードクリームパンケーキです」
「わっ、美味しそうだね、古賀さん」
「だね。食べよ食べよ」
食べ始めると私は幸せすぎて黙々とカスタードクリームパンケーキを食べた。
食べ終えると椎名さんに「はやっ」と驚かれた。
「あっ、そう言えば私の話ばかりだったけど、今日は古賀さんの話を聞く予定だったね。相談って何かな?」
椎名さんはゆっくり食べながら私の話を聞くと言ったので、相談することにした。
「私、河井くんといたらドキドキしたり、この人と特別な関係になりたい、この人を独占したいって思うの……これって恋かな?」
恋の相談をすると椎名さんは、こういう話を聞くのが好きなのか真面目に楽しそうに聞いてくれた。
「私は恋したことがないけど、そこまで思うならそれはもう恋なんじゃないかな?」
「恋……やっぱりこれが恋なんだね……。告白はどのタイミングいいんだろう……」
「そうだね……これは友達の話なんだけど、その子は相手も好きだなって感じた時に告白したらしいよ。けど、私は自分のタイミングでいいと思うよ」
「自分のタイミング……うん、相談に乗ってくれてありがとう、椎名さん」
焦ると失敗するかもしれない。なら、河井くんが私のことを恋愛対象として見てくれるとわかるまでは好きという気持ちを伝えない。振られるのは怖いから相手が好きだってわかった瞬間、気持ちを伝えるんだ。
そう決めたのに私は自分のことがわかっていなかった。自分が好きなものに対して愛が重く、好きなことを隠せないことを。
「河井くん!」
「あっ、古賀さん。おはよ」
電車を降りて改札を抜けると河井くんを見つけた。
「あ、あの……私……河井くんに伝えないといけないことがあるの!」
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