第24話 僕と救荒作物と配達

前線に送るための食料を作って欲しいって聞いた僕は、ヤマブキさんから渡された箱を持って急いで農園に戻ったんだ。


その作物の名前はアマ芋っていう名前。うんそうだね、さつまいもだね。


ハーメルン周辺でも育てられる救荒作物としてヤマブキさんが蔓の一部を取り寄せてたらしいんだよね。で、それを自分の荷物と一緒に運んでたのがセイカさんだったらしいよ?


セイカさん救出の際に1つだけ無事だった箱があって、その荷物に農業ギルドのマークが書かれてたから大事なものかもしれないって事で冒険者の人が回収してたんだって。


それで何でこのアマ芋を育てるかって言うと。腹持ちが良いのと育てやすいっていうことの他に、栄養バランスを取るためっていう理由が在るんだ。


リバティライフオンライのスタミナ回復は食事と休憩によって行われるんだけど、どんな物を食べるかと栄養のバランスが取れてるかで回復量が変わるんだよね。


だからお肉ばっかり食べてたらそのうちスタミナの最大量が凄く少なくなっちゃうし、逆に野菜ばかり食べててもスタミナの自然回復量が伸びなかったりするんだ。まぁ食べられないって人の為に救済措置も在ったりするんだけどね。


んで。今回野菜に関してはオヤさんの漬物が在る。お肉に関しても沢山送ってるから必要がない。じゃあ主食は?ってなるんだよね。


普段は輸入してる小麦でパンを作ってるんだけど。今はその輸入が街道が封鎖されてるせいで完全に止まっちゃってるからパンを必要量作るのは無理な訳ですよ。


そこで!セイカさんが持ってきてくれたアマ芋の出番って言うわけ。芋を主食にしてる所はリアルでも在るからね。ちょうど良かったんだ。


今回は売り物を作るわけじゃなくて、とりあえず食べられる物を作れば良いからぐんぐんノビールEXを使っちゃう。


見た目が悪くてもとりあえず食べられれば良いって冒険者ギルドからも許可は貰ってるし、出来た量に合わせてギルドからお金が支払われる様に話は通してくれているみたい。


もともとギルドの種芋を貰って育てるんだし、緊急事態だから報酬は要らないって僕は言ったんだけどね?


それじゃ何か在った時にずっと無料で助けないと駄目だから、ちゃんと報酬は貰いなさいってヤマブキさんに怒られちゃった。


という訳で手分けしてどんどんアマ芋を植えて。葉っぱが枯れてきたくらいでどんどん収穫していく。


ぐんぐんノビールEXのお陰でテニスコートの半分しかない僕の畑でも、ウー太の引く荷馬車に山盛りのアマ芋を収穫することが出来たよ!


これで主食の件はしばらく問題ないはず。農業ギルドに納品に行くよ!


「ごめんなさいミノル君!出来たアマ芋は直接持っていってくれないかしら!!」


農業ギルドに行ってヤマブキさんに声を掛けたらこう言われちゃいました。お肉とかオヤさんの漬物とかと一緒に送ってくれるんじゃないの?


「ウェアタイガーの移動が思ったよりも早くて、戦線を維持するためにギルドの荷馬車は全部回復薬を運ぶために使われちゃってるのよ。セイカも八百屋に在った荷馬車を自分で使って漬物を輸送してくれてるわ。だからミノル君もお願い!!」


そう言われたら了承するしか無いよね?運ぶ場所は戦闘してる場所から離れた場所みたいだし。ハントとウー太も居るから大丈夫・・・かな?


「ん。何か在ってもミノルを逃がすくらいは出来る。」


「ぶもっ。」


僕だけが助かっても駄目なんだからね?ハントもウー太も一緒に帰ってこないと駄目だよ?


「大丈夫。ミノルが逃げたら私達も逃げる。」


「ぶんも。」


2人がそこまで言ってくれるなら、輸送を引き受けるしか無いよね。


「ありがとうミノル君。それじゃここに運んでね。私はこの後対策会議に出ないと行けないから、何かあったらギルド会館の方に来てね。任せたわよ!!」


忙しそうに会館に入っていったヤマブキさんを見送って。僕達はトコトコと指定された場所にアマ芋を運ぶ。そう言えばクエスト表示が出ないのは何でだろう?


「クエストの表示は受けるか受けないかを選べる場合に表示される。今回は街のピンチ。強制受注になっているから表示はされていない。クエスト欄には表示されてるはず。」


そうなんだ。どれどれ?


クエスト:ハーメルンを救え!

街にユニークモンスターが向かってきている。街の住人は協力してこのモンスターを撃退、もしくは討伐しよう!貢献度によって報酬が変わるぞ!


受注内容

アマ芋の栽培:クリア!

報酬:アマ芋の蔓✕10 10万マネ


作物の輸送:受注中 

報酬:未決定


あっ、ホントだ。クエスト欄には表示されてる。でもこの報酬未決定って?


「クリアした時に報酬が決まるか。クリアした後で報酬が選べるパターン。良いものが貰える確率が高い。お得。」


そうなんだ。それじゃ頑張って運んじゃおう!運ぶのはウー太だけど。


「ぶもっ!」


街が厳戒態勢になってるからか、街道を行き交う人が多い。けが人を乗せた馬車が行き交ってたり、装備やアイテムを落とした人が初期装備で叫びながら走ってたり凄く慌ただしい。


冒険者の人も沢山いて、それぞれ武器を携えて作戦を練りながら歩いてたりもしてる。


こういう時に悪事を働こうとする人が居ると思うんだけど、街道に大勢の人が居るから手が出せないみたい。通りすがりの衛兵さんに今は安全だって教えて貰ったんだ。ちょっと安心。


・・・・・。やっぱり良いなぁ。僕も本当なら仲間を作って一緒に冒険してた筈なんだけどなぁ。


「ミノルはミノルで出来ることをやってる。上位回復薬の素材を育てることも、アマ芋を育てるのもミノルにしか出来ない。だから偉い。」


「ぶんも!ぶもぶも!」


そうだね。僕もクエストに参加してるわけだし、皆と一緒に戦ってるような物だよね!励ましてくれてありがとう二人共。


街道を進んでいくと、沢山の天幕が並んでいる場所が近づいてきた。あそこが僕達の目的地で戦線に一番近い補給ポイント。人がまばらなのは、戦いに出てるからなのかな?


とりあえずヤマブキさんに頼まれた納品をしちゃおう。


すみませーん!農業ギルドの者なんですけどー!アマ芋持ってきましたー!


「ミノル君も来たのね!納品はこっちよ。」


誰かに聞こえるように大きな声で読んだらセイカさんが天幕の1つから出てきてくれた。あそこが物資を集めてる場所みたい。ウー太あそこに荷馬車を着けてくれる?


「待ってたのよ。冒険者の人に栄養不足の人が大勢いてどうしようかと思ってた所なの。ミノルくんが持ってきてくれたアマ芋で何とかなるわ。」


そんなに戦闘に影響が出てるんですか?


「最近のハーメルンは野菜不足で街の人はお肉ばかり食べてたらしいの。そうなるとスタミナの上限が減っちゃって戦闘時間が短くなっちゃってるって訳。今は人海戦術で何とかしてるけど、そのうち限界が来るのが見えてるのよねぇ。」


それなら急いでアマ芋を調理しないとですね。料理人の人は何処にいるんですか?


「さっき過労、というかスタミナ切れで倒れちゃった。」


えっ!?それじゃ持ってきたアマ芋調理できないんですか!?


「大丈夫よ。アマ芋なんて焚き火に突っ込んでおけば食べられるようになるんだから。という訳でそっちに用意してるから全部入れちゃって。」


よく見たら天幕の向こう側に大きな焚き火の跡がいくつも燻ってた。もうここまで準備してたのか。僕が来なかったらこの焚き火跡どうなってたんだろう?まっ今は考えなくても良いか。


あれ?でもこのままアマ芋入れても焦げちゃいますよ?大丈夫ですか?


「どうせ外が焦げても食べるのは中身だから良いのよ。ほらどんどん入れるわよー!」


「ウー太。荷馬車を倒して。」


「ぶもっ!」


ドサーっと荷馬車から落ちるアマ芋。焚き火跡から舞い上がる火の粉。僕達はせっせとアマ芋に周りの燻ってる炭を被せていく。


「いい匂いがしてきたわねぇ。」


「急いで作ったにしてはいい匂い。美味しそう。」


「ぶもぉ。」


アマ芋に火が入って焚き火周辺に甘い匂いが漂ってきた。近くにあった棒で黒くなったアマ芋を突き刺してみると、すっと中まで棒が入る。良い焼き加減だね!


「さっ、これをあの天幕の中に移動させ「襲撃だぁ!ウェアタイガーがここまで来たぞ!!」えっ!?」


ドザンッ!!


なにかに押しつぶされて潰れる天幕。その天幕の上に降り立った大きな黒い影、その影から除く黄色い瞳は、じっと僕達の事を見つめているのだった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る