第10話 僕と家畜とカプ

どどど、どうしてこんな所に鼠が!?しかもこれ絶対普通の鼠じゃないよね!どう見たって魔物だよね!だって大きすぎるもん!結界が在るって話だったのにどうして!?


「ぢゅ~・・・。」ぐぅ~・・・。


あれ?この鼠ずっと僕じゃなくてダヅの入った籠を見てる。それにさっき鳴き声とは違う音が聞えた様な?


「ちゅ~・・・。」ぐぅ~!


やっぱり!この唸るような音はお腹の音だね!お腹空いてるのかな?それでダヅを狙って出て来たとか?


「でもなぁ。鼠だしなぁ。」


「ちゅ?」


鼠と言ったら農家の天敵なんだよ。病気を媒介するから農家の人を病気にしちゃうし。収穫物や種なんかも齧るからせっかく育てた野菜は全部捨てないと行けなくなるし、まさに農家泣かせな動物なんだよね。


そんな鼠がお腹を空かせてる訳なんだけど、これは助けても良い物なんだろうか?


「そう言えば名前は見えるのかな?ってうわっ!」


‘{}_~==)(’&


何か文字化けしてる!?でも文字の色は確認出来たぞ!黒ってどういう意味だっけ?


「ぢゅっ!」


「うわっ!危ない!」


「ぢゅーっ!!」


「駄目だったら!これは駄目!」


鼠が我慢できなくなったのかダヅの入った籠に飛び掛かって来た!これはもう一回作付けする為と販売する奴なんだから絶対にダメだよ。渡せないんだからね!


「ぢゅ・・・・。」ぱたり


「あっ。」


僕が籠を抱えてその場でクルクル回ってたら、鼠が力尽きてその場で倒れちゃった。ずっと籠ばっかり狙ってたから何とか回避出来たけど、だんだん可哀そうになって来たなぁ。


「ぢゅ~。」


「・・・・・。うん。これは上げられないけど、こっちなら良いよ。どう?」


さんざん悩んだけど、目の前でお腹を空かせてるのは見てられない。僕もスタミナ切れを体験したから解るけど、空腹はかなり辛い。ダヅは渡せないから、串焼きを上げよう。


「ちゅっ!」


「こっちでも良いんだね。はいどうぞ。」


「ちゅーっ!」ガツガツガツガツ!


うわぁ、あっという間に食べ切っちゃったよ。串迄食べるとは思わなかった。お腹大丈夫なのかな?


「ちゅぅ~・・・。」ぐぅ~・・・。


「足りなかった?じゃあ携帯食料もどう?」


「ちゅっ!」


「はいどうぞ。」


鼠は結局僕の持ってる携帯食料と串焼きを全部食べてやっと落ち着いてくれた。良かった良かった。でもこの後どうしよう?


「ちゅちゅっ!」


『じお@んkぇ、がこの家に住みたいと言っています。家畜にしますか?」


「えっ家畜?何それ?」


鼠が両手で拝むようなポーズをして来たと思ったら突然目の前にウィンドウが出て来てビックリした。家畜って一体何?


『その土地で飼育する動物、もしくは魔物の総称です。土地に根付き、土地が発展する手助けをしてくれます。』


「えっと。鼠さんは僕の手伝いをしてくれるって事?」


「ちゅっ!」


『その通りです。対価として食事を提供する事を求めています。家畜にしますか?』


手助けしてくれるってことは、ログアウトしてる時に畑のお世話を任せてもいいってことだよね?


猫くらいの大きさで、串が持てるくらいには手先が器用そうだし、これは渡りに船なのでは?


「本当に良いの?勝手に作物を食べたり家を齧ったりしない?」


「んぢゅ!!」


力いっぱい頷いてくれた。その顔はそんな事するか!って怒ってる感じだった。


食べ物もあげちゃったし、生き物を助けたなら最後まで責任持ちなさいって、お母さんも言ってたもんなぁ



「よし決めた!これからよろしくね。」


「ちゅーーー!!」


『(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)が家畜になりました。新しい名前を付けてください。』



名前、名前かー。うーん。


「それじゃ鼠だからピカ「ぢゅっ!!」えっ?駄目?じゃあチュー太で。」


『チュー太が家畜になりました。』


こうして僕の農場に新しい仲間が出来た!


「のは良いけど食料が無くなっちゃったんだった!急いで買いに行かないと!ごめんお留守番しててね。」


「ちゅっ!?」


チュー太に留守番を頼んで、僕は収穫したダヅを持ってハーメルンの農業ギルドに向かった。半分とはいえ販売用に1キロは在るからどれくらいの値段になるか楽しみだね!


「ダヅが1キロなら全部で2000Gね。」


「えっ!そんなに!?」


農業ギルドに居たヤマブキさんに見て貰ったら飛んでもない値段が出て来た。500Gくらいかなって思ってたのに思ったよりも高くてビックリしたよ。


「前にも話したと思うけど、今ハーメルンでは作物の類が少ないのよ。だから普段は安く流通しているダヅもこの街では高騰してるって訳。その影響でこれくらいの値段はするのよ。」


「加工食品になったら値段はどうなりますか?例えば味噌とか醤油とか。」


「ダヅ漬けと黒汁の事かしら?それなら同じ1キロで500Gと200Gくらいね。」


「こっちは安い!?」


「当たり前じゃない。高いのは生鮮食品であって加工食品じゃないんだから。それにダヅ漬けと黒汁はどちらも腐りにくいから結構この街にも在るのよ。」


こうして僕の味噌と醤油で儲けよう作戦は始まる前に終わった。とりあえずダヅを販売した2000Gを受け取って、必要な物の買い出しだね。ついでに味噌と醤油づくりの為に塩と麹も買って行こう。


えっ?味噌と醤油は安いんだから作っても意味無いんじゃないかって?自分で使いたいから作るだけだよ。自家製味噌と醤油って妙に美味しかったりするもんね。チュー太の為にも自分で料理出来るようになりたいし。


あっそうだ。錆落としと足りない調理器具と食器も買わないと。という訳でお買い物にゴー!


携帯食料と串焼きを追加で買って、お肉屋さんで安売りしてた兎のお肉もついでに買っちゃった。モロモロ合わせて全部で1500Gも掛かったよ。調理器具が武器屋さんで買えるとは思わなかった・・・。でも安いのが買えたから良し!


残り500Gは貯金として、次の作物を育てないとなぁ。


「という訳でご飯を食べながら次に育てる作物の相談です!」


「ちゅっ!」


チュー太にも手伝って貰うんだから何を育てるかは一緒に決めないとね。まずは種袋から種をドーン!


「うーん、こう見るとまだまだ種は一杯在るねぇ。次は何を育てようか?」


「ちゅちゅっ!」


「これ?この種が良いの?」


「ぢゅっ!」


机の上に広げた種の中からチュー太が1つの種を選んでくれた。丸いコロコロとしたこの種は・・・。カブの種かな?あれ?種の上に小さいウィンドウが見える。


「あっ、これカプって言うんだ。へぇ~。リアルのカブと同じような作物何だねぇ。あっ!これも3日で収穫できるって!って何でこんなウィンドウが表示されてるんだろう?」


「ちゅふんっ!」


僕の疑問にチュー太が胸を張ってドヤ顔してる。よく見たらその眼が赤く輝いて見える。これってチュー太が鑑定してくれたって事なのかな?


「ちゅっ!」


「凄いよチュー太!これなら知らない種が出て来ても何の種か解るね!」


「ちゅちゅちゅちゅ。」


ダヅは見たまんま大豆だったから何が育つかすぐに解ったけど、他の種は似たようなのが多くて解り難かったんだよね。これなら狙った作物を育てられるよ。


「じゃあまずは、ダヅの茎を抜いて畑を作り直す所からだね。手伝ってくれる?」


「ちゅっ!」


僕が畑の残ったダヅの茎を引き抜いて、チュー太がそれを歯で細かくしてくれた。これも別の所で肥料にする為に土と混ぜる。


畑の土をもう一回掘り起こして、根っこを取り除いて肥料を混ぜて、畝を作り直してから種をドーン!この黙々とする作業はやっぱり楽しいね。チュー太が手伝ってくれたこともあって作業が凄く楽に進んだよ。


無事にカプが育ってくれると良いなぁ。



毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る