第47話 僕と防衛戦と虹色のキャロ

蹂躙なんて物騒な言葉を発したヤマブキさん。その言葉の通り大きな鎌を振り回してどんどんゴブリン達を”吹き飛ばしてる”。


うん。刃の部分をゴブリンに向かって振るってるんだけど、何故か斬れてないんだ。何で?


「そりゃ!おーりゃっ!どっこいせぇ!!」


「ぶもぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


「ガアアアアアアアアアアアアア!!」


掛け声とともに鎌を振るうヤマブキさんと、ノリノリでゴブリンをボウリングみたいに弾き飛ばすウー太。両手を思いっきり振り回して森に叩き返してるウェア。皆とっても笑顔です。


僕の疑問を解消してくれる人はいなさそう。


「ミノル君!ふんっ!収穫速く!どっせい!」


「あっごめんなさい。」


ヤマブキさん達は森の出口で頑張って戦ってくれてる。兎達も武器を持った子は一緒に戦ってるね。


で、武器を持ってない子は一生懸命収穫作業。どんどん金のキャロだけを収穫してる。僕も参加しないと!


「よーし行くぞー。そいそいそいそいそいそいそいそいそいそいそいそいぃ!」


掛け声は必要ないんだけどヤマブキさんの声につられてつい言っちゃった。


金の収穫方法は解ってるから、どんどん金のキャロを収穫してインベントリに入れてく。向こうの畑と違って兎さん達がお世話してるだけ在って、ほとんどが金のキャロだ。


どんどん抜いていくぞー!


「ごめんなさい!一匹抜けちゃった!」


「へっ?」


「げぎゃぎゃぎゃぎゃ!」


気がついたら僕のそばにゴブリンが近づいてた。緑色の肌に尖った鼻。黄色の目に手には棍棒。腰蓑をつけてる姿はオーソドックスなゴブリンの姿だった。


なんて冷静に見てる場合じゃないよ!ゴブリンが棍棒を振りかざして僕に攻撃しようとしてるし!


「うわっ!うわわわわっ!」


「げぎゃ!」


ぽこんっ。


そんな軽い音だったと思う。ゴブリンが振りかざした棍棒が、腰を抜かして逃げられなかった僕の頭に命中した時の音。


もうね、全然痛く無いの。吹き飛ばされる事もなかったし。HPも全く減ってない。


どうしてかわからなくて困惑してたら、いつの間にかゴブリンの手には金のキャロが握られてたんだ。


どうしてか解らなくてぽけーっとしてたら、横で収穫作業をしてた兎さんがどこからか取り出したハサミでゴブリンを吹き飛ばした。


吹き飛んだゴブリンの手から金のキャロが消えて、今度は兎さんの手に握られてる。


もしかして、攻撃されたら野菜が奪われちゃうの?


「ミノル君大丈夫?」


「あっヤマブキさん。」


考え事してたらヤマブキさんが来てくれた。ちょっと疑問に思った事を聞いてみよう。


「うん。この場所はちょっと特殊で攻撃で命が奪われないようになってるの。だけど、相手に攻撃されたら収穫した野菜が1つ奪われるわ。だからゴブリン達を森に返してるって訳ね。」


あっやっぱり僕の考えは合ってたんだ。じゃあゴブリンに攻撃されないようにしながら収穫しないと駄目だね。


・・・・・。僕逃げられないんだけど?


「そこは私達に任せなさい!」


「さっき1匹逃がしてましたよね?」


「それはヴォーパル達がミスしたからよ。私達の所為じゃないわ。現にウー太君達だけで防衛できてるでしょ?」


そう言えばヤマブキさんがこっちに居るのにゴブリン達が来てないね。今も兎達の倍位はゴブリンを吹き飛ばしてる。家の子達はとっても優秀だね。


「さぁミノル君は収穫作業を続けて。君が収穫した分は私達の取り分になるんだから沢山採ってね?」


そう言ってヤマブキさんは戻っていった。ヤマブキさんがいなくても防衛できてるなら、収穫作業手伝ってくれても良いと思うんだけど?


まぁ、あんなに楽しそうにゴブリンを吹き飛ばしてるし、日頃のストレス発散にもなってるのかな?楽しそうだもんね。


僕は僕で収穫作業は楽しいし、どんどんやっちゃいますか!


「誰かぁ!ヘルプミー!」


畑の半分位を収穫した時に、突然何処からか聞いたこと無い声が響いてきた。


誰だろうと思って声のした方を見ると、◯の中に兎って書かれた青い前掛けを掛けた兎さんがおっきなキャロの葉っぱを持って助けを求めてた。


声に反応して沢山の兎さん達が集まってキャロの葉っぱを引っ張ってるんだけど、よく見たら反対側からゴブリン達が同じくらいの数でキャロの葉っぱを引っ張ってる。


いつの間にかヤマブキさん達が守ってる場所を避けてこっちに回って来てたみたい。収穫作業をしてた兎さん達が慌てて防衛戦を築こうとしてた。


おっきなキャロを挟んで引っ張り合う様子はまるで綱引きみたいだなぁ。なんて考えてたら、前掛け兎さんと目が合っちゃった。


「そこの人!見てないで助けてぇな!」


「えっ?僕?」


「あんさん以外に誰もおらへんやろ!はよぉ!」


急かされた僕は慌てて前掛け兎さんの所に近寄って、一番後ろでキャロの葉っぱを掴む。どうしてこの兎さんは言葉が話せるんだろ?なんて疑問はちょっと飲み込んどく。だって聞ける雰囲気じゃないんだもん。


掴んだ葉っぱが千切れたりしないかなぁ、なんて思ったけど葉っぱの部分も太くて綱みたいになってる。これなら切れる心配は無さそう。


「掛け声に合わせて皆で引くで!ほな行くでぇ!オーエス!オーエス!オーエス!オーエス!」


前掛け兎さんの声に合わせて葉っぱを引っ張る。それに反応してゴブリン達も葉っぱを引っ張るけど、兎さん達が出てくるゴブリンを足止めし始めたから増援が来れてない。


徐々に僕達の方に葉っぱが引っ張られ始めて、ゆっくりとおっきなキャロが地面から顔を出し始めてる。なんか色が金じゃない?いろんな色が見えるんだけど、もしかして虹色?


「一気に引き抜くでぇ!最後やから気張りぃ!せーのっ!そりゃぁっ!」


前掛け兎さんの声に合わせて体重を後ろに傾けながら全力で葉っぱを引っ張る!


スポーンッ!


おっきなキャロが地面から抜けて、反対側を引っ張ってたゴブリン達が吹き飛ばされた。


おっきなキャロは宙を飛んで、何故か僕の腕の中に飛び込んできた。


それにしてもかなり大っきい。170センチ位在るよこれ。虹色に輝いてて、そして重い!


「兄さんはよ仕舞って!はよぉ!」


「わっわっわっ。」


吹き飛ばされたゴブリン達が僕に向かって駆けて来ようとしてるのを、一緒にキャロを引っ張ってた兎さん達が止めてる。


僕は慌てながらも虹色のキャロをインベントリの中に放り込んだ。


「さぁ目当てのもんは無くなったやろ!はよ帰れ!」


「ぐぎゃぁ・・・。」


ゴブリン達は残念そうにしながらも、僕から目を離さない。これはまだ狙われてるね。どうしよう?


「ぶもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


「がああああああああああう!!」


逃げたとしても逃げられないよねとか考えてたら、後ろからウー太とウェアが走って来て僕の前に立ってくれた。


威嚇の声を聞いて、やっとゴブリン達が森に帰り始めた。ちゃっかり残ってたキャロを引き抜きながら。


金はほとんど収穫出来てたみたいで、銀や銅ばかりだったんだけどね。それを見て溜め息を履くゴブリンも居たよ。


「よっしゃ!今年はわいらの勝利や!」


「「「「きゅーーーーーっ!!」」」」


兎さん達が勝鬨?を上げてる。ヤマブキさんの方のゴブリンも、その声を聞いて森に引き返し始めた。


「いやぁ、ホンマに助かったで兄ちゃん。おおきになぁ。」


「えっと。僕で役に立てたなら何よりです?」


前掛け兎さんが気さくに僕に話しかけて来るけど、距離の詰め方おかしくない?なんか僕の肩をポンポン叩いて来るんだけど?っていうかこの兎さん、他の兎と違って大きいよね?だって僕と同じくらいの身長だし。


「なんや兄さんそないポーポがダヅ鉄砲喰らったような顔してからに。」


「いやぁ、兎さんは誰なのかなぁって?」


「彼はヴォーパル達のまとめ役よ。名前は確か無かったわよね?」


「せやなぁ。名前は無いなぁ。わいはコイツラのボスヴォーパルや。」


ボスヴォーパル。そう言えばヤマブキさんはずっと兎さん達の事をヴォーパルって言ってたけど、それが彼らの種族名なのかな?僕は見たまんま兎さんって言っちゃってるけど。


ヴォーパル・・・ヴォーパル・・・。ヴォーパルバニー?この子達って首刈り兎に関係あるんだろうか?


「わいらも魔の森の住人やで?野菜も首も刈り取るのは得意やがな。」


「こわぁ。」


前掛け兎さんの言葉に合わせて、後ろに並んでだ兎さん達がそれぞれ武器を持って口をヒクヒクさせた。こっちを見ながらやるもんだからとっても怖い!


「今回の恩人に無体な事するかいな。これはパフォーマンスやパフォーマンス。」


「毎年新人にはやってるものね。それで?今年のレインボーキャロは誰が手に入れたの?鳴き声が響いてたから今年はこちらが手に入れたと思うのだけれど?」


「そりゃそこの兄ちゃんや。残念ながら、うちらの手には飛んでこんかったわ。」


「あら。じゃあ選ばれたのはミノル君なのね。おめでとう。」


あのおっきなキャロってレインボーキャロって言うんだ。でも選ばれたってなんの事?


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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