第7話 僕と農業ギルドと登録

「大体ねぇ。何をするにも簡単に出来るようになるわけ無いじゃない。なのに何?スキルを寄越せ?楽になる方法を教えろ?そんなの知ってたら私がやってるわよ!でもね、言ってる事は解るのよねぇ。農作業って面倒くさい事も多いからそこをスキルで何とかしたいって言うのは。でも世界でまだ農業系スキルを獲得した人は誰も居ないの。だから皆手作業で作物を育ててるのよ。だというのに以前登録してた旅人達と来たら!!」


うん。なぜかお姉さんに捕まってずっと愚痴を聞かされて続けてます。そろそろ勘弁してくれないかなぁ?僕ただ農業ギルドに登録しに来ただけなのに・・・。


たしかログインした時は朝だったよね?それで戦闘訓練をしてたのがお昼頃。で、今はもうすぐ日が沈みそうになってる。このお姉さん相当鬱憤貯めてたんだなぁ。僕は話を聞くふりをしながら頷くしか出来て無いよ。


「ふぅ。ごめんなさいね。色々話したと思うけど結局言いたい事は楽は出来ないって事なのよ。それでも農業ギルドに登録したい?登録してくれるなら私は大歓迎だけど。」


「あっ、はい。それはもちろん。」


お姉さんのお話は簡単に言えばアプリゲームみたいに畑を簡単に管理出来ないよって事。畑がすでに用意されていて、種も自動で植えてくれて、水やりもボタン一発で終わるなんて事は無いし。作物の管理や収穫、その後の苗の処理なんかも全部自分でやらないと駄目だよってお話だった。それくらいならお婆ちゃんの所でやってたから平気だよ。


「ここまで言っても登録してくれるなんてあなたは本当に農業がしたいのね。こちらとしても助かるわ。登録者が居なくて困っていた所なのよ。」


「あれ?それじゃギルドの横に在る畑は何ですか?他の人が管理してたんじゃ?」


「あれは私が趣味でやってる実験農園。ギルドの仕事の合間に挑戦してるのよ。残念ながら私はギルド職員であって農家じゃないから、うまく行ってないのよね。ほら、葉が変色してるでしょ?」


そう言ってお姉さんが畑に入って植わっていた葉っぱを持ち上げてくれた。確かによく見ると葉っぱが茶色くなってる。でもこれって肥料をあげ過ぎてるんじゃないかなぁ。


「あなた、この野菜の状態が解るの?」


「あっ!ごめんなさい!」


しまった!考えたことが口から出ちゃってたみたい!


「謝らなくても大丈夫よ。それで、この状態が肥料のやりすぎってどういうことか説明してくれる?」


「えっと、ちょっと見ただけですけどこの野菜は僕達の所で大葉って呼ばれてるのに似てます。大葉は肥料を上げ過ぎると葉っぱが茶色になって変色しちゃうんです。」


「そうだったのね・・・。この野菜はここら辺じゃオーバと呼ばれてるわ。料理の香りづけや薬味として使われる事が多いのよ。ハーメルンじゃ最近お肉ばかりが増えて野菜があまり流通していないの。だから少しでも早く育てたくて沢山肥料を入れたのが間違いだったのね。」


お姉さんがちょっとションボリしちゃった。うーん、大葉は確かに簡単に育てられるから家庭菜園でもお勧め出来る植物だよ。けど乾燥や温度変化に弱かったり沢山収穫する為に剪定もしないと駄目だったはずだから、畳3枚分の敷地だとしてもお仕事の合間じゃしっかりとお世話出来て無かったんじゃないかなぁ。


「この子達の事は解ったわ。それよりもあなた凄いわね!一目見ただけで植物の状態が解るなんて得難い才能よ!もしかしてそういうスキルでも持ってるの?」


「スキルは持ってません。持ってないとギルド登録出来ませんか?」


「そんな事は無いわ。さっきも言ったけど農業に使えるスキルが発現した何て話は聞いた事が無いの。だから心配しなくても大丈夫よ。ささっ、登録しちゃいましょう。ここに名前を書いてね。」


お姉さんはそう言って僕の目の前にウィンドウを表示してくれた。そこには名前と種族と、土地を借り受ける事に対する同意を書く欄が在った。


「土地は借りないと駄目なんですか?」


「お金を持っているならそんな必要は無いわよ?お金は在る?」


「800Gなら在ります!」


「全然足りないわ。最低でも1000万Gは無いと土地は買えないわよ?」


「それじゃ、僕は農業出来ないんですか?」


「そんな人達の為に土地の借用制度なのよ。土地の持ち主と農業ギルドが間に立って、賃貸金の査定や農具の貸し出しを行ってるの。あなたに貸す土地は前に旅人が使っていた土地を使って貰うわ。道具や建物も揃ってるからすぐに農業を始められるから安心しなさい。一定金額を稼げばその土地をそのまま自分の物にも出来るから頑張って欲しいわ。最初の賃貸料金は500Gよ。これで1ヵ月借りられるわ。」


「安い!!」


「ギルドから補助が出てるのよ。詳しい話を聞きたい?」


「聞きます!」


農業ギルドは土地の貸し出しの他にも、肥料や作物の種の販売に建物の建築補助金の申請や農作物の買い取りなんかも行ってるんだって。この土地の領主様が野菜不足の現状を憂いて私財を使って補助金を捻出してるってお姉さんが言ってた。野菜の買い取りはお店と直接やり取り出来ない新人の僕には凄くありがたいね。


『チュートリアル:ギルドに登録しよう!クリアしました。これからはこの世界を自由にお楽しみください。』


「それじゃ、これからよろしくお願いします!」


「ミノル君ね。あなたには期待してるわ。私はギルド職員のヤマブキって言いいます。これからよろしくね。それじゃ早速だけど貴方が使う土地に案内したいんだけど良いかしら?」


「あっ、その前に肥料と種が見たいんですけど良いですか?」


「もちろん良いわよ。肥料と種はコッチね。」


そう言ってヤマブキさんが案内してくれたのは畑の横に在る小屋の中だった。この中は倉庫になってるみたいで麻の袋に入った肥料や種が農具と一緒に沢山置いてあったよ。


「肥料はこれで作ってるわ。」


「これってコンポスター?」


生ごみとか枯れ草を入れて肥料を作る丸い壺みたいな物がコンポスターって言うんだよ。畑の隅とかでゴミ箱みたいに見える物を見た事在ったら解るんじゃないか?それが室内に在るのはちょっと変だと思うけど。


「これは魔道具なのよ。この中に生ごみと彼はを入れてこのスイッチを入れれば、簡単に肥料が出来上がるって訳。袋詰め迄自動で行ってくれる我が農業ギルドが誇る偉大な発明よ!」


「へぇ~。それは便利ですね。」


肥料作りも時間のかかる作業だから、それがボタン1つで出来るなんて夢みたいだ。


「この肥料は色々バランスよく混ざるように設定されてるから、どんな畑にも合うわ。10キロで20Gよ。」


「その安さも補助金のお陰なんですか?」


「そう言う事よ。」


これは買いだ!与え過ぎには注意しないとだけど、どんな畑にも合うなら数を持っていても良いよね!10袋お願いします!


「そ、そんなに買うの?大丈夫?」


「インベントリに空きは在るので大丈夫です。」


この世界の住人はインベントリっていう収納空間を持ってるんだ。30種類のアイテムを入れる事が出来て、99個迄ストックする事が出来るから物の持ち運びに凄く便利なんだよ。今の僕は持ち物がお金とシアさんから貰った種袋だけだからインベントリはガラガラ。これくらいの肥料なら持ち運べるんだ。


「種の方はこれだけね。こっちは1種類10Gよ。」


シアさんに貰った種袋と同じ袋をヤマブキさんが持って来てくれた。カプとキュイリとコンダイって袋には書いて在る。


これってカブとキュウリと大根かな?種を取り出して見て見たら、シアさんから貰った種袋に入ってたのと同じ形の種が出て来た。他にも沢山種が入っていたから、ここに無い種類の野菜も育てられそう。必要ないかな?


「種は貰ったものが在るので大丈夫です!」


「そうなのね。じゃあ準備も終わったみたいだし、貴方の畑に行ってみましょうか。」


「はい!!」



毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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