第46話 僕と収穫作業と襲撃

ヤマブキさんに促されて僕達は早速黄金色に輝く作物の収穫に取り掛かった!


眼の前に在るのは金色のミニトマト。こっちでいうミニマトマ。ヘタの上の方をちょきっとハサミで切ってインベントリに、入れようとしてちょっとした異変に気がついた。


「あれ?金色だったのに銀色になってる?」


「ミノルくーん!!ここの作物は食べ頃を見極めて収穫しないと金色のまま収穫できないわよー!」


「わかりましたー!」


食べ頃を見極めて・・・どうやって?だって全部金色何だもん。色とか葉っぱの様子とか完全に解らないよ!!


「あっ次は銅だ。どうして?」


次に収穫したマトマは鈍い銅色に変わっちゃった。原因を調べるためにじっくり観察してみると、実の下の方に傷が付いてたみたい。


「傷ついてるやつは銅になるのかな?」


次は傷が無いかしっかり確認して、これだ!ってあぁ・・。銅になっちゃった。傷はなかったと思うんだけどなぁ。ってあっ!色が変わったらヘタの下に傷が見えてる!


「こ、これは思ったよりも難しいのでは?」


「そうよねぇ。難しいわよねぇ。」


いつの間にかヤマブキさんが近くに来てた。言葉の通り収穫は難しいみたいで籠の中は銅が殆ど、少しだけ銀色が見えてる。


「金があればそれが一番高いんだけれどねぇ。銀も銅もそこそこいいお値段がするし、使い道も在るのよ?」


「何で金色の方が高いんです?」


「見た目はもちろん味も一級品。そこら辺の作物には負けないくらいのポテンシャルを持ってて料理人垂涎の品なのよ。金色が収穫できたらそれは特級品として高値でオークションに掛けられたりもするのよ?1つでも取れれば農業ギルドの年間予算が賄えちゃうんだから。」


ほえー。そんなに凄いんだ。ぜひ味を確かめてみたいなぁ。


「そうは言っても私は収穫時期なんて見分けつかないから、数を取って勝負してるって理由ね!」


「見分ける方法とか無いんですか?」


「昔は伝わってたみたいなんだけどねぇ。前任者が不正で捕まっちゃって、そこら辺の資料がそのゴタゴタで消失しちゃったのよ。教えてあげられなくてごめんね?」


うーん、これは仕方ない。直接手で触って確認してみよう。触覚で傷と熟し具合を把握しないと見かけじゃ絶対解らないよこれ。


ウー太達の方はどうかな?


「ぶもぶもぶもぶもぶも!」


「がうがうがうがうがうがう!」


ウー太とウェアは何でか一緒に作業してる。ウー太がじゃがいもみたいなのを掘り起こして、それをウェアが収穫してる感じ?どっちが速いかで勝負してるみたい。


あっちもほとんど銅色だね。たまに銀色のお芋が取れてるみたい。でも金色は見えないなぁ。


「僕ちょっと時間をかけて金色が取れないか見てみます。」


「そう?ミノル君ならもしかしたら金色の収穫方法を見つけてくれるかもね。期待してるわ。」


そう言ってヤマブキさんは収穫作業に戻って行った。うー。ヤマブキさんの目が笑ってなかったよ。そんなに期待されるとプレッシャーが。


「うーん・・・・。ん?これかな?」


ミニマトマを触りながら確認してると、手に持った瞬間に不思議な感覚がする奴が在った。なんか、手に吸い付いてくるっていうか取られたがってる?勝手に手の中に落ちそうになるマトマを僕は手でそっと引っ張ってみた。


「あっ、金色だ。」


「えっ!?」


僕の手の中には収穫前と変わらない金色のミニマトマが光り輝いてた。凄い!収穫する前よりももっと輝いて見える!


「ヤマブキさんヤマブキさん!取れましたよ!」


「ほほほほ、本当に金の奴が取れたの!」


「はい!ほらっ!」


僕の手の中でキラキラ輝くマトマを見てヤマブキさんが固まっちゃった。とりあえず確認は出来ただろうし、落として悪くしちゃう前にインベントリに入れとこう。


「あっ。」


「戻って来ました?」


「えっと、ごめんなさいね?ここ数年取れた事のなかった金を見て放心しちゃってたわ。それで?取り方はわかったの?」


「実を持ってみて手に落ちてくるやつが金色みたいです。自分でちぎる必要は無くて、勝手に落ちてくる。みたいな感じ?」


「ふむふむ。そういうことね。欲深い人には金は手に入らなくて、自然と寄り添うような人にだけ金が手に入る様になってるんだわ。」


数を取ろうとする人には絶対に金が手に入らないって感じかな。銀とか銅の時は確かに作物が他所を向いている感じだった気がする。


「大発見じゃない!その調子でどんどん収穫していくわよ!」


「はい!」


僕はミニマトマの他にもマトマ・キュイリ・コンダイ・カプ・ダヅ・甘芋・キャベ・タレス・ホウレン何かをどんどん収穫していった。


根菜類は葉っぱを手に取ると、勝手に上に上がって来るみたいですんなり抜けて道具も要らないし、甘芋とかも蔓を引っ張ると漫画みたいにスポーンと抜けて面白い。


葉野菜なんかは手に取るとキュっと葉っぱが縮まって取れ!ってなる。


面白くてどんどん収穫してたら、僕のインベントリの中身は金色の作物でかなり埋まってた。


「ミノル君のお陰で農業ギルドが独立出来そうな位お金が稼げそうね。」


「役に立てて良かったです!」


「さぁ、最後は反対側の畑よ。」


そう行ってヤマブキさんに連れられていったのは枯れ木の反対側。そこには土から葉っぱが沢山生えてる。これはもしかして人参?


「ここはキャロの畑ね。」


「どうしてここだけ1つの種類なんですか?」


「それは管理者が居るからよ。ほら、あそこよ。」


ヤマブキさんが指さした先には、白くてふわふわなうさぎが両手で一生懸命キャロに水を上げてた。何あれ可愛い。よく見たら他にも沢山居る?


「気を付けなさいミノル君?彼らはヴォーパル。首刈りの一族よ?」


「えっ?そんな危ない魔物なんですか?」


「普段はそこまで危険じゃないわ。縄張りに入らない限り安全よ。」


「僕達その縄張りにガッツリ入ってません?」


「収穫祭の時は大丈夫なのよ。私達農業ギルドと彼らは契約をしてるの。」


「契約?」


「そう。ここに集まった時に、取れた作物を交換しましょうっていう契約。キャロは彼らの好物でね?昔はここらへんにも他の作物が植えて在ったみたいなんだけど、彼らが全部キャロに変えちゃったのよ。」


えっ?僕の畑が5つくらい余裕で入りそうなこの場所を全部キャロに変えちゃったの?どんだけ好きなんだキャロ。


「それで、収穫祭の時に取れる野菜の種類が偏っちゃってねぇ。困った農業ギルドは話し合いを持ちかけて、あの枯れ木の反対側を自分たちの分。こっち側をヴォーパルの分って事にしたみたいなの。その契約が今もずっと続いてるのね。」


「でも作物の交換はなんで?」


「それはね。流石にヴォーパル達もキャロだけじゃ飽きちゃうみたいで、他の野菜も食べたいって事なのよ。でも自分達はキャロのお世話で忙しい。ならば農業ギルドと交換しましょうそうしましょうってね。」


もしかして金の野菜が収穫できなくても、最後はここで手に入るからギルドの運営資金は大丈夫だったり?そう言えば銀と銅には使い道が在るって言ってたけど交換用だった?


「今年はミノル君がいて助かるわぁ。あっちは絶対金のキャロを出してくるんだけど、こっちは銅とか銀ばかりでほとんどの作物を持ってかれちゃってたんだもの。キャロ1つに収穫物全部なんてボッタクリもいい所だと思わない?」


やっぱり。銅や銀は交換用なんだ。でも相手は特級品の作物。言っちゃったらB級品と交換で手に入るんなら妥当じゃないかなぁ。


「あとね。もう1つ取り決めが在るの。」


「もう1つの取り決め?」


「そう。それはね?」


「「「「きゅーーーっ!」」」」


畑でキャロのお世話をしていた兎さん達が、突然耳を立てたかと思ったら一斉に鳴き始めた。その声を聞いて遠くで作業してた兎さんも集まって来てる。なになに?どうしたの?


「今年も来たわね。」


「えっとヤマブキさん?」


「さっき言ったもう1つの契約。それはね。襲撃してくる”ゴブリン”の討伐を手伝う事なのよ。」


えっ?ゴブリン?それに討伐を手伝うってそれってもしかして戦闘って事?僕聞いてないんですけど!


「ヤマブキさん僕戦えません!」


「大丈夫。ミノル君は私達が守るわ。ミノル君は私達が戦ってるうちに収穫作業を進めて!」


「勝手に取っていいんですか?」


「取らないとゴブリンにどんどん持ってかれちゃうのよ。」


話をしているうちに、森の方から緑色の肌をした小人がぞろぞろと手に武器を持って出てきてる。


うわっ!兎達も手に鎌やナイフを持って臨戦態勢だ!っていうかその武器何処から出したの?


「ぶもっ!」


「がうっ!」


騒ぎを聞きつけてウー太とウェアもこっちに来てくれた。


「さぁ!蹂躙するわよ!」


そう言って背丈以上の大きさの在る大きな鎌を構えたヤマブキさん。あれって草刈り用のやつ?どう見ても死神の鎌だよ。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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