VRMMO『リバティライフオンライン』 ~戦えないので農家になります。~

コトスケ5

プロローグ

「特別番組!VRゲームはなぜ衰退したのか!司会は私青野と。」


「アシスタントの紺野でお送りいたしまーす!」


「さて紺野さん。あなたはVRゲームという物を御存じでしょうか?」


「あー、あんまり詳しく無いんですよねぇ。でもゴーグルの様な物を付けて、手にコントローラーを持つって事は知ってますよ?」


「それは現在販売されているVR用の機器の事ですね。それらは実は20年以上も前から存在している古い機器だと知っていましたか?」


「えぇ~!?本当ですか?」


「はい。もともとVR機材と言えばそれらが使われていたのです。あたかも自分がヴァーチャルの世界に入り込んだかのような体験は当時の人々に衝撃と感動を与えました。」


「それが今もなお販売されているというのは何とも凄い事ですね。」


「ですが、人の願望はそこで止まらなかったのです!」


「と言いますと?」


「実際に自分の意識をヴァーチャル空間に飛ばし、アバターを直接脳波で動かして操作するフルダイブ型と呼ばれるタイプが誕生したんですねぇ。」


「本当にそんな事が可能なのでしょうか?俄かには信じられませんが。」


「可能だったのですよ。今だにオーバーテクノロジーではないかとか、宇宙人から技術提供を受けたのではないか?等というオカルトのネタにされていますが、一部の天才たちが作りだしたその夢の様な機械は実在していたのです。それが電子世界体験機器。『Electronic world Experience Device』略してEEDと呼ばれる機械だったのです。その実物がこちらですね。」


「ヘッドセットにチョーカーと腕輪ですか。あれ?こちらはチョーカーしか在りませんよ?」


「それはヘッドセットの方が初期販売されたEED。チョーカーだけの方が後に販売されたEED2とでも呼ばれる発展機だからですね。価格も10万円とゲーム機としても高かったんですよ?」


「へぇ~。」


「このEEDが発売された当時は予約が殺到。購入したくても出来ない状態が長く続いたんです。いやぁ懐かしいですねぇ。」


「青野さんは実際に購入されてたんですか?」


「いえ。私は抽選予約に漏れたので結局買えなかったんですよ。だから実物を見るとこう、思う所が在りますねぇ。あぁ、実際にプレイしてみたい!」


「それでこれはゲーム機何ですよね?どれくらいの人達が遊んでいたんですか?」


「全世界で5000万人以上が遊んでいました。」


「えぇっ!?1000万本も売れたら大ヒットと呼ばれるゲーム業界で5000万以上ですか!?」


「はい。しかも転売等無く全機稼働状態でです。これは快挙と言っても過言ではないでしょう。」


「はえ~。あっ!でもすでにこのEEDもこのゲーム機を使ったゲームもサービスを終えているんですよね?それは一体どうしてですか?聞いている限りではかなり人気なように聞こえましたけど。」


「その理由がこの番組の本題である『VRゲームはなぜ衰退したのか。』に繋がってくるわけです。」


「その理由とは?」


「第1次ALO事件と第2次ALO事件と呼ばれる集団殺人未遂事件が原因です。紺野さんも聞いた事が在るのでは?歴史の教科書に載っていたりしますし。」


「確かに教科書で見た覚えが在ります。ですが内容まで覚えてないですねぇ。」


「あの事件からかなり時間が経っていますからねぇ。という事で簡単に説明します。第1次ALO事件とはEEDを使ったゲーム『Another Life Online』で起きたヴァーチャル世界に人々が閉じ込められた事件を言います。この際EEDを暴走させて装着者の脳を焼き切るという殺害予告迄出ていました。これにはすでに吸収合併された元ピー国が関わっていたとして、国際的に激しいバッシングを受けた事件として取り扱われていますね。」


「ゲームをやっていてゲームの中に閉じ込められて、さらには死んじゃうかもしれないなんて怖いですね。」


「そうですね。ですがこの事件を乗り越え、ユーザーからの熱い要望に応えて販売会社は改良型のEEDを作り上げました。そして発売されたのが『Another Life Online2』という名前のゲームです。」


「話の流れからしてそのゲームでも事件が起こったのですか?」


「そうなんです。第1次ALO事件で某国が密かに送り込んでいたスパイがプログラムの中にウィルスを仕込んでいたんです。そのウィルスがサービス開始後に突如活動を始め、またしてもプレイヤーをゲームの中に閉じ込めてしまいました。」


「でもでも、今度は死者を出すような事は無かったんですよね?だって改良したと仰っていましたし。」


「改良の甲斐あって脳を焼き切る!等という事は出来なくなっていましたが、その代わりゲーム機を取り外しても意識が戻らない人が続出したのですよ。この事件を受けて某国は完全に国際的な立場を失い。隣国に吸収合併される形で消滅しました。これが第2次ALO事件と呼ばれる事件です。」


「死傷者数はどれくらいに登ったのでしょうか?」


「おっと、伝え忘れていましたが両事件共に死者は0だったので心配なさらずに。」


「それを聞けて安心しました。」


「ですが、安心できなかった人たちが居たのです。フルダイブ型という従来にない形のゲームと、2度に渡って事件を起こしたプロテクトの脆弱性。そこを激しく追及された販売会社は、とうとうゲーム業界から撤退する事になってしまいました。その煽りを受けて昔ながらのVRゲームも衰退したのです。」


「その販売会社というのは?」


「今や世界的な介護・福祉企業として名を上げているセカンドライフ社の事ですよ。この番組のスポンサーでもありますね。」


「えぇ!セカンドライフ社がゲームを作っていたんですか!?私信じられません。セカンドライフ社のハウスキーパーには良くお世話になってますし。」


「そうなんですよ。そのハウスキーパーという名の機械人形を作りだした技術は、EED製作のノウハウとゲーム関係の技術を使って作りだされたんですよ。」


「セカンドライフ社と言えばエレクトロン達の人権保護を一番に提唱した会社ですよね?」


「はい。エレクトロン。電子人間とでも呼ばれる彼らは、実はこのALO事件で誕生したと言われています。第2次ALO事件の後、サービス終了するゲームの中からAIプログラムを抜き出してハウスキーパーの素体に組み込んだのがその始まりなのだそうです。彼らはヴァーチャル世界で人と同じように育ち、過ごしてきました。感情もあり、自分達の考えもしっかり持っている。そんな人達を唯の道具として見ても良いのか?その疑問から生まれたのが現在エレクトロン達の名前にもなっているエレクトロン人権保護法な訳ですね。」


「この法案が制定されたのは5年前何ですもんねぇ。当時も様々な物議を醸しました。」


「概ね肯定的な意見が多かったですけどね。ここに来てフィクションに強い日本人の気質が出た訳です。当時からエレクトロン達の事を守ろうとする人は多かったですから。まぁ中には人形だからと無体を働く人も一定数居ましたが。」


「そんな時はセカンドライフ社が保護してくれてましたもんねぇ。生み出したのは私達なのだから、親代わりとなって我が子を守って何が悪い!そう言った二条前社長はとてもカッコ良かったです。」


「そうですね。法案成立まで時間はかかりましたが今やエレクトロン達は家族を持つ事も、家族になる事も出来ます。仕事としてハウスキーパーを続ける事も出来ますし、別の職業に就いても良い。私達人間と変わらない存在となっています。私は個人的にはエレクトロンという名前も撤廃してしまえばと思いますが。」


「差別だと言う人達も居ますからねぇ。子供も生めて人と同じように生活出来るならもう人間では?という人達ですね。でも彼ら自身がそう呼んで欲しいと言っているのですから私達は何とも言えませんね。」


「私も妻に苦笑いされて同じことを言われましたよ。」


「さて、VRゲームはなぜ衰退したのか。その理由は解りました。ですが、どうして20年前の事件を今更になって振り返る特番をやっているのか?視聴者の皆さんは疑問に思っている事でしょう。」


「その答えを発表させて頂きます。この度、セカンドライフ社は新たにVRゲームの発売を決定しました!」


「わー!パチパチパチ!」


「先に上げた2つの事件から学び、進歩させてきた新たなプロテクト。使用者を絶対に守る「ソウルウォール」がこの度無事国に認可されました。これによりフルダイブ型ゲームの安全性の確保と開発の認可が国から認められた形になります。この認可を持ってセカンドライフ社はゲーム事業を再開。新たにフルダイブ型のゲームを発売する事になったのです。」


「そのゲームの名前は?」


「『リバティライフオンライン』自由に自分のやりたい事をやって、自分だけの物語を紡いでいってほしいという二条会長の想いを受けたゲームです。発売は年が明けてすぐとなります。」


「販売価格はゲーム機本体とソフトを合わせて5万円。これはかなりお安くなりましたねぇ。」


「企業努力の賜物でしょうね。予約方法は公式ホームページに特設ページが在りますのでそこからお願いします。小売店などでは予約できませんのでご了承ください。」


「予約数に合わせて順次生産と発送を行います。お手元に届いたメールにて発送日の確認をお願いしますね。」


「それでは、新しく始まる楽しいゲームライフをお楽しみに!以上司会は私青野と。」


「紺野でしたぁ。」



毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 


始めましての方は初めまして。今までの作品を読んでいただいていた方はお久しぶりです。カクヨムの隅でコッソリ文章を書いているkotosuke5と申します。


大変お待たせしました!新作の公開ですよ!今回は見直しやプロット作成も在りますので週1更新になりますが、それでもよかったら読んでくださいませ。そして、☆や♡に応援コメントを頂けると喜んで執筆速度が上がります!


今回のお話は私の前作。VRMMO ランダムを選んだら攻撃力が無かったんだが!?と今作を繋げる橋渡しのお話。初めて呼んでくれた方は何のこっちゃ?と思うかもしれませんが、こういう設定がありますよぉーって思っていてくれればそれで良いです。読み飛ばしても大丈夫なので。


ではでは本日はもう1話上げますね。これでは主人公も出てきていませんので。これからこの作品をよろしくお願いします!


良かったら前作の方もどうぞ。https://kakuyomu.jp/works/16816452220667242585

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