第3話 僕と最初の街とお店

ガヤガヤガヤ


まだ視界は真っ白に染まったままだけど、僕の耳には人々の喧騒が聞えて来た。徐々に真っ白だった視界に景色が映り始めて、僕の脚が地面に着く感覚がした。


「凄い・・・・。」


僕が降り立ったのは中世の街の広場みたいな所。ヨーロッパの街並みをそのまま持ってきました!って感じ。その広場の中央には巨大な樹が聳え立っていて、その周りには僕と同じ様にログインして来た人達が光りと共に降り立っていた。


人の呼吸も、がやがやと五月蠅い喧騒もまるで現実みたいだ。吹き抜ける風も、木の香りも感じ取れるよ!樹の生えている所が水路になってて魚も泳いでる!


「わっ冷たい!すごいなぁ、ゲームでここまで再現してるんだ。」


試しに水に手を突っ込んでみたら流れも感じ取れるし冷たかった。本当に、異世界に迷い込んだみたいな感覚になるね。さらにワクワクして来た!


『チュートリアルを受けますか?』YES/NO


「わっ!チュートリアルが在るんだ!」


早速魔物を退治しに出かけようと思ってたけど、こういうのが在るならしっかりと受けておかないと後々困ったことになりそう。もちろんYESだね!


『チュートリアル1:街の中を歩いてみよう。』


「ふむふむ、最初は街の中に在る施設を回るんだね。」


と言っても大体広場の近くに設置されているみたいだけどね。


「えっと最初の場所は・・・。」


「いらっしゃい。素泊まりなら100G。食事つきなら150Gだよ。」


チュートリアルを受けたら視界の端にマップが表示されてたんだよね。そのマップに出ている矢印に従ってお店に入ったら、エプロンを付けた女性の人がカウンターの中で肘をついて座ってた。ここは宿屋さんみたい。


「えっと、今日からこの街でお世話になるミノルって言います。よろしくお願いします。」


「よろしく。そうかい新人さんかい。なら知っておいた方が良いね。新しい街に行ったら宿屋には必ず寄るんだよ?復活地点の更新は宿屋でしか出来ないからね。」


女将さんが姿勢を正してそんな事を言って来る。僕達みたいなのはこの世界で旅人って呼ばれてて、神様に祝福されているから不死身の肉体を持ってるって言われてるらしい。その加護のお陰で僕達は死んでも復活出来るって信じられてるんだって。リスポーンの説明の所に書いて在った。


「あれ?でもさっきの言い方だと・・・・。住人の人も僕達みたいに復活出来るんですか?」


「ん?出来る訳無いじゃないか。今の説明は旅人用の物だよ。宿屋は国営でね。資格と設備が整っていないと開業出来ないんだよ。だからうちには旅人用の魔道結晶が設置されてるって訳さ。解ったかい?」


「はい!解りました!」


宿屋の女将さんが学校の先生に見えて元気よく返事しちゃった。魔道結晶って言うのは、神様から授かった旅人用の綺麗なクリスタルの事。旅人である僕達が触ったら、そのクリスタルが復活地点として登録されるんだって。宿屋に出てくると邪魔だから、降り立つ場所として広場が在るんだって。だから宿屋と広場は2つで1つになってるよ。


「それで?泊まるのかい?」


「いまはお金が無いのでまた来ます!」


初期資金は貰ったけど、無駄遣いしてたらあっという間になくなっちゃうもんね。まだまだ遊ぶ予定だし、お金が余ったら泊まりに来よう!


「あいよ。宿屋でちゃんと休まないとこの世界に来た時に能力が下がる場合が在るからね。野営用品が無い場合だったり、安全が確保出来た場所じゃ無かったらこの世界から出るんじゃないよ。あとHPとMPの回復には休息かポーションが、スタミナの回復には食事が必要だからね。楽しいからって寝食を忘れるんじゃないよ?」


「はい!失礼します!」


ちょくちょく大事な情報を教えてくれる女将さん。説明書に書いて在ったから僕は知ってるけど、読まなかった人用に教える事になってるみたいだ。


「さて次のお店は・・・・。」


「・・・・客か。」


「失礼しまーす。」


「来て早々帰るな。」


扉を開けたら顔に傷の在るスキンヘッドのおじさんが居た!革製のエプロンを着てるけど筋肉でぱっつぱつになってる。ちょっと羨ましいなぁあの筋肉・・・・。


「ここは武器屋だ。防具も売ってる。死にたく無かったら何か買っていけ。」


「えっと。僕まだここに来たばかりでお金が無くて・・・・。」


初心者用の装備は1つ100Gだけど。その一個上の鉄装備がなんと1つ1000G!初心者装備の10倍の値段がします!こんなの買ったらすぐ破産しちゃうよ・・・・。まだ貰った剣も使って無いし、ここでの買い物はパス!


「なら見るだけでも良い。ここにある装備を目標に、無理せず稼げ。じゃないとお前もこうなるぞ。」


「ひえっ!!」


そう言って店の親父さんが片足を上げて見せてくれたけど、そこには足が無くて木の棒がくっ付いていた!これって義足なの?


「一匹狼を気取って粋がっていた時に森に入ってこの様だ。お前も無理だけはするんじゃないぞ。逃げる事は決して恥ではない。」


「解りました。」


見た目は怖いけど優しいおじさんみたい。魔物が倒せるようになったら、お金を稼いでここで装備を整えよう!


「次!」


「いらっしゃーい。よく来たわねぇ。」


「綺麗なお姉さんこんにちは!」


「あら。嬉しい事言ってくれるわね。飴食べる?」


「おいしい!」


次に来たのは服屋さん。そして出迎えてくれたのは綺麗な金色の髪をしたお姉さん。思った事をそのまま言ったら美味しい飴が貰えちゃった!


店内の方を見てみると、今僕が着ている服と同じ様な物が並んでる。でも値段が高いなぁ・・・。服とズボンで合わせて1500Gもするよ。1セット買ったら所持金が無くなっちゃう!あれ?奥の方になんかキラキラ輝いている服が見える。


「あれは森に居るポイズンスパイダーの糸で作った服なのよ。毒耐性が付く貴重な物よ?買ってく?」


そう言ってお姉さんが勧めて来るけど、お値段3000G・・・・。


「ごめんなさい。お金が無いので買えません・・・・。僕今日ここに来たばかりなので。」


「あらそうなのね。じゃあお金が溜まったらまた来なさい。服には色々な特殊能力が付けられるの。必ずあなたの役に立つわ。」


「はい!また来ます!」


優しいお姉さんだったなぁ。飴も貰ったし絶対買い物に来ようっと。


「えっと次はお肉屋さん?」


「へいらっしゃい!何に致しやしょう?」


「あっ今日からこの街にお世話になるミノルって言います。今日は挨拶周りです!」


「おっそうなのか!じゃあ森で魔物を狩ったら持ってきな!肉を買い取ってやるからな!こんな風に!」


「わー、沢山お肉が在りますね。」


次に来たお店はお肉屋さん。コック帽と白いエプロンを付けた太ったおじさんが大きな包丁を持ってお店の前に立ってた。その後ろには沢山の吊るされたお肉が見えるね。お値段が1つ50Gってかなり安くない?お店の経営大丈夫?


「最近旅人達が来て景気が良いのさ!仕入れた傍から売れて行くから儲かってるんだよ。だから坊主もよろしくな!」


「はい!魔物を狩ったら持ってきます!」


元気の良い人だったなぁ。包丁を振り回すのはちょっと怖かったけど・・・。えっと次は・・・。お隣?


「八百屋さん迄在るのかぁ。でも肉屋さんに比べてこっちは何か寂れてる?」


肉屋さんにはいろんな人がお肉を持ってきてたから沢山お肉が在った。でも八百屋さんはと言えば、軒先に少しの野菜しか置いて無い。うわっ!野菜の値段がお肉の100倍もするよ!野菜1つ5000Gってぼったくりじゃないの?


「何でこんなに高いんだろう?」


「おや旅人さん、何か買っていくかね?」


八百屋さんで萎びた葉っぱみたいな野菜を見て居たら店のお婆さんに声を掛けられてしまった!!買いたくても所持金が足りないから買えないよー。


「どうしたね?買わないのかね?」


「あっごめんなさい。手持ちがないので買えないんです。僕今日この街に来たばかりで。」


「そうだったのかい。じゃあ値段が高くてビックリしたろう?」


「はい。どうしてこんなに高いんですか?」


「それはの。作物を育てる人がこの街にはおらんからだよ。このホウレンも、遠くの街からわざわざ運んで来たから輸送料が掛かって高くなっておるんじゃ。」


「へぇ~。そうなんですかぁ。」


この萎びた葉っぱはホウレンって言うのか。そう言われたらホウレンソウに似てるかも?


うーん。家庭菜園くらいなら手間は掛かるけど気軽に出来たりするんだけどなぁ。僕も小学生の時にばあちゃんの手伝いで野菜作ってたし。


『チュートリアル2:街の外に出てみよう。』


「あっ!ごめんなさい!次の目的地に行かなきゃ!」


「そうかい。気が向いたらまたおいで。」


「はい!失礼します!」


これで街の中が見れたのかな?僕達に関係の在る施設だけを案内したって感じみたい。次はいよいよお待ちかねの街の外だ!魔物を倒してお肉屋さんに持って行くぞー!


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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