第1話 僕と家族とEED
黒く染まった空に、赤黒い大地。僕の目の前には体が黒く赤い目をした巨大なドラゴンが聳え立つ。
逆に僕は手に光り輝く剣を握り、金の鎧を着てそのドラゴンと対峙してた。僕の後ろには綺麗なドレスを着た聖女の女の子と、魔法使いの女の子。そして狩人の男の人が立ってる。
「これが最後の戦いだ!行くよ皆!」
僕は剣を振りかぶり、ドラゴンに向かって行く。仲間達もそれに続き、魔法や弓で援護を始めてくれた。
戦いは激しく、僕も皆も傷付いて行く。そんな中、狩人の男の人が放った矢がドラゴンの眼に突き刺さった。痛さにのけぞるドラゴン。
「今がチャンスだ!」
僕は一層輝きを増した剣を振りかぶり、ドラゴンに飛び掛かって行って・・・・。
トントントントントン。ガチャッ!
「こら実!いい加減に起きなさい!」
「うーん・・・。あと5分寝かせてお母さん・・・。」
「いつからあんたは私の子供になったわけ?どうせ遅くまで動画でも見てたんでしょ。いい加減に起きなさい!布団引っぺがすわよ!ふんっ!」
バサッ!
「うわっ!あ、あれアク姉?ドラゴンは?僕の仲間は?」
「全くいつまで寝ぼけてるのよ。ほら起きなさい。今日が何の日か忘れたの?」
「あっ!そうだった!今日は僕の誕生日!」
「下でお父さんもお母さんも待ってるんだから早く起きなさい。」
「はーい!」
僕の名前は稲穂実(いなほ みのる)。今日15歳になる中学3年生。さっき僕を起こしてくれたのは、僕のお姉ちゃんで稲穂アクア。僕はアク姉って呼んでる。
それより早く着替えて下に降りなきゃ!今日は誕生日なんだからやっと両親に頼んでいた“アレ”が手に入るんだ!
ドタドタドタ、ガチャ!!
「おはようお父さん。お母さん。」
「ん。おはよう。」
「おはよう実。朝ごはん出来てるから先に食べちゃいなさい。」
お父さんが頑張って立てた2階建ての家。そのリビングではお父さんがテーブルに座って端末を使ってニュースを見てた。お母さんは台所で目玉焼きを焼いてくれてる。
お父さんの名前は稲穂幕(いなほばく)。お母さんは稲穂ホムラ。両親共にIT企業で働いてる。
「はーい。アク姉は?」
「もう友達の所に遊びに行ったわよ。」
「ぶー。今日は僕の誕生日なのに・・・・。」
「夜には帰って来るわよ。それより日曜だけど実は友達と予定とか無いの?」
「友達なんて居ないから・・・。」
僕達は最近この街に引っ越して来た。僕も新しい学校に行ったんだけど・・・・。とある事情で今だに友達が出来て無い。
「そう、早く友達が出来ると良いわね。」
「実。無理はするなよ。」
「うん。解ってるよ。」
僕の家はちょっと特殊なんだって。お父さんと僕は人だけど、お母さんとお姉ちゃんは違う。エレクトロンっていう、人にそっくりだけど人じゃない人達なんだって。僕は生まれた時から今の家族だったから何も思わないけど、世間から言わせたら異様に映るみたい。
元々住んでいた所がお母さんとお姉ちゃんに厳しい人達が多かったから、お父さんは引っ越しを決めたらしい。今居るこの街は、お母さん達みたいな人が多く住んでいるから安心なんだって引っ越しする前に話をしてた。
その言葉通りこの街に来てからお母さんも楽しそうに近所の人とお話してるし、お姉ちゃんは早々に友達を作ったみたいだ。
「実ももう15歳なのねぇ。時が経つのは早いわぁ。」
「実は、相変わらずか?」
「・・・・。うん。やっぱり運動は苦手。」
そう、僕が友達が出来ない理由。それは極度の運動音痴だから。日常生活じゃ普通に過ごせるのに、球技や運動になると予想もしていない方向にボールが飛んで行ったり足が滅茶苦茶遅かったりする。
その所為で体育の授業は何時も笑われてたし、チーム分けをする時は最後まで僕を押し付け合う状態になる。それは、転校しても変わらなかった。
最初は転校生って事で皆興味を持ってくれてたんだけどなぁ。運動音痴がバレた途端にクラスの一部が僕の事を馬鹿にし始めて、皆離れて行っちゃった。
「そうか。だがその為にこれを頼んだんだろ?」
「あら。もう出しちゃうのねあなた。」
「予定も無いんだったらすぐにやりたいだろう。ほら実。誕生日プレゼントだ。前から頼まれてたEEDだ。大事に使うんだぞ。」
「やった!ありがとうお父さん!」
「実も母さんの手伝いを頑張っていたからな。これくらい何て事無い。」
「あら。予約出来るかどうか不安だーって嘆いて居たのは何処の誰でしたっけ?」
「ごほんっ!あんまりゲームばかりせずに、勉強も頑張る事。食事の時は必ず顔を見せる事。手伝いもしっかりとする事。約束出来るな?」
「うん!約束するよ!」
お父さんがテーブルに出してくれた白い箱。その箱の中央にはEEDって大きく書いて在って、その横にはチョーカーの写真が貼ってあった。
20年ぶりに発売されたフルダイブ型VR対応のダイブ装置。僕がそれを頼んだのはこのゲーム機が欲しかったのも在るけど、友達作りのきっかけにしようと思ったんだ。
ゲームの中なら体の動きにアシストが付くから、運動音痴の僕でも戦えるはずだし。同じゲームをやっている子とも仲良くなれる筈!
「そう言えばEEDを買う時に面白い話を聞いたぞ?」
「どういうお話?」
「EEDの普及が進めば、学校の授業をVR空間で受けられる様にするらしい。通信教育を発展させた物になるそうだ。ゲームの時間加速機能を使うから普通よりも短時間で勉強出来るようになるそうだ。」
「あら良いわねぇ。それなら沢山勉強できそうね。」
「実が高校生になる時には実装されるかもな。」
「そうなったら実はどうする?学校通うの止めちゃう?」
「・・・・・・・・。」
「全く聞いてないな。」
「もう。一つの事に集中するとすぐにこうなるんだから。こら実!ご飯ちゃんと食べなさい!冷めちゃうわよ!」
「はっ!いただきまーす!!」
「まったく。大丈夫なのかしら?」
「実も大きくなったんだ。大丈夫だろう。」
急いで朝食を片付けた僕はそのまま自分の部屋に戻った。手に持ったEEDの箱を落とさない様にでも出来るだけ急いで!だって念願のゲームがやっと出来るんだ。今朝見た夢の様な事が僕にもやっと出来る!我慢できる訳ないよね!!
「じゃあ早速御開帳~♪」
箱の中にはQRコードと、写真と同じチョーカーが入ってた。チョーカーは少し太くて、顎の下に来るところに小さな箱がくっ付いている。
まずはQRコードを読み込んでっと。あっこれは説明書へのリンクなんだ。だったらまずは説明書のチェックをしないとね!読まないで動かして壊しちゃったら勿体ないからね!えーっと何々?
この度はセカンドライフ社開発のEEDをご購入いただきありがとうございます。この機器は最新のセキュリティである「ソウルウォール」を搭載した最新型となっており。文部科学省と防衛省から正式に認可を受けた商品となっております。過去の事件を2度と起こさない様に設計された・・・・・「長いよ!最初の1ページ全部EED開発の経緯ってどういう事なのさ!こういうのはパス!!」
EED使用上の注意
使用中は1時間が24時間に拡張されています。現実との時間間隔のズレを調整する為、ログイン、ログアウトの際は専用ロビーに案内されますので少しだけ待機して頂く時間がございます。
機器使用の際にはタイマー機能をお使いください。現実時間で設定された時間にログアウト出来るようになっております。
「ソウルウォール」で万全を期していますが、万が一の救済措置として外部からの強い刺激で強制ログアウトになるように設計されております。強制ログアウトの感度は初回起動時に設定できますが、デフォルトで使用する事をお勧めします。
身体的、心身的異常を検知した場合は強制ログアウトを実行します。強制ログアウトを行った後は1時間は機器の使用が出来ませんのでご了承ください。
未成年が使用する際は、必ず保護者の方に使用する旨を伝えて下さい。保護者の方にも説明書を読んでいただき、諸注意に付いて同意を得てからの使用をしてください。
ふむふむ、これはEEDを使う場合の注意点なんだね。あっ下の方に保護者確認欄が在る。サインを貰わないと行けないみたいだ。後で貰って来よう。
EEDの使用方法
頸部もしくは頭部にEEDを装着し、付属の機器に在るボタンを押してください。初回起動時は身体チェックが入ります。
身体チェックの後、お客様の意識をEEDの待機フロアにご案内いたします。そこで初期設定を行って頂きます。
情報端末とEED本体のリンクが可能です。メールや連絡の遣り取りをEEDを通して直接行う事が出来ます。
未成年の場合は保護者の情報端末とリンクさせてからでなければ使用できません。情報端末とリンクする事により、使用者の状態を保護者に伝える事が出来ます。異常を検知した場合保護者側から強制ログアウト操作が可能です。
うん、すぐに遊ぼうかと思ったけどお父さんかお母さんと一緒に説明書見た方が早いみたい。さっさとリビングに行って登録して貰おうっと。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited
今日は2話更新となっております。前の話は・・・・読まなくても大丈夫ですw
では次回更新をお待ちくださいませ。
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