第17話 僕と傭兵と約束のお酒3
「ほ、本当にそんな力を赤落ちが持ってるんですか?」
「ぶも?」
「おう。と言ってもそんなこと出来る奴は指名手配になるような相当な手練れになるけどな。」
ほっ。だったら僕は狙われないね。こんな辺境に居る、ただ農園を経営している子供だもん。
「それは危ないですな。確実にミノル殿が狙われますな。」
「だろ?」
「えっ!?どうして僕が!!」
「ミノル殿。先程も申し上げましたがグランドリーフは高位回復薬の生成に必要な貴重な薬草なのですよ?つまり、それだけ希少価値が高いものになります。そんな貴重なグランドリーフを採取ではなく栽培出来る人物が居るとなれば、悪巧みをする連中からしたら格好の獲物ではないですか?」
「目に見える護衛の居ない、牛を飼ってるだけの種人種の農家なんて鴨にしか見えねぇって。」
ほわぁー!!そう言われたらそうだよ!僕自身が戦えないってことはハーメルンで調べたらすぐに分かるだろうし。襲撃してくる人が集団で襲い掛かってきたらウー太だけじゃ撃退も難しいよね!チュー太に戦闘は期待できないし!
「そ・こ・で。ミノルに提案だ。お前、傭兵を雇う気はないか?」
「傭兵を、雇う?」
「おう。」
詳しく話を聞いてみると。そもそも傭兵ギルドっていうのは対人戦に特化した人達のギルドなんだって。
だから赤落ちの対応にも馴れてて、赤落ち達が使う犯罪スキルの反対、犯罪対策用のスキルなんかも持ってる人がいっぱい所属してるらしいよ。
お酒の原料としても回復薬の原料としても貴重なグランドリーフを育てられる僕の護衛に、対人戦に強い傭兵を雇ってみたらと提案してくれたみたい。
「ヴァカスとの取引が正式に始まったら雇用費も払えんだろ。いい提案だと思うんだがどうだ?」
「冒険者とか騎士じゃ駄目なんですか?」
「ミノル殿。冒険者ギルドは主に魔物対策に特化した方々が多く所属している場所ですよ。騎士ギルドは街や建物での防衛に特化した方々ですから、傭兵ギルドの方より森や畑での対人対応に馴れているとは言えません。やはりここは傭兵ギルドに頼むのが得策だと思いますよ。」
へぇ〜。戦闘ギルドってそんなふうに棲み分けされてたんだ。この前みたいに人に襲われるのは怖いし。できればお願いしたいかなぁ。
「ぶもっ!!」
「どうしたのウー太?」
「ぶもぉ〜。ぶもぉ〜!」
ウー太が興奮しながら僕に軽く頭突きを繰り返してくる。えっと?せっかく護衛として自分が居るのに信用できないのかって?
「信用できない訳ないじゃん。ウー太は僕の立派な護衛だよ。」
「ぶも。」
「だけどね?ウー太が戦ってる間に僕を守ってくれる人も必要だと思うんだ。だから1人だけ雇いたいんだ。駄目かな?」
「・・・・・・ぶもっ。」
「ありがとうウー太!僕の一番の護衛は君だからね!」
しぶしぶって感じでウー太が納得してくれた。すっごく渋い顔してたけど、僕の言う事も一理在るって思ったみたい。
「突然牛に話しかけたと思ったら自己完結しやがったな。俺達は何を見せられてるんだ?」
「さぁ?そう言えばこのウー太殿も普通の牛と違うような?」
「バルトさん。ヤマブキさんと相談してからになりますけど。ヴァカスさんとの商談がうまくいったら護衛の派遣お願いしても良いですか?」
「おう。こっちから言い始めた事だからな。全然良いぞ。そうなったら前は急げだな。ヤマブキの所に行って早速話まとめっか!ヴァカスも付き合え!」
「もちろんですとも。命の酒が大量生産出来るかどうかなのです。店は一時的に閉めますよ!」
という訳で作ったお酒を傭兵ギルドに届けがてら、農業ギルドに戻って来ました!
「私聞いてないんだけど!?ミノル君がグランドリーフの栽培に成功してたなんて聞いてないんだけど!?」
「あれ?言ってませんでしたっけ?」
「お酒が作れそうな作物が出来たけど、発酵や蒸留が出来ないから知ってる人を紹介してほしいとしか聞いてないわよ!!知ってたならすぐにでも薬師ギルドに連れて行ったのに!そうしたら上位回復薬が沢山・・・・。」
「残念ながらミノル殿が持ってきた物はすべてお酒にしてしまいましたよ?」
「しっかり傭兵ギルドに納品してもらったからな。」
「ノォォォォォォォォォッウ!!」
大変だ!!ヤマブキさんが壊れた!
「叫んでる暇在るのかヤマブキ。こうしてる間にもミノルの農園のグランドリーフが狙われてるかもしれねぇぞ?」
「はっ!そうだったわ!ヴァカス酒店への物品の納品と、傭兵ギルドとの護衛契約だったわよね。さっさとやるわよ!ついでに薬師ギルドの方にも話を持っていきたいのだけど良いわよね!」
血走った目で僕の顔を掴んでそう宣言するヤマブキさんに、僕は逆らうことなんて出来ませんでした・・・・。
「うっし。それじゃこれで契約完了だな。護衛の報酬はヴァカスとの取引の一部を流用するってことで、ミノルの手出しは無しだ。」
「これで命の酒が作りたい放題!それどころか更に改良するための材料すら在る!こんなにうれしい事は無いですな!」
「ごめんねミノル君。命の酒を報酬に組み込みたかったんだけど、流石に未成年のあなたにお酒の報酬は渡せないの。その分薬師ギルドの方から定期的に回復薬を回してもらうようにするから許してね?」
ヤマブキさんが分身してる様に見えるくらいの速度で契約が終わっちゃった。薬師ギルドの方は今はギルド長が居ないから、後日正式に契約の提案しに行くんだって。同行して欲しいってお願いされちゃった。
報酬の方は、諸々の費用を引いた分のお金が定期的にヴァカス酒店から納金される形で落ち着いた。
ヤマブキさんにお願いして命の酒をちょっと貰えないかなって相談したんだけどね。未成年でお酒が飲める歳じゃないからって却下されちゃった。うーん、皆が絶賛するお酒飲んでみたかったんだけどなぁ。味が気になるのです!
ちなみに薬師ギルドの方は確実にこの話に乗ってくるだろうって。
「それにしても契約人数は1人で良いのか?もっと大勢でも良いんだぞ?」
「僕が言っちゃったのも在るんですけど、ウー太が1人以上は認めないって言ってるんです。自分がいれば、ハーメルンに逃げ込むくらい出来るって。だから任せてみようかなって。」
「そうか。確かにオーガカウだったらそれくらい余裕だわな。」
「ぶもっ!」
「良いですなぁ。たまにはうちの店の納品を手伝ってくれませんかねぇ?」
「ぶんもっ。」
「自分の役目は僕の護衛だから嫌だそうです。」
「残念ですなぁ。」
ウー太の正体がオーガカウって事はヤマブキさんがバラしちゃいました。バルトさんは納得の表情で、ヴァカスさんは驚きすぎて又ウー太に蹴り飛ばされてたよ。バルトさん曰く、普通の牛ではあり得ないくらいのオーラが見えてるんだって。僕には全く見えないけど本当かな?
「契約も終わったし早速ギルドに行ってミノルの農園護衛の依頼出しとくか。ミノルはどうするよ。一緒に来るか?」
どんな人が護衛として来てくれるか気になるし、一緒に見に行こうかな?
ピロン♪
あれ?なんか通知が届いてる?
『保護者から連絡が届きました。』
『ミノル〜。明日学校なんだからそろそろ寝なさーい。寝ないとゲーム没収するわよー。』
「ごめんなさい!僕もうそろそろ帰らないと!護衛の件はお任せします!ウー太急ぐよ!」
メッセージの相手はお母さんだった!お母さんはやると言ったらやる。だから早く寝ないとせっかく買って貰ったEEDが取り上げられちゃう!
「おっおう。それじゃ決まったら本人を農園に送っとくから、しっかり挨拶しておいてくれよな。」
「グランドリーフの納品をお願いしますよ!」
「気をつけて帰るのよ!戻ってきたらすぐにギルドに顔を出すこと!良いわね!」
「はーい!それじゃ失礼しまーす!」
「ぶもーっ!」
急げ急げー!農園に戻ってログアウトして歯を磨いてすぐに寝るぞ!あっ、その前にちょっと掲示板でも見ようかな?
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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