第12話 僕と傭兵ギルドと赤落ちの末路

ヤマブキさんが突然僕を襲った人達を赤落ち?っていうのに認定した。その瞬間、いつの間にかヤマブキさんの手の中に在った石の板が光り出して、いくつかの光りの玉がどこかに飛んで行っちゃった。


「えっと、今のは?」


「襲撃者本人達に解りやすいマーキングを付けたのよ。それと同時に各ギルドに捕縛、もしくは討伐要請を流したわ。それ程時間が掛からずに対処される筈よ。」


あの一瞬でそんな事まで出来るなんてすごい石板だ!っとそう言えば赤落ちって何なんだろう?


「赤落ちというのは簡単に言えば犯罪行為を行った旅人の総称の事よ。強盗、殺人、恐喝なんかは立派な犯罪でしょ?私達住人でも犯罪者として取り締まられる訳だから、旅人が犯罪者にならない訳無いのよ。」


「赤落ちになったらどんなペナルティが在るんですか?」


「赤落ちと認定された時点ではペナルティは無いわ。ただ犯罪者であるというレッテルが常時人に見える様になるの。そして、そのレッテルを所持している旅人が他者に倒された際、持っている物全てがその場に飛び出すのよ。」


「アイテムとかお金が全部無くなっちゃうんですか!!」


「ミノル君。全てよ。アイテムも、所持金も、スキルもその場に飛び出すの。」


はえー。文字通り全てを失っちゃうのか。ん?スキルも?それって拾った人がスキルを覚える事が出来るって事?


「スキルってどういう状態で飛び出すんです?」


「スキルは光りの粒となって世界に溶けてしまうのよ。だから誰の手にもわたる事は無いわ。ただただ、今までの努力を全て取り上げられるの。神様からの罰だと言われてるわね。」


スキル目当てで犯罪行為をする人も居るかも何て思ったけど、それは無いみたい。


「それよりも、ミノル君は今すぐに所持品を確認した方が良いわよ。大事な物が無くなってるかもしれないのだから。」


「僕大事な物なんて何も持ってない・・・あっ!シアさんから貰った種袋!」


僕は慌ててインベントリの中を確認してみた。買い貯めておいた食料と、所持金の半分である7500Gが無くなってた。そして肝心の種袋はというと・・・。


「無くなってたのね?」


「はい・・・。せっかくシアさんに貰ったのに・・・。」


「大丈夫よ。赤落ちになった後なら、普通の商店で売買出来なくなるわ。もしそいつらがミノル君の家を荒らした後街に戻って来てるのなら間に合うはずよ。」


ヤマブキさんは優しくそう言ってくれるけど、やっぱり悔しい。僕が戦えてたら、あんなに簡単にキルされる事も、アイテムやお金を取られる事も無かったのに・・・。


「あっ、そう言えばチュー太!」


『農業ギルド職員のヤマブキさん。組合員であるミノルさん。すぐに傭兵ギルド前にお越しください。繰り返します。農業ギルド職員ヤマブキさん。組合員ミノルさん、すぐに傭兵ギルド前にお越しください。』


「早速動きが在ったみたいね。さっ行きましょう。」


あいつ等に蹴り飛ばされたチュー太の事を思い出したのと同時に、建物の中から僕達を呼ぶアナウンスが聞えて来た。チュー太の事が気掛かりになりながらも、僕とヤマブキさんは傭兵ギルドに向かった。


「農業ギルド職員のヤマブキよ。こっちが組合員のミノル君。確認を。」


「はい。確認が完了しました。傭兵ギルドのミルコと申します。農業ギルドより認定されました赤落ちの確認をお願い致します。」


ミルコさんは三毛猫の獣人さんだった。ちなみに美少女に猫耳と尻尾が生えてるタイプじゃなくて、猫が直立して動いてるタイプ。ケモ度が高いって言うんだっけ?


そんなミルコさんに案内された先では、縛られて床に転がされたまま強そうな人たちに囲まれている襲撃者3人の姿が在った。


「ミノル君。間違いない?」


「・・・。はい。間違いないです。」


「何なんだよお前等突然!俺達が何したって言うんだよ!」


「俺達は何もしてないぞ!なのに突然集団で襲って来やがって!」


「訴えてやる!お前等全員訴えてやる!」


床に転がったまま大きな声でそんな事を言っている3人。そんな3人の頭の上には、赤い髑髏のマークが浮かんでた。あれが赤落ちが解るっていうマークなのかな?


「黙れこの犯罪者が!無知なお前等に教えてやる。その頭の上に浮かんでる印は犯罪行為を行ったと認定された証なんだよ!」


「だから冤罪だって言ってんだろうが!!」


「「そうだそうだ!」」


「冤罪なんてありえないんだよ馬鹿共が!その印をつける為に必要なのは犯罪行為を確認する神代から伝わる神に祝福された石板だ。その石板で犯罪者認定された奴が無実だったことなんて1度もねぇ。そんな印が付いてるお前等が、冤罪な訳ねぇだろ!」


3人の言葉に怒鳴り声で返答してるのはスキンヘッドで片目に大きな傷が在る大柄な男の人だった。背中には僕が両手でも持てなさそうな大きな斧が2本背負われてる。あの斧カッコいいなぁ。


「ギルド長。確認が取れました。」


「おうそうか。んじゃ後はサクッと始末して終わりだな。」


「し、始末って何だよ!俺達をどうするんだよ!」


「んなもん殺すに決まってんだろうが。お前等旅人は殺されても死なないんだろ?そのためのその印だ。そいつが付いてるとな、殺されると持ち物とスキルを全部失うんだ。でも良いよな?それくらいの覚悟が在って犯罪行為を行ったんだもんな?おい、やれ。」


「ちょっ!まっギャーーーッ!」


「そ、そんな事しらなうべぇっ!?」


「俺は脅されただけなんだ!こいつ等にやらないとお前も殺すって言われうごっ!!」」


3人が周りを囲んでいた人達にあっという間にキルされちゃった。その場にはお金とアイテムが沢山飛び出して来た。


「おう農業の。今回は災難だったな。」


「お手数おかけしました。取り分はどうします?」


「要請受けて探しに行こうとした矢先にのこのこ街に戻って来やがったからな。そこまで負担も掛かってねぇからそんなにいらねぇよ。落ちたアイテムはそこの坊主に慰謝料代わりに受け取って貰え。その代わりそこの坊主に頼みが在るんだがよ。」


えっ?僕に頼み?一体なんなんでしょう?怖い顔でじっと僕の事を見て来るからドキドキする。無茶な事言われないと良いけど・・・。


「余裕が出来たら酒に出来る作物作ってくれや。俺達傭兵は金も好きだが酒も好きでな。だが余所から持って来た奴は高すぎてなぁ。この街で作れたら安くなるだろ?」


「えっと。まだまだ先になりそうですけど良いですか?」


「おう!待ってる分めちゃくちゃ飲むから沢山作ってくれよな!」


「はい!頑張って作ります!」


ニカッと笑って僕の頭をガシガシと撫でる傭兵ギルドの人。さっきミルコさんがギルド長って言ってたから怖い人なのかと思ったけど、優しい人だったみたい。


「ほらほらミノル君。盗られた物を確認しなくても良いの?」


「あっ!種袋探さなきゃ!」


沢山転がってるアイテムをインベントリに入れて行く。とりあえず取られた農具とか食器に料理器具は戻って来た。お金は・・・・うん。盗られた分はがそのまま戻って来たね。あっ!種袋も在った!良かったなぁ。中身も無事だ。


「ミノル君。この武器とか鎧はどうするの?」


「えっと、僕戦えないので要らないです。あっそうだ!傭兵ギルドの皆さんで分けて貰えば!」


「おいおい坊主。そいつはお前さんへの慰謝料なんだから貰っとけ。まぁ要らないって言うんなら買い取ってやるけどな?確かこいつはこの街一番の鍛冶屋が作った最高級品だった筈だ。」


えっ?そんな良い装備だったの?もしかして無理して買って借金でも在ったのかな?


「どれくらいで買い取って貰えるんですか?」


「そうだなぁ。今回で曰くが付いちまったし。全部で2000万Gって所だな。」


「あら。良かったじゃないミノル君。これであの土地が買えるわよ?」


「おっ?そうなのか?今回みたいな襲撃がまた在るかもしれねぇし、あいつ等もあれで反省したとは思えねぇからなぁ。良いんじゃねぇか?」


「それもそうね。じゃあこの武器の売却額であの土地をミノル君名義に変更しておくわねぇ。」


「こっちも手続しとくからよ。安心しろや。」


「えっ?あのっ?ちょっと?」


僕が何か言う前にどんどん話が進んで行って、あの土地が僕の物になりましたとさ。話が急すぎてついて行けないよぉー!


というか傭兵ギルドの偉い人の名前なんだったの!?


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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