第4話 僕と初戦闘とフィールドボス

ワクワクに突き動かされて僕はマップに表示された矢印の先に向かって急いで歩く。


行先は広間から北に進んだ門の外みたいだ。逆方向の南にも門があるけれど、そっちは進入禁止っていう赤い文字と、射線と黒で塗りつぶされたエリアになってた。あっちに行くのに許可とかが必要なのかな?


色んな種族の人達が北門からこの街に来ているみたいで、僕が今通っている大通りには人の流れが多い。


皆広場を目指しているみたいで、体が小さい僕は何回か人にぶつかりそうになったけど種人種の身軽さで何とか誰にもぶつからずに北門に辿り着いた!


門の所では門番さんが立ってたけど、特に出入りの管理をしている訳じゃ無いみたい。門の上の方に赤い宝石が埋まっていて、人が通るたびにキラリと光ってるけどあれがセキュリティなのかな?まぁいいや!それよりも早く外に出ようっと!


僕は急ぎ足のまま門を通り過ぎて、初めて街の外に飛び出した。そこは綺麗な草原で、門の所からどこかに向かって道がずーっと続いてた。所々に背の高い雑草が生えていて草むらが出来てる。ああいう所に魔物が潜んでたりしそうだね!


そんな平原には僕みたいな初心者装備をした人たちが沢山居て、目の前のスライムに向かって色んな武器を使って戦ってた。あれが次のチュートリアルなのかな?


『チュートリアル3:魔物を倒してみよう。』


そんな事を考えてたら、思っていた通りに戦闘のチュートリアルが始まったみたい!よーし、頑張るぞー!


『目の前にチュートリアル用の魔物をポップします。どのような手段でも良いのでその魔物を退けて下さい。』


ウィンドウが目の前に表示されたと思ったら、地面からスライムが生まれた。ふむふむ、こいつを倒せって事なのかな?


「それじゃ早速。そりゃ!!」ブンッ!


「ぽよ?」ガンッ!


僕は腰からぶら下げていた初心者の剣を抜いてスライムに斬りかかった!だけど僕の攻撃はスライムに当たらずに、スライムの横の地面を叩いちゃった。初めての戦闘で緊張しちゃったかな?失敗失敗。


「でも次は無いよ!エイヤッ!」ブォンッ!


ガンッ!「ぽよ?」


今度は少しだけ力を抜いて剣で攻撃してみた。だけどその攻撃は反対側の地面を殴って終わっちゃった。真っ直ぐ狙って攻撃した筈なのになぁ?


「あれ~?」


「ぽよ~?」


「ぷっ。何やってんだよあいつ。チュートリアルモンスが動く訳無いだろ。」


「だっせ~。こんな奴ワンパンで終わるのによ。」


僕の近くで同じようにスライムと戦っていた人達がこっちを指さして笑ってる。は、恥ずかしいぃ。


「こ、このっ!」ブォンッ!


ガンッ!「ぽよっ!」


「えいっ!」ブンッ!


「ぽよぉ。」ガンッ!


「当たってよぉぉぉぉ。」ブンブンブン!


「ぽっぽよぽよぽよ。」ガンガンガン!


何とか目の前のスライムを倒そうと剣を振るけど、なぜか攻撃が全然当たらない。周りの人達は簡単そうにスライムを倒してるのに・・・・。アシスト機能が付いてる筈なのに何でぇ・・・。


「ブハハハハハ!!スライムに遊ばれる何てダッセ!!」


「MMOで戦えないなんてゲームやってる意味あるのか?無いよなぁ!」


「あー笑い過ぎて腹いてぇ。面白いもん見れたわ。」


「チュートリアル終わったしさっさと冒険行こうぜ。」


剣を持ったまま項垂れてたら、近くに居た人達はどんどんスライムを倒してどこかに行っちゃう。僕も後に続こうとして頑張って剣を振り続けるけど、どうやっても当たらない。


「どうして当たらないのぉ!これじゃ冒険出来ないよぉ!グスン・・・。」


「ぽよぉ・・・・。」


周りの人には馬鹿にされるし、スライムには全く攻撃が当たらないし、悔しくて涙が出て来た・・・・。アシスト機能ちゃんと仕事してる?


『アシスト機能はきちんと機能しています。』


「じゃあどうして攻撃当たらないんだよ!絶対おかしいよ!」


『アシスト機能は正常に稼働しています。』


「ぽよっ!」


「あっ!待って!」


「ぽよぽよ~。」


『チュートリアル3 クリア。』


攻撃目標だったスライムが、アシスト機能に怒っている間にどこかに行ってしまった。攻撃出来ない僕に同情したのか、元気付けるかの様にぴょんって飛び上がって。


慌てて待ってと声を掛けたけど、スライムはそのまま近くの草むらの中に入って行っちゃった・・・。こうして僕の初めての戦闘は終わってしまった。


こ、このままじゃ終われない。僕はこのゲームで立派に冒険するんだ!はっ!武器が体に合って無いんじゃない?だから攻撃が当たらないんだ!剣を振ってもぶれるし、そうに違いない!武器を変えなきゃ!


『チュートリアル4 ギルドに登録しよう。』


「それは後!まずは戦闘のリベンジだ!」


『チュートリアルを中断します。再開したい場合はチュートリアルの項目からスタートを選択して下さい。』


僕は急いで街に戻って、武器屋さんに飛び込んでありったけの武器を買って来た。全部初心者用だけど、15個も在れば何とかなる筈!所持金は0になっちゃったけど、使わない武器は武器屋さんが半額で買い取ってくれるみたいだし大丈夫!


「まずはナイフだね。最初に忍者みたいだって考えたんだから、これはいける筈!」


さっきチュートリアルの項目を見たら、最後までクリアしなければ何回でも戦闘の練習が出来るみたいだ。特に何かが手に入るって事は無いみたいだけどね。だから僕はもう一回スライムを呼び出した。


「今度こそ!スライムに勝って冒険者になるんだ!」


「ぽよっ!」


「スライム覚悟!!」


結論から言っちゃうと、どの武器も僕には合わなかった。ナイフも、弓も、槍も、ハンマーも、杖も、トンファーも、ナックルも、鞭も、刀も、鎌も、斧も、ボウガンも、銃も、指輪も、盾も。全部試してみたけどどれを使っても攻撃が当たらなかった・・・・。


「何で。どうして攻撃が当たらないの。どうして・・・。」


「ぽよっ!」


「あっ・・・・・。」


何回か試してみて解ったけど。このチュートリアルスライムは一定時間が経つと勝手に居なくなっちゃうみたい。僕みたいに攻撃が苦手な人の為の救済措置なのかな・・・。僕以外に攻撃が当てられない人は見た事ないけど・・・。


「うぅぅぅぅぅ。これじゃ冒険に出られないよぉ・・・。」


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「何だあれは!!」


「ちょっと、こっちに来るわよ!!」


「逃げろ!逃げろー!!」


散らばった初心者武器の中心で打ちひしがれていたら、周りで同じようにチュートリアルを受けていた人達が何か騒ぎ始めてた。一体どうしたんだろう?


「ひぃぃぃぃぃっ!逃げろぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


「何で俺達の方に向かって来るんだよ!あっち行けよ!」


「レアモンスだからってちょっかい掛けるんじゃ無かったぁ!!」


「「「助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!」」」


人の叫び声が聞こえたと思ってそっちを見たら。さっき僕の事を指さして笑っていた3人が凄い土埃に追われて逃げてきている様子だった。あれは何かに追われてるの?


「トレイン何てマナー違反だぞ!」


「誰かあれに対処出来る人居ないの?」


「ここら辺は初心者エリアだからあれに対処出来る奴なんていねぇよ!」


「早く街に逃げ込みなさい!今すぐに!」


3人が終れている事に気が付いた人達が街の門に殺到してる。門番さんも、すぐに逃げ込むように避難誘導を始めてた。


僕も、街の中に逃げ込む為に走ろうとしたんだ。だけど、いつもの通りに足がもつれてその場で転んじゃった。


「ぎゃーーーっ!!」


「や、やめっ。うばぁーーーーっ!!」


「ひぃぃぃぃ、初日でデスペナは嫌だぁぁぁぁぁあがぁっ!!」


転んじゃった僕のすぐ後ろから、逃げていた3人の悲鳴が聞こえた。恐る恐る体を起こしながら振り返ると、そこには3つの首を持ち上げた蛇の魔物の姿が在った。


特殊フィールドボス トライサーペント


蛇の魔物の上には、禍々しい紫色の文字で魔物の名前が書かれていた。



毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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