第44話 僕と初イベントと収穫祭
ハーメルンは辺境に在る城塞都市だ。魔の森の素材を求め、多くの冒険者が集まる冒険者の街でも在った。
人々は魔の森の素材を求め集まり、冒険者は魔の森という大きな未知を調査するために森を突き進む。冒険者は多くの有益な情報や素材を持ち帰り、集まった人々はそれらを富に変えて都市を繁栄させていった。
だが、魔の森を開拓しようとした人の欲が。森を怒らせてしまった。
ある事件を切っ掛けに、森は強く人を拒絶し報復するようになった。
力の弱い者が森に入れば即座に命を奪われる。力在る者も森の奥地に入れば必ず危機に遭遇する。
これまで一般人でも入口付近までは安全に入れた森は、今や危険区域として一般人は立入禁止となってしまった。
そうなってしまえば、冒険者は命を散らす危険を回避しようと、冒険に出る事は無くなった。魔の森の恵みを求めて集まった人々は、恵みが得られないと街を出ていった。
魔の森の素材が入らない街は、急速に衰退していった。私がこの都市の領主になったのはそんな時期だった。
私は何とか現状を打破しようと試みた。そして見つけたのだ。魔の森が年に1度。人を拒絶せずその恵みを放出する時を。
私はその時を、開放日と名付けた。そして今年もまたその時期がやってきた!!
ハーメルンの民よ!冒険者よ!そして、異界よりこの世界に渡って来た旅人たちよ!
収穫の時は来た!!魔の森に入り、その手に富を手に入れるのだ!
私は収穫祭の開催をここに宣言する!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ヤマブキさんに呼ばれて広場に来た僕は、紫色の長髪をして軍服みたいな服を着た黄色い瞳の綺麗な女性の演説を聞いてた。
「えっと、ヤマブキさんあの人は?」
「あの人はこの街の領主様でヴァイオレット様よ。ハーメルン・フォン・ヴァイオレット様。」
へぇ。領主様って初めて見た。すっごくキリッとした人だ。カッコいいなぁ。
「そう言えば収穫祭って何です?」
「年に1度。魔の森から強い魔物が居なくなる時期があってね?大体3ヶ月くらいかしら。それが開放日。その期間中は街を上げてお祭りをするのよ。森を荒らそうとしてごめんなさいって謝罪の気持ちと、森の恵みを分けてくれてありがとうっていう感謝を伝えるの。それが収穫祭。森の恵みが安全に取り放題になるのよ。」
「どうして魔物は居なくなるんでしょう?」
「繁殖期っていう話よ。この時期魔物たちは濃い瘴気を求めて移動するの。そして子供を作って戻って来る。それまでの期間が収穫祭って訳ね。ちなみに、強い魔物ほど子孫を残すには沢山の瘴気が必要なの。逆に言えば弱い魔物はそこまで瘴気が濃くなくても繁殖できる。だから今の森は弱い魔物ばかりでお肉が沢山取れるって訳よ。」
「ほぇ〜。」
この世界の魔物ってそうやって繁殖するんだね。でも瘴気って病気の元って意味じゃなかったっけ?まっ良いか。
「で、僕はどうしてこの場に呼ばれたんです?」
「農業ギルドはこの時期やる事が在るのよ。そのお手伝いを頼みたいの。」
ピロン♪
告知
イベント『収穫祭』が明日から開催されます。場所は辺境の城塞都市ハーメルン。期間は明日お昼12時から明後日の深夜0時まで(ゲーム内時間で2ヶ月と12日)です。
期間中はスキルの取得経験値が2倍になります。
討伐に勤しむのもよし、欲しいスキルを手に入れるために熟練度を稼ぐのもよし。お好きにお過ごしください。
また、所属ギルドによっては特別クエストが発行されます。報酬としてイベントアイテムがゲット出来る可能性があります。
ぜひ、特別クエストも受注してみて下さい。
農業ギルド特別クエスト:幻の畑
年に1度。魔の森はその奥地に存在する黄金の海原を開放する。黄金は、選ばれた者の前にのみ現れその恵みを分け与えるだろう。
日々植物の声を聞くものよ。収穫の時は今!!
成功報酬
ゴールデン作物シリーズ
特別報酬
?????
おー。イベントの告知ってこうやってるんだ。突然目の前にウィンドウが現れたからちょっとビックリしちゃったよ。
周りの人も突然現れたウィンドウに驚いてる。驚いてない人はイベントに参加した事がある人なのかな?
「どうしたのミノル君?」
「ちょっと考え事してました。それで農業ギルドのお手伝いって畑の収穫なんですか?」
「あら知ってたの?そうよ。魔の森に在る畑の収穫。それが農業ギルドのお仕事。ここで稼がないと来年の予算が無くなるから頑張るわよ!!」
「ヤマブキさんすっごく気合が入ってますね。」
「そりゃ気合も入れるわよ。領主様から支援が在るとはいえ、予算は無限じゃないわ。去年は私1人で参加してなんとか今年の予算を確保したの。今年はミノルくんも居るから倍は稼ぐわよ!!」
幻の畑で取れる野菜はとっても高く売れるんだって。それもギルドの年間予算が賄えるくらいに。そりゃ気合も入るよね。僕も頑張ろう!
「おっ?そこにいるのはミノルか?」
「久しぶりぃ!元気だった?」
「元気そう。良かった。」
「えっ?あっ!ルドさんシアさんアイギスさん!お久しぶりです!」
僕とヤマブキさんが気合を入れていると、ルドさん達が声を掛けてくれた。
「ルドさん達もイベントに参加するんですか?」
「おう。料理の方でな。」
「パパは屋台を出すんだよ。良かったら食べに来てね。」
「あら、店主さんは今年も出店してくれるのね。」
「俺も幻の畑の食材を楽しみにしてますからね。そのお返しって奴ですよ。今年も収穫楽しみにしてます。」
「ヤマブキさんはルドさん達の事知ってるんですか?」
「去年お世話になったの。収穫物も沢山買ってくれて助かったわぁ。」
もしかして今年のギルド予算ってほとんどルドさんが出してくれたお金では?ならお礼に沢山収穫してこよう!
それにしてもルドさんの料理かぁ。とっても美味しいって話だし絶対食べに行こうっと。
「それでアイギスさんは何をしてるんです?」
さっきから僕の体の周りを回ってたかと思えば、ペタペタと体中を触られてる。ちょっと恥ずかしい・・・。
「ん?触診?」
「おいおいアイギス。ゲームの中で触診しても何も解らんだろうが。」
「私には解る。」キュピーンッ!
「目を光らすな目を。後嘘を言うな。すまんなミノル。」
「あっいや。大丈夫です。」
「嫌なら嫌って言った方が良いと思うよぉ?」
「そういうシアさんもさっきから僕の事じっと見てると思うんですけど?」
「ふんふんふん。一杯お世話してくれたんだねぇ。偉い偉い。」
「えっと?あの?なんの話です?」
褒めながら頭を撫でられるのもとっても恥ずかしいんですけど・・・。
「渡した種達の事。この調子で頑張って。そうしたらきっと良いことが在るから。それとも飽きちゃった?」
「飽きてないですよ。毎日楽しくて仕方ないです。僕の育てた野菜が、この街の人達の役に立ってるのも嬉しいんです。」
「うんうん。頑張ってるねぇ。」
あの。そろそろ撫でるの止めて貰えません?
「おっとそろそろ行かねぇとな。それじゃミノル、頑張れよ。」
「はい!あっ屋台は絶対に行きます!」
「そうか?じゃあミノルの分は取っていてやるか。」
「パパの料理すぐ売り切れちゃうもんねぇ。」
「楽しにしてると良い。」
「はい!」
「じゃあな!」
ルドさん達は人混みの中に消えていった。ルドさんだけは体が大きからずっと見えてるけどね。
「さぁミノル君。私達も準備するわよ!」
「収穫にはウー太達も参加出来ます?」
「はっ!その手が在ったわね!じゃんじゃん連れて来なさい!」
「じゃんじゃんって言うほど居ないですってば。」
ウー太達にも手伝って貰えれば一杯収穫出来るからね。頑張るぞう!
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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