第6話 僕と新しい目標とギルド

小さい頃に田舎で褒められたことを思い出した僕は、それをそのままシアさんに伝えた。


「やっぱり!貴方の周りには植物系の妖精が纏わりついてるから何か在ると思ったのよ。」


「えっ?妖精ですか?」


そんなの僕には見えないけど?


「シアは元々樹木の精霊っていう設定だったんだ。だから、そう言う設定の在るゲームでは妖精や精霊を知覚出来るんだわ。」


「そう言う事なのです。えっへん!」


ルドさんの説明を受けて胸を張るシアさん。スイカみたいなお胸が弾んだけど、僕はそっと視線を外した。そう言うの見ちゃうのは駄目だってお母さんもお姉ちゃんも言ってたから!


「それでね。ミノル君にはこれを上げようと思って。はい。」


「?小袋?」


シアさん胸の谷間から取り出したのは、茶色い小さな袋だった。少し生暖かい・・・。


「これなんですか?」


「それは色々な植物の種が入ってる種袋なのよ。良かったらミノル君。それを育ててみない?」


そう言われて僕は袋の中をちょっと覗いてみた。そうしたら、色とりどりで形も様々な種が沢山入ってるのが見える。種類分けするの大変そう・・・・。


「おいおい良いのか?集めるのに苦労してたろ?」


「良いの。この子達もミノル君の所に行きたいみたいだし。」


「僕の所に?この種が?」


「シア姉は植物の声も聞こえる。何もおかしい事は無い。」


そう言われても本当かどうか僕には分からないもん。


「大丈夫。ミノル君なら出来るよ。」


「そうだな。騙されたと思ってやってみても良いんじゃないか?このままゲームを辞めちまうよりも良いと思うしな。」


「この世界は戦う事だけが全てじゃない。きっとミノルの為にもなる。だけど無理をする必要はない。決めるのはミノル。」


「でも僕に出来るかな?」


「心配すんな。俺だって攻撃出来ないのにゲームを楽しんでるんだぞ?だから大丈夫だ。それに、自分の出来る事をやっていれば仲間も出来る。そうしたら、楽しくなってどんどん続けちまうと思うぞ。」


ルドさんの言葉で僕にも仲間が出来るかもしれないって思ったら、楽しそうって思っちゃった。うん、このまま辞めちゃったら何にもならないけど、まだ出来る事が在るならやってみるべきだよね!


「僕、頑張ってみます!」


「おう。」


種袋を握りしめて、そう言った僕の頭をルドさんが撫でてくれた。なんだかお父さんに頭を撫でられてるみたい。


「それじゃミノル君。ハーメルンに戻ってギルドに行くと良いわ。そこに、農業ギルドって所が在るの。そこで登録したら色々とお世話してくれると思うわ。」


「色々とありがとうございます!あっ!フレンド登録お願いしても良いですか?」


「良いぞ。なぁ2人共。」


「よろしくねミノル君。」


「こちらから、お願いする。」


こうして僕はルドさん達とフレンド登録を行った。初めてだからちょっと緊張したけど、フレンド欄に3人の名前が載っててちょっとにやけちゃったよ。


「さてと、そろそろ俺達も行くか。」


「ルドさん達はこの後どうするんです?」


「俺達の拠点は王都ファンタジアでな。今からそこに戻るんだよ。ここにはちょっとした野暮用で寄っただけだ。」


「じゃあ戻っちゃうんですね・・・・。」


「そんなションボリした顔しないの。こっちに来たら、様子を見に行くから。」


「私はリアルで合うのを楽しみにしている。」


そうだよね。アイギスさんとは病院で会えるはずだし、ルドさんとシアさんもフレンド登録したんだから連絡出来るよね。


「じゃあまたなミノル。」


「頑張ってその子達を育ててね。」


「無理しない様に。健康が第一。」


「はい!皆さんもお気をつけて!」


僕はルドさん達が街道から見えなくなるまで手を振って見送った。


「ギルドかぁ。そう言えば次のチュートリアルがギルドに登録するだっけ。早速再開しよ・・・・あっ!僕の武器!」


投げて散らばった武器を慌ててかき集めてから、僕はハーメルンの街に戻った。初期武器を全部売って、所持金を800G迄復活出来たよ。


「えっと確か、チュートリアルの再開はチュートリアル画面の一番下に・・・在った!」


『チュートリアル:ギルドに登録しよう。を再開しますか?』YES/NO


「もちろんYESで!」


『ギルドの場所をマップに表示します。』


ギルドの場所はやっぱり広場の近くみたいだね。早速行ってみよう!


「うわぁ。凄い賑やか。」


マップに表示された建物はとても大きかった。他のお店の5倍くらいは在るんじゃない?3階建ての建物で、今も沢山の人が入り口から中に入って行ってる。


「はっ!見とれてないで僕も中に入らなきゃ!」


中に入ってさらに驚いた。沢山のカウンターが並んでいて受付の女の人がひっきりなしに来る人の相手をしてるんだもん。特に入り口から入ってすぐの場所に在る冒険者って書かれた場所が一番賑わってる。


受付の人から紙を受け取る人。植物みたいなものを提出する人。大きな獲物が在ると言って裏に案内される人。沢山の人が目をギラギラさせながら受付に並んでた。


「でも僕には関係ないもんねぇ。えっと、農業ギルドは何処かな?」


冒険者ギルドの横は傭兵ギルドで、その横が騎士団出張所。衛兵ギルドってのも在るんだ!狩人ギルドってのも在る。1階は主に戦う人向けって事なのかな?


「あれ?1階はこれで終わり?じゃあ2階かな?」


そう思って2階に行ってみた。錬金術。魔術。服飾。建築。鍛冶。生産と魔法関連のギルドが2階に並んでたけど、ここにも農業ギルドは見当たらない。


「3階かなぁ?」


「何だ坊主。この先はギルド幹部の部屋と緊急時に集まる会議室しか無いぞ?」


3階に上がろうとしたらちょっと強面のおじさんに止められた。あれぇ?じゃあ農業ギルドは何処に在るの?聞いてみようっと。


「おじさん。農業ギルドってどこに在りますか?」


「ん?何だ坊主。あんな不人気ギルドに用事が在んのか?農業ギルドなら一回外に出て裏に回りな。荷馬車搬入用の大きな扉の横が農業ギルドだ。」


「ありがとうございます。行ってみます。」


場所を教えて貰ったのは良いけど、不人気ギルドって言った?建物の中に入ってないのも気になるなぁ・・・。行ってみれば解るかな?


という訳で一旦ギルド会館(という名前でマップに表示されてる。)を出てから言われた通りに裏に回ってみた。確かにそこには荷馬車がひっきりなしに出入りしている大きな入り口が在ったけど・・・・。


「まさかこの掘立小屋が農業ギルドじゃないよね?」


ギルド会館の脇に後から取ってつけた様に建てられた感じの小さな小屋。その小屋の傍にはとても小さな畑が在って、そこに植えられた野菜の葉っぱが風に揺られてる。その小屋の上にはしっかりと農業ギルドの看板が・・・・。


「本当にコレ?」


「ここに何か用かしら?」


余りの待遇の違いに呆然と小屋を見て居たら後ろから声を掛けられた。黄色い髪に麦わら帽子を被って、黒いエプロンと長靴を履いて鍬を持っている女の人だ。その眼は凄く不機嫌そうに細められてるけど、僕何かしたかな?


「えっと、農業ギルドに登録したくて・・・・。」


「あらそう。でも言っておくけど指先1つで畑を耕したり、作物を植えたり、水やりが終ったりしないわよ?土作りや環境作り。作物の管理や水やりなんかも全部一つ一つやらないと行けないわ。そこの所解ってる?」


登録したいと言ったら滅茶苦茶大変だと力説された。昔やった事在るから知ってるけど、どうしてそんな説明するんだろう?


「どうしてこんな説明をしたのか解ってなさそうな顔ね?前にここに登録してた旅人がそんな事を言ってたのよ。そんな方法は無いって言ったら大半が諦めて帰ったわ。登録した人達も、『こんなに大変だとは思わなかった!』何て言ってさっさと抜けて行くし。自然舐めるんじゃないわよ!」


どうやら僕の前に登録した人達が色々とやらかしてるみたい。ずっとグチグチ言ってるし、ここに登録しても大丈夫なのか心配になって来たよ・・・・。



毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る