第11話 僕と襲撃と赤落ち

「わぁ、立派に育ったねぇ。」


「ちゅっ!」


僕とチュー太の前の畑には、立派に葉っぱを茂らせたカプの姿が在った。


チュー太に選んで貰った種を、僕が作った畝に植えて3日。しっかりとお世話が出来たカプは丸々と大きな頭を地面から覗かせてるよ。


「いつまでも見てる訳には行かないね。さぁ収穫だよ!」


「ちゅちゅっ!」


今回も僕お手製の籠に収穫したカプを入れて行く。一個一個大きいから畑から抜くのが大変だけど、周りの土を除けてから抜けば大丈夫!


「うーん、立派だ。少しだけ置いといてお漬物にしたいなぁ。」


「ぢゅっ?」


「お漬物知らないの?お塩だけで単純に漬けた奴から、お砂糖とお酢に唐辛子を使った奴なんて物も在るんだよ。僕が居る世界じゃカプの千枚漬けって有名な奴迄あるし。」


「ちゅちゅっ!」


「作って欲しいって?うーん。お塩とお砂糖は売ってたけど、お酢と普通の赤トウガラシが無かったから難しいかな?」


「ちゅ~・・・。」


「頑張って畑を広げたら砂糖と赤唐辛子は何とかなると思うよ。お塩が取れる植物も育てられるかも?もし材料が揃ったら作ってあげるね。」


「ちゅっ!」


「そうだね。残りの収穫を頑張ろう!」


カプが育つ3日の間に僕とチュー太はすっごく仲良くなった。今じゃチュー太の言いたい事がなんとなぁ~く解るようになって来たもんね。


「籠が一杯になっちゃった。残りはインベントリに入れておこうかな。」


「ちゅっ?」


「どうして最初からインベントリに入れないんだって?籠に入れてインベントリに入れたら、中身入りの籠って表示されて数が多く入れられるからだよ。」


箱に入れたり、袋に入れたりしても中身入りの袋(カプ)みたいな表示で保存できるんだよね。中身の数は関係無いから、30種類っていう少し少ないインベントリを節約して使う術としてヤマブキさんに教えて貰ったんだ。


「チュー太の分の籠も預かるよ。」


「ちゅっ!」


「そうだね。もっと籠を作っとけばよかったね。まぁそれはまた今度にして、カプを売りに行こうかな。」


「ちゅちゅっ!」


「串焼きを買って来て欲しい?それはもちろん!チュー太も頑張ってくれたからちゃんと買って来るよ!それじゃ、行ってきまーす!」


「ちゅ~。」


チュー太にお留守番をお願いして僕はハーメルンの商業ギルドに向かう。立派なカプだし、高く買い取ってくれると良いなぁ。


「いらっしゃいミノル君。買い取りかしら?」


「はい!」


「この前と同じダヅで良いのかしら?」


「今日はカプをお願いします。」


「あら。もう根菜を育て始めたのね。見せて頂戴。」


僕はヤマブキさんの前に籠一杯のカプと、入りきらなかった分を並べた。2つの籠にカプが10個ずつ入ってて、コロコロと転がった分は15個くらいかな?


「立派なカプねぇ。これなら八百屋さんや食堂に問題無く卸せるわ。」


「いくらくらいになりますか?」


「これだけ立派ならカプ1つで500Gね。全部で17500Gよ。」


ダヅ1キロの7倍の値段になった。うーん、やっぱり高すぎる気がする。


「前にも言ったけど、生鮮食品は高くなるのよ。これがこの街での適正価格よ。」


「でもそんな高額で買い取りしてたら、ギルドのお金がなくなっちゃいません?」


「卸すときには1つ700Gで売るから問題無いわ。それでも飛ぶように売れると思うわよ?」


1つ700G何て法外な値段だと思うんだけど、ヤマブキさんは全部売り切ると張り切ってた。僕はそのままお金を受け取って、追加の肥料とチュー太に頼まれた串焼きを山の様に買ってから農園に戻ったんだ。僕とヤマブキさんのやり取りをコッソリ見てる人が居るのに気が付かないままに。


「ただいまチュー太~。」


「ちゅ~。」


「畑の整備してくれてたの?ありがとうチュー太。はいこれ、頼まれてた串焼き。」


「ちゅちゅっ!!」


「おいしそうだよね。ゆっくり食べてね。」


串焼きや調味料なんかを買った残りが15000G。このお金を何に使うか考えないと行けない。


「うーん。やっぱり畑を広げる道具が欲しいよねぇ。」


「ちゅっ?」


「うん。やっぱり今のままじゃ畑が狭すぎると思うんだ。」


同じ作物じゃなくても、植物を育てたら地中の養分がどんどん減って行くからね。肥料を入れて回復してると言っても限度があるし、やっぱり時間をかけて土を休ませたいんだよね。


「ぢゅっ!ヂューーーーーッ!」


「どうしたのチュー太?」


「ちぃっ。バレちまったか。」


「ここまで来ちまったら関係ないぜ。」


「こいつとそこの鼠だけみたいだしな。楽勝楽勝。」


チュー太が突然僕の後ろに向かって牙を剥いて威嚇したと思ったら、木の後ろから3人の旅人達が出て来た。ってあれ?この人達トライサーペントにキルされた人達じゃない?


「えっと。何か御用ですか?」


「御用。御用ねぇ。」


「俺達よぉ。ちょーっと金欠何だわ。でだ。ギルドで良い仕事ないかなぁ。何て思ってたらよ。丁度大金を受け取る奴が居るじゃないか。」


「そこで俺達は考えた訳よ。持ってる奴から奪えば良くね?ってよ。」


「ヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ!」


それは普通に犯罪じゃ無いのかな?でもここはゲームだしそう言うのもありなの?あっでも説明書に犯罪行為について書いて在ったような・・・・。


「という訳でお前の持ってる金とアイテム全部寄越せや!」ブンッ!


「うわっ!危ない!」


「お前が戦えないのはチュートリアルで知ってるからなぁ!逃げても無駄なんだよぉ!」ザシュッ!


「痛い!」


3人組の1人が剣を手に僕に斬りかかって来た。最初は何とか避けられたけど、次の切り返しで僕の脚が斬られてしまった。


「ヂュッ!」


「邪魔すんじゃねぇよ鼠がよ!」バキィッ!


「ヂューーーッ!!」


「チュー太!」


僕が攻撃されたのを見てチュー太が飛び掛かってくれたんだけど、チュー太は大きいと言っても猫位の大きさ。剣を持った人に蹴り飛ばされて森の奥に飛んで行ってしまった。


「今の内に物色しようぜ。」


「へっへっへ、家の中には何が在るんだろうなぁ?」


「家には何も無いよ!だから止めてよ!」


「辞める訳無いだろうが!おらっ!」ブシュッ!


「痛い!!」


何度も斬り付けられて、僕のHPはどんどん減って行く。軽く斬りつける様にしてるのはわざとなの?僕が苦しむ姿を見て剣を持った人はニヤニヤと笑ってる。


「止めて!止めてよ!」


「弱い奴を甚振るのは楽しいなぁおい。」


「おーい。家の中には碌なもん無かったぞ。」


「とりま、金になりそうなもんは全部取って来たけどな。」


「じゃあ後はお前のインベントリに入ってる奴だな。」


僕がこのままキルされちゃうと、インベントリのアイテムと所持金の半分がこの場にドロップしちゃう。でも僕には抵抗する力は無い。


「あばよ。この家で復活したらすぐまた殺してやるからな。」


「かはっ!」


僕は胸を剣で突き刺されてそのまま死んでしまった。


『現在登録されているリスポーン地点は襲撃を受けています。初期リスポーン地点に復活します。』


良かった。すぐにまた殺されちゃうなんて事にならなくて。でもこれからどうしよう?農園が乗っ取られたままじゃ・・・。そうだ!ヤマブキさんに相談しよう!


「あらどうしたのミノル君?また買い取り?」


「違うんです。僕の農園に悪い人達が来て、僕殺されちゃったんです。」


「っ!ちょっと詳しく事情を説明してくれるかしら?」


僕は突然農園に現れた3人と、意図的に僕を殺した人の人相の話をした。そうしたらヤマブキさんはうんうんと頷いた後に、僕にこう言ったんだ。


「現時刻を持って農業ギルドギルド職員の権限を持って加害者3人を赤落ちと認定します。この情報は即時に冒険者・傭兵・騎士ギルドに通達され、犯人の捕縛に動きます。ミノル君。安心して。ここは田舎だけど、犯罪の取り締まりはしっかりするから。」


真剣な表情で僕の顔を見ながら、ヤマブキさんはそう言ってくれた。



毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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