第28話 僕と巣穴?と果物と
見つけた!
獲物を追いかけていたウェアタイガーは奴らの巣の近くでミノル達を発見した。
だが、先程自分と戦った奴が居る。自分に傷を負わせられなくとも、邪魔をしくるのは間違いない。
だからこそ先に、自分の探し物を見付ける事を優先することにした。
林に潜み、様子を伺う。奴らが何か持っている様子はない。
見当違いだった?
そう考え始めた時、匂いが解らなくなっていた鼻があの、甘い匂いを嗅ぎ付けた。
あの小さい奴だ!あいつが持ってる!
捜し物は見つかった。ならば次は確実に自分の物にする為の準備だ。
ここは奴らの巣の近く。ならば、巣に入る直前であれば油断するはず。
そう考えたウェアタイガーは自分の身がギリギリ隠せる茂みを見つけ、そこでチャンスを待った。
歩いてくる奴ら。その時、小さい奴が自分の事に気付いた!
だが幸いあの邪魔者はこちらに気が付いていない。なら今だ!
ダッ!
駆け出したウェアタイガーは一目散に小さい奴に飛びかかり、抱えあげてすぐに牛を蹴り飛ばしその反動で林の近くに着地した。
うまく行った!
スンスンと確認の為に小さい奴の匂いを嗅ぐ。間違いない。こいつが甘い匂いの正体だ。甘いだけでなく、心地よい匂いもしている。これは良いお宝をゲットした!
歓喜に震えるウェアタイガーの前で、邪魔者とよくわからない奴と牛がお宝を取り返そうと追ってこようとしていた。
それに加えて、通りがかりの奴が自分の存在に気が付き巣に応援を呼び掛けていた。
巣から大勢の気配がする。邪魔者達も居ることだし、ここは逃げよう!
ウェアタイガーは林の中に逃げ込んだ。その時うっかり枝を小さいやつに当ててしまったが、動かなくなったので都合が良かった。
林を抜け。なるべく生き物の気配がしない場所を目指していると、地面に穴が空いているのに気が付く。
一度この中に逃げ込もう。付近に甘い匂いもしているし。籠城する為の食料も集められそうだ。
こうしてウェアタイガーはハント達から逃げ切り。一時の隠れ家を得てミノルの誘拐に成功するのだった。
ミノル視点
ざりっ、ざりっ、ざりっ。
気絶の状態異常になってからしばらく経って、僕の耳に何かを削るような、拭き取ってるような音が聞こえ始めた。
少しずつ目の前が明るくなってきて、一瞬の強い光の後に周りの様子がやっと見えるようになったよ。
「って、えええええええええええええ!!」
「ぎゃうっ!?」
僕の目の前いっぱいにウェアタイガーの顔が写って思わず叫んじゃった。突然僕が大声出したものだから、ウェアタイガーもびっくりして目を丸くしてる。
ってそんな事よりここは何処!?僕はどうなっちゃってるの!?
「コルルルルルル」ざりっ、ざりっ。
「あっ、ちょっ、ちょっと止めて。舐めないでぇ。」
僕がパニックに陥っている隙にウェアタイガーが僕の体を舌でペロペロと舐め始めた。さっきの音はこれだったんだね。硬い物を削り取りそうな音してるけどHPは減ってない。それよりもくすぐったいから止めて!
「あっ駄目だ逃げられない!ガッチリ抱え込まれちゃってる!」
「コルルルルルル♪」
ウェアタイガーは横になった状態で僕の事を腕で抱え込んでる。逃げ出そうと体を動かそうとしたんだけど、相手の力が強すぎて全く動かなかったよ。
「これ。一体どうしよう?」
「コルルルルルル♪」
いきなりキルされちゃうって事は無さそう?でもどうしてこんなに機嫌が良いんだろう?
ふんふんふん。「コルルルルル」
「匂い?」
僕の体に着いた匂いを嗅いで機嫌が良いの?でも僕の匂いって・・・・・。あっ。もしかして甘芋?飛んできた奴を拾った時に匂いが着いたのかな?抱えるくらいに大きかったもんね。今はインベントリに入れてるけど。
ざりざりざり。ペロペロペロ。ふんふんふん。
うーん。このままだと何も出来ないよね?さっきの甘芋。だしてみようかな?食べてる隙に逃げられるかもしれないし。
「えっと。これ食べる?」
「ガウ?」
インベントリから取り出した甘芋は炭みたいに真っ黒。だからこれが何か分からないんだろうね。ウェアタイガーは首を傾げてじっと見てる。
「これはね。中身を食べるんだよ。ほらっ。」
「!?」
反応した!やっぱりこの子甘芋を狙って襲ってきたんだね!
だったらこれを使えば僕から離れてくれる筈!!
「ほら取っておいで~。」
「ぎゃうっ♪」
甘芋をできるだけ遠くに投げてやっと解放されたよ。ここは何処だろう?
「洞窟?」
天井に穴が空いててそこから陽の光が入ってきてる。結構明るいね。
甘芋を投げた方には壁から水が流れてて、窪みに水が溜まってる。
反対側には何かが山のように積まれてるけど、影になっててわかりにくい。まっ、まさか人骨とかじゃないよね?
「ぎゃうぎゃうぎゃう〜ん♡」
ウェアタイガーはまだ甘芋に夢中だ。今の内に脱出しないと。
「って、出口が天井の穴しかなーい!!」
影になってる場所が在るとは言っても、壁が見えてるんだよ!つまりここは小さな落とし穴みたいな所って事。
「はっ!!マップは!!」
ダメだー。気絶してる間に移動した場所は表示されてない。周り全部灰色だー。
「流石にあの穴には届かないし・・・。そうだ!フレンドコールで助けを呼ぼう!!」
人数は少ないけどフレンド登録してる人はいるもんね。まずはハントに連絡をってあれ?フレンド一覧が開けない?
なんか警告記号(⚠)が出てる?
⚠現在プレイヤー名ミノルは捕虜になっています。外部との連絡及び死に戻りでの脱出は不可能となっています。この状態を解除するには、助けを持つか自力で現状からの離脱を図ってください。
な、なんですとー!?この状態から自力で逃げるなんて無理だよー。
「ガッフガッフガッフガッフ」
あぁ、とうとうウェアタイガーが甘芋食べだしちゃった。
どどど、どうしよう!?甘芋はもうないし、このままじゃ僕どうなっちゃうか分かんないよ!
「あれ?」
さっき何が積み上げられてるか分からなかった場所。無意識にウェアタイガーから離れるように動いてた僕はいつの間にかそこに近づいてたみたい。
ここまで近づいたら何かわかるね。これ、果物の山だ。中には栗も在るけど。木から採れるものって事かな?
後齧った跡の在る木も転がってる。もう殆ど木くずになり掛かってるけどね。
「そうだ!一旦この中に隠れよう!」
僕の体は小さいから、果物の山に簡単に潜り込めるもんね。ついでに体に果物の匂いが移ったら甘芋の匂いが消えるかもだし。匂いで追われることもないはず!
「お邪魔しまーす。よいしょっと。」
少し広めの隙間の中に無理やり体をねじ込む!狭いけど、入れないほどじゃないね。後は周りの果物を体にこすりつけてっと。これで大丈夫でしょ!
「グルッ?」
丁度ウェアタイガーが甘芋を食べ終わったみたい。不思議そうな鳴き声がしてるって事は僕がいないことに気がついたかな?しまったなぁ。外の様子が見える場所にすればよかったかも。
「グルルルル。」
だ、だんだんと鳴き声がこっちに近づいてくる。バレませんように、バレませんように、バレませんように・・・。
スンスン、スンスン。
鼻息がだいぶ近い!お願いだから気付かないでー!
「グルル。」ガバッ!
「ですよねー。」
野生相手に僕の浅はかな考えなんて通用しませんよねー。知ってた!
もうバッチリ目があってます。ウェアタイガーは僕の上に乗ってた果物を軽々と退かしたんだもん。これは最初から気が付かれてましたね。失敗したぁぁぁぁ!!
「コルルルルル。」
「や、やめ。ひゃーーーーーー!?」
ペロペロがベロベロに進化したぁ!うひひひひ、くすぐったいー、誰か助けてー!!
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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