第45話 僕と魔の森の奥と黄金の畑
ハーメルンの広場から準備の為に農園に戻って来た僕。まずはチュー太達にイベントに参加しないか確認してみようかな?
「・・・という理由なんだけど一緒に行ってくれる?」
「ちゅっ!」
「ぶもぉ!」
「がうっ!」
チュー太は手でバッテンを作って拒否。ウー太とウェアはお互いににらみ合いながら参加するって。
どっちが沢山収穫できるか勝負するって?ウェアは大丈夫だろうけどウー太は難しくない?
「チュー太はどうして参加しないの?」
「ちゅちゅっ!」
農園で留守番する人が居るでしょ!だって。うーん、チュー太だけが残ってても出来ることなくない?
「ちゅっちゅっ!」
「えっ?それ本当?」
「ちゅっ!」
赤のサソリ団が農園を襲った時、家に侵入しようとした形跡が在ったってハントが言ってたの。どうして止めたんだろうって思ってたらチュー太が妨害してくれたんだって。
出来ることが増えてきたから任せて大丈夫って自信満々に胸を張ってる。
うーん。結界も新しくしたし、収穫祭の開催中はハーメルンの周りの警備も厳重になるって話だから大丈夫、かな?
「それじゃ留守番お願いね?」
「ちゅっ!」
チュー太にお留守番頼むは良いけど収納鞄はどうしようか?
「ぶもぉ。」
「がうっ!」
ウー太は籠が在るから必要ない?ウェアは背負子に籠を乗せてくれれば大丈夫って?ウェア用の奴は買いに行かないとね。ヤマブキさんに連絡したら持ってきてくれないかな?連絡しとこ。
「ちゅ〜?」
「うん、待ち合わせここなんだ。魔の森の奥に行くのにここからの方が近いから。」
ついつい忘れがちだけど僕の農園は魔の森とハーメルンの間に在るんだよ。草原と魔の森の間に在る普通の森?みたいな所に在る。放置してたら後数年で魔の森の一部になってた所に結界を張って確保した土地って話なんだ。
今回の目的地はそんな魔の森の奥だから、農園から行ったほうが近いからってヤマブキさんが来ることになってるんだ。
「そう言えばハントにも声掛けようと思ってたんだけど何処に行ったんだろ?」
「がーう。」
「ログアウトしちゃったの?」
「がう!」
向こうで用事が在ったみたいでログアウトしてるみたい。あっ本当だ、フレンドリストがねずみ色になってる。
「イベントには興味ない感じなのかなぁ?」
「ぶもっふ。」
「タイミングがずれるから傭兵ギルドの方のクエスト受けるんだ。」
「ぶんも。」
「そっか、そもそも農業ギルドのクエストにハントは参加出来ないんだね。」
特別クエストはそれぞれのギルドに所属してないと受けられない仕様みたいだし、どっちにしてもハントは一緒に行動出来なかったかも。
なら僕達だけでイベントを楽しんじゃおうか。ついでに一杯頑張って特別報酬を狙おう!報酬の?部分も気になるもんね。
「ミノル君迎えに来たわよ!」
「あっヤマブキさん。」
「頼まれてたウェア用の背負子と籠も持ってきて上げたわ。」
「ありがとうございます。あっ代金払いますね。」
「毎度ありー。」
ウー太とウェアに籠を装備してもらって、農園の結界の設定を僕達以外が入れないように設定し直してっと。これで準備完了かな?
「準備は良さそうね?それじゃ早速行くわよ!」
意気揚々と森に向かって突き進むヤマブキさん。強い魔物が出ないからって大胆すぎでは?とも思ったけど、クエストマーカーもそっちを指してるし行くしか無いんだよね。
「もしもの時はウー太とウェア。頼んだよ?」
「ぶもっふ!」
「があああうう!」
「それじゃチュー太。行ってくるね。」
「ちゅちゅっ!」
僕はちょっと緊張しながら魔の森の奥に足を踏み出した。無事に辿り着けますように・・・。
僕達の農園が在る森と違って、魔の森の中はすっごく暗かった。
樹木も大きくて僕が10人くらいで手を繋いでやっと幹を1周出来るくらいの巨木ばかり。
背も高く葉っぱも沢山だから陽の光がほとんど入って来ないんだね。
地面はそんな樹の落ち葉や枝が積み重なってて、地面から顔を出してるのはほとんどが巨木の根っこ。
お父さんが昔好きだったっていうジ◯リのも◯◯け姫に出てくる森みたいだ。
ずるっ
「うわっ!」
ばしゃん。
大抵の地面が湿気ていてドロドロ。時々根っこの間に雨水が溜まってたりもしてる。湿度も高くてジメジメしててちょっと不快。
普通の人より背の低い僕は移動にとても苦労してる。ちょっとした根っこを超えるのも一苦労。
今もウー太に手伝ってもらって少し大きめな根っこを乗り越えようとしたら、余計なことを考えてた所為で足を滑らせて水溜りに尻もちを付いちゃった。
「ぶーも。」
「がうん。」
「大丈夫ミノル君?」
「大丈夫でーす!」
ヤマブキさんは慣れた様子で根っこをぴょんぴょん飛んで移動してる。
ウー太はフィジカルでゴリ押し?どんな悪路もどんどん進んでいく。根っこもひとっ飛びでピョーイって感じ。
ウェアはヤマブキさんと同じ様に根っこを飛んだり、たまに樹の枝につかまってぶら下がったり。
みんな身体能力が高くて羨ましい限り。僕はそんなに簡単に移動できないよ。
「ぶもぉ・・・。ぶもっ!ぶもぶもっ!」
「がう?ふんふんふん。がうぅぅぅ。」
このままじゃ足を引っ張っちゃうなぁなんて思ってたらウー太が何やらウェアと話始めた。
ウェアはウー太に頷きを返したら、僕の脇に両手を入れて持ち上げて背負ってる籠の中に僕を入れた。
「あら良いじゃない。その方が移動が早くなるわ。」
「ウェア重くない?大丈夫?」
「がーう!」
大丈夫!だって。でもちょっと恥ずかしい・・・。
「ウー太君の背中じゃないのはどうしてなの?」
「ぶんも。」
「根っこを飛び越える時に僕を落としちゃうからみたいです。ウェアの籠の中ならこうやって掴まれるので。」
ウェアの背負ってる背負子。肩から飛び出してる木の部分を手で掴んで体を支える。もちろん籠の中で足を開いて踏ん張ってるよ?
「がうがう!」
「ウェアも気を付けて走ってくれるそうです。」
「そう。ちょっと遅れてるから正直助かるわ。それじゃどんどん進んでいきましょう!」
さっきまでゆっくり進んでたのが嘘みたいにヤマブキさんが走り始めた。それを追いかけてウー太とウェアも速度を上げる。
僕はウェアに振り落とされないように手と足に力を入れて耐え続けるしかなかった。上下の振動が結構大変。籠から体が飛び出しそうになるんだよね。
「そろそろ到着するわよ!」
だんだんと四肢の感覚が無くなって来てそろそろ限界!という所でやっとヤマブキさんから着いたと声が掛かった。
その場所は深い森の中に不自然に陽の光が入って来てる明るい場所。
中央に枯れた樹が生えてて、その周りは沢山の金色が風に吹かれて揺れる黄金の海原だった。
「ここが幻の畑よ。」
ヤマブキさんがどう?って感じで笑顔を向けてくる。だけど僕はその場所に生えてる植物に目が釘付けだった。
だって葉っぱも茎も実も全部金色だ。しかも一種類じゃない。沢山の種類の植物が全部金に染まってる。現実じゃありえない光景だよ。
でも異彩を放ってるのはそんな畑の中央に在る枯れた木。そこだけは、金の畑に在って灰色に染まってる。
「ヤマブキさん。あの木は?」
「あぁ、あの木は昔からあそこに在るの。朽ちる事も倒れる事もなく立ち続ける枯れ木よ。なんの木か調べた事も在ったけど、まったくわからなかったわ。」
ヤマブキさんが調べても解らない謎の木かぁ。ちょっと調べてみたいかも?
「さぁさぁ!そんな事より早速収穫作業を始めるわよ!グズグズしてる暇は無いわ!」
僕が枯れ木に向かおうとした所でヤマブキさんから収穫開始の合図が。木を調べるのは後でも出来るだろうし、あんまりゆっくりも出来ないもんね。先に収穫を頑張ろう!
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