第59話 僕とシュタナの不作と水神様

「シュタナの不作を解決するシークレットクエスト?それはここで言って良いもの?」


「はっ!?」


シークレットクエストってレアで報酬が良いクエストの事だよね?


そんな重要なクエストの事を口走っちゃって大丈夫かハントが聞いたら、「しまった!」って顔をするアンさん。


うん、やっぱり聞いちゃ駄目だったんだね。


「えっと、これはその。忘れてくれません?」


「無理。」


「僕も無理かなぁ。」


「ですよねぇー。」


シークレットクエストの事も気になるけど、アンさんとモフモフさんの関係も気になるかな?


だって踵落としをした時に癖を治せって言ってたからね。親しくないとそんな言葉出て来ないでしょ?


「2人は知り合い?」


「私達同じクランのメンバーなんです。シュタナを中心で活動してて。」


あれ?それじゃ何でモフモフさんは農業ギルドに所属してるんだろう?なにか需要があるのかな?


「私達のクラン『生物部』って言いまして。希少な動物や原生生物の保護活動をしてるんですよ。でも食べる物がですね?」


あー。何処かから買ってたら高額になるから、自分たちで調達しようって事なのか。それで農業ギルドに参加したんだね。


「肉は狩り?」


「はい。そこは戦闘班が頑張ってます。でも農業班はモフしか居なくて。」


「じゃあ早く帰らないとそっちも大変なんじゃ?」


「不作の影響で畑が全滅してまして・・・。」


「でもその不作を解決するクエストを見つけた?」


「ですです。でもこの子。モフモフした動物を見ると見境無く追いかけちゃうんですよ。いざクエストに!って時に居なくなっちゃって。ギルドで聞いたら喋るウサギに夢中だったと聞いて追いかけて来たんです。」


なるほどぉ。じゃあ尚更早く解決しないと保護してる動物達が飢えて死んじゃうじゃん。まったく何してるんだか。


「動物達のご飯。大丈夫なんですか?」


「なんとか備蓄を切り崩しながら持たせてます。でもそれもいつまで持つか。それに街の人からも畜生に食わすなら自分たちに回せって詰められてまして。」


「ちょっと危険。」


「そうだね。うーん。良かったら家の野菜持っていきませんか?お代はもちろん頂きますけど。」


「良いんですか!?助かります!」


街の人たちから食材を出せって言われてる位だから、イナバ達の出張販売だけじゃ足りてない筈。


根本的な解決はモフモフさん達がやってくれるだろうけど、それまで持たせる物は必要だからね。


ちょっと小さかったりして出荷してない奴を格安で売ってあげよう。


「わー。なんて立派な野菜。これならあの子達も喜びます!」


「いえいえ。街に出荷してないB級品で申し訳ないんですけど。その分お安くしておきますから。」


「これがB級品!?普通に売れますよこれ!?」


「正規品はコッチ。」


「ふわぁ。大きさも艶も匂いも全然違いますね。」


毎日頑張ってお世話してるからね。ハーメルンの人達からも家の野菜は好評です。


逆に輸入した野菜が食えなくなったって苦情も来てるけど。そこはオヤさんが加工して販売してるから問題なし!


「あっ。」


「あっ?」


「何?」


「ミノルさんでしたよね?つかぬ事をお聞きしますが。ここって食べる物以外も作ってたりします?」


「グランドリーフとかも作ってますけど?」


「もしかしてその中に、魔力が回復する花、なんてものはありませんよねぇ?」


「マナリアの事ですか?それならあっちの方に植えてますけど。」


「っ!?こんな所に在ったぁーーーーーーーーーーーーっ!!」


うわっ!アンさんが突然大声出したからビックリしたよ。でもこの様子ならマナリアの事を探してたみたいだね。でも何で?


「あっあのあの!その花を譲ってもらう事って出来ませんか!」


「少しなら良いですけど、理由を聞いても?」


「クエストクリアに必要なんです!」


アンさんの説明によるとですね?


シュタナの不作をもたらしてるのが、水源になっている湖に住む魔物なんだそう。


その魔物は周囲の人達から水神様と呼ばれて、魔物何だけど大事にされてたんだって。


だけどある日事件が起きたんだ。それが他所の人達が水神様を狩ろうと攻撃をしたんだ。


もちろん水神様は反撃。襲撃者を全員返り討ちにしたんだけど、軽い呪いを受けちゃったみたいで魔力が回復しなくなったんだって。


その湖の水源は水神様の力で良質な水を生み出してたみたいで、魔力の無くなった水神様は水が生み出せなくなっちゃったんだ。


水量も質も悪くなった湖。その影響はそこから流れる川にも多大な影響をもたらして、その川から水を引いていた畑が全滅する事態になった。っていうのがシュタナの不作の原因らしい。


「ならマナリアを持っていけばいい。その変態は必要ない。」


「それがですね?モフがこのクエストの発見者で、水神様はモフとしか交渉しないって言ってるんですよ。」


「ごふっ。違うよ。私としか交渉しないんじゃなくて、農家としか交渉しないの。」


あっモフモフさんがやっと起きたみたい。口元の血を拭って立ち上がった。さっきと全然雰囲気が違うね。コッチが普通の時って事かな?


「農家としか交渉しない?なぜ?」


「1つ。武器を持った人に襲われたから戦える人は信用できない。2つ。魔力を回復させるには食物か薬が有用だけど、どちらも買おうとすると高価だから。3つ。そもそも水神様を祀っていたのか農家の人達で、はるか昔の盟約から水神様に危機が訪れたら農家が力を貸すことになっているから。」


ほえー。そんな盟約があったんだ。


「私が日課のモフモフ探索をしてる時に偶然、水神様の池の近くを通ってね。その時直接水神様から聞いた話よ。その時にシークレットクエストが出たって訳なの。ちなみに、水神様の影響は王都からハーナまで幅広いらしいわ。だからハーメルン以降の土地が全部不作に見舞われてるの。」


「モフ。話してもいいの?」


「いいのよ。迷惑も掛けたし、解決の手段は向こうが持ってるんだから。これくらいの情報提供は当たり前でしょ?」


おー。すっごくまともだ。話してる感じからしてアク姉よりも上って感じ。大人のお姉さんだ。


「何でハーメルンは無事なんだろう?」


「ハーメルンの水源は魔の森。だから影響ない。」


そういえば農園にある池も森の方から水が流れてきてるもんね。ハントの説明に納得だよ。


「アン。さっきしてた質問だけど。クエストに出てたんでしょ?」


「そうだよモフ。手段を探すから、回復させる物を見つけるに変わったの。この農園に来てからだから何かあるかなって思って聞いたの。」


「それで突然あんな質問を。」


「きゅい?」


「あっマナリア持って来てくれたの?ありがとう。」


「ぎゃんかわっ!?モフラセロォー!」


「駄目だよモフ。」ゴンッ。


「きゅうぅ。」


あっ、モフモフさんがまた堕ちた。さっきまで大人のお姉さんだったのに、なんか残念な人だなぁ。


「じゃあはいこれ。これで解決するんですよね?」


「本当に良いんです?迷惑掛けたばっかりなのに、それにこれ貴重なんでしょう?」


「僕の農園だと栽培できるので。それに不作は辛いでしょ?」


歴史の授業で習ったよ。飢餓はとても苦しくて心も身体もどんどん弱っていって、最後には人が人じゃなくなるんでしょ?


僕の作ってる花でそんな辛い人達が助かるならさ、手助けしないとだよね。


「ありがとうございます!この御恩はいつかお返しします!」


「急がなくて良いですよ。」


「ん。向こうの農業ギルドには尋ね人発見と機関の報告をしておく。クエストが無事終わる事を祈ってる。」


「はい頑張って来ます。無事終わったら報告に来ますね。では!」


そう言って来たときと同じ様に土埃を上げながら、モフモフさんを俵担ぎしてアンさんは帰っていった。


無事にクエストクリア出来ると良いなぁ。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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