第42話 食べ歩きスポットの宝庫
夏祭りがあったその2日後。今日は、沙夜と食べ歩きデート第2弾だ。
今日、行く場所は、この前、千里さんから教えてもらったところだ。
調べたところによるとそこは、魅力的な観光スポットがたくさんあり、美味しい食べ歩きグルメも充実しているそう。
少し遠いが、泊まる必要はないので日帰り旅行となる。
今回の場所は、沙夜も行ったことがないらしいが、事前に調べたそうで、食べたいものはもう決めているらしい。
「今日のメインはスイーツ! せっかく来たからたくさん食べたいね(ダイエットは、明日から明日から……)」
「ほどほどにな」
これはもしかしたら胃薬が必要かもしれん。美味しいものはいくらでも食べられるという謎のあれがあるからな。
一度来たんじゃないかと思うほどに沙夜は、どこに何の店があるか把握しているらしく、迷うことなく目的地へと歩いていく。
「まずは、こちら串わらび。2種類ぐらい食べたいから1つずつ選んで分けよ」
この串わらびは、1本で3つのわらび餅が刺さっているので自分が選んだものを2つ食べて、残りの1つを相手にあげることとなった。
俺が頼んだのは、きな粉で、沙夜は、和束ほうじ茶というものを頼んでいた。
「いただきます……す、凄いモチモチ!」
「だね、想像以上に美味しい。はい、交換」
「ありがとう、私のもどーぞ」
きな粉と和束ほうじ茶を交換し、別の味を楽しむ。まだ最初だからお腹は一杯ではない。
2人食べ終え、次の店に向かう。指を絡めて恋人繋ぎで歩いていると沙夜があることを聞いてきた。
「そう言えば、日向、この前の夏祭り、大原さんと何か話してたみたいだけど、何話してたの?」
「!」
告白されたと言うべきなんだろうか。けど、隠して沙夜を不安にさせるのは嫌だし。
「えっと……返事はいらないけど俺のことが好きって告白されたんだ」
舞桜に告白されたことを沙夜に伝えると彼女は、うっすらと微笑んだ。
「へぇ~、ついにって感じ……。日向をもっと夢中にさせないと取られちゃうね」
そう言った彼女は、俺の腕に抱きつき、胸を押し当ててくる。
心配しなくても俺は沙夜に夢中なんだけどな。これからもずっと好きなのは沙夜だけだ。
「さてさて、お次はイチゴ大福だよ」
「おぉ~、久しぶりに食べるかも」
こしあん、みるくあん、ちょこあんと3種類あるので、俺は、こしあんを、沙夜は、みるくあんを頼んだ。
「あっ、食べるのに夢中で写真撮るの忘れてた。日向、撮ろ?」
「うん」
写真を何枚か撮り、買ったイチゴ大福を持ってベンチに座った。
「今気付いたけど、モチモチしたものばっかり食べてるね。次、湯葉チーズか肉巻きおにぎり食べようと思うんだけど、日向は、どっち食べてみたい?」
湯葉チーズって、どういう食べ物なんだろう。そっちも気になるし、肉巻きおにぎりも気になる。
「ど、どっちも……」
「! よしっ、じゃあ、どっちも食べよ!」
沙夜は、どっちも食べたかったそうで俺がどっちもと言うと喜んでいた。
イチゴ大福を食べ終えた後、少し歩いたところで湯葉チーズ串を1つ、肉巻きおにぎりを1つ購入した。
湯葉チーズ串は、サクサクで肉巻きおにぎりもとても美味しかった。2人で分けて食べたのでまだそこまでお腹一杯ではない。
食べ終え、次はどこへ行こうかとマップを見ながら考えていると沙夜が尋ねてきた。
「日向はさ……明莉ちゃんのことどう思ってる?」
「椎名さん? どうって……明るくて何か太陽みたいな人だなって思うよ」
「……ふふっ、私もそう思う。明莉ちゃん、今年初めて同じクラスになったけど、仲良くなれて嬉しい……」
彼女は、そう言って、再びマップを見る。行きたいところはまだたくさんあるが、帰る時間が遅くなるので、次の店を最後にすることに。
最後は、沙夜が今日、1番楽しみにしていたあんバターたい焼きというのを食べに行くことになった。
お店の看板には賞味期限1分と書かれており、味はあんバター、つぶあん、ロイヤルカスタードがあった。
沙夜と言えばカスタードだ。だが、この店ではあんバターも美味しいらしくロイヤルカスタード、あんバターを1つずつ頼むことに。
「日向、ロイヤルだって。すっごい楽しみ!」
本日もカスタード愛が凄い。ロイヤルと聞いて少し普通のカスタードよりレアな感じがするのは俺だけだろうか。
頼んだものを受けとり、さっそく食べることに。2種類食べたいので、半分先に分けてから2種類のたい焼きを食べた。
「幸せすぎる……カスタード、ラブ」
「どっちも美味しいな」
「うん、うんまぁ~だね」
たい焼きを食べ終えると電車に乗り、歩き疲れた沙夜は、寝ていた。
肩に持たれかかってすうすうと寝息を立てて寝ている彼女は、とても可愛らしく頬をつついてみたくなった。
(いや、イタズラはやめておこう……)
到着するまで外を眺めることにし、舞桜の言葉を思い出した。
舞桜は俺のことを好き。知っておいてほしいだけだから返事はいらないと言われたのであの場ではありがとうとしか言えなかった。
幼馴染みとして長い間、一緒いた舞桜。今も変わらないが俺にとっては憧れの存在だ。
(舞桜はいつから俺のことを好きになってくれたのだろうか……)
***
沙夜との食べ歩きデートの翌日。新しい靴を買うためにショッピングモールに行くと、1人、猫カフェの前に立っている椎名さんを見かけた。
「椎名さん?」
名前を呼ぶと彼女は、振り向き、ふんわりとした笑みで微笑んだ。
「あっ、河井くん。みてみて、可愛い猫さん」
「ほんとだ、可愛い」
椎名さんが、見ていた猫を俺も見る。話によると彼女は、よく猫カフェに来ているそうでとにかく猫が好きらしい。
(沙夜も猫、好きだったよな……)
猫に見とれていると椎名さんに見られていることに気付き、横を向くと彼女は微笑み、俺の頬を人差し指でツンとつついてきた。
「猫さん見てる河井くん、可愛いね」
「! 男に可愛いは何か複雑かも……」
驚いた俺を見て、椎名さんは、周囲を見渡してから聞こえないぐらいの小さな声で呟いた。
「今ならいいよね」
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