第23話 僕と迫ってくる虎と緊急依頼
オヤさんの事が心配になった僕達はヤマブキさんに連れられて一緒に八百屋さんに向かう。それにしても孫娘さんが無事で本当に良かったよ。
「無事とは言えない状態だったんだけどね。無事になっちゃったのよ。」
ん?一体どういう事?
ハーメルンに行く道中でヤマブキさんに聞いてみると。孫娘さんは馬車が倒された時に御者台から吹き飛ばされたんだって。
近くの樹に激突して、背骨を折る大怪我を負ってたみたいだよ。
それでも、腰に下げてた剣を構えてウェアタイガーに一矢報いようとしてたから、それ以上追撃されなかったみたい。馬車を漁る方を優先してたってのも在るみたいだけどね。
そんな彼女の元に冒険者達が駆けつけて保護。それで、僕が納品してるグランドリーフを使った回復薬を薬師ギルドの人が調合して、何とか回復したってのが本当の話みたい。
「ミノル君のグランドリーフが無かったら危なかったわ。」
「でももう無事なんですよね?」
「えぇ。上位回復薬の効果はやっぱり凄いわね。今はもうピンピンしてるから。」
「ん。上位回復薬は部位欠損も治せるくらい強力な回復薬。骨が折れたくらいなら逆に効果が高すぎて元気になりすぎる筈。」
護衛としてついて来てくれてるハントが説明を補足してくれた。そうなんだ。グランドリーフを使った回復薬ってそんなに効果が在るんだ。
「そうなのよ。怪我も旅の疲れも全く無くなっちゃったから、荷物を駄目にしたウェアタイガーに仕返ししようとしたのを師匠と2人掛かりで止めたのよ?効果が高すぎよあれ。」
それで、オヤさん達が僕に感謝を伝えたいらしくてヤマブキさんが呼び来たんだって。そんなの気にしなくていいのに。
「それだけって訳じゃないのよ。まぁその話は八百屋に着いてから話すわ。師匠!ミノル君連れて来ましたよー!!」
という訳で八百屋さんに到着です。お店の奥から出てきたオヤさんは、僕を見つけるなり頭を下げました。
「ミノル君。今回は本当にありがとう。お陰で孫の命が助かったよ。」
「いえいえ。偶然僕がグランドリーフを栽培出来ただけですから。」
実際感謝される事は何もしてません。ヴァカスさんの所に収めるグランドリーフの地下茎。その残りを農業ギルドに下ろしてるだけなんです。お礼を言うならお孫さんを助けた冒険者の人にお願いします。
「そんな風に軽く言える功績じゃないんだけどねぇ。でも感謝の気持は受け取っておくれ。あのままだと孫は命が助かっても一生寝たきりの生活を送る所だったんだ。孫の命も未来も救ってくれて本当にありがとう。」
「感謝を受け取ります。どういたしまして。」
さて、オヤさんに感謝されている所ですが肝心の孫娘さんの姿が見えないんだよね。何処に居るんだろう?
「あの子なら今冒険者ギルドに行ってるよ。助けてくれた人にお礼と報酬を持っていくためにね。街道の状況を説明してるだろうし時間が掛かるんじゃないかい?」
「おばあちゃんただいまー!」
「おや。噂をすれば帰ってきたみたいだね。」
通りの向こうから緑色の長い髪を振りながら、元気に手を降って走ってくる普人種の女の人。目の色も髪と同じ緑色でキラキラと輝かせてる。後おっきなスイカが2つ揺れてる。僕の後ろでハントが胸のあたりを擦ってるのは気が付かなかったことにしようっと。
「おかえりセイカ。この人が話してたミノル君だよ。ちゃんとお礼を言っておきな。」
「おばあちゃんの孫のセイカです。あなたのお陰で助かったの。ありがとう。」
手を握ってブンブン振り回すセイカさん。セイカさんって普通の普人種じゃない?
手の動きに合わせて僕の体がブンブン振り回されちゃってるんですけど。体が小さいからって普通の人が簡単に人を振り回せないと思うんだ。
あと、腕の動きに合わせてスイカがバルンバルンしてます。ここまで大きく育てるのにはそれはもう苦労してるんだろうなぁ。
ていうか誰か助けてぇ〜!?
「ストップ。このままだとミノルが壊れる。駄目。」
「あっごめんなさい!私巨人種の血も入ってて力が強いの。大丈夫だった?」
「らいひょうふでふ。」
ちょっと目が回ってぐるぐるしてるだけです。HP的にはノーダメージです。
だから抱きかかえて頭を撫でないで下さい。窒息死しちゃうから!!
「やりすぎよセイカ。あなたちょっと離れなさい。ミノル君大丈夫?」
「テヘヘ。ごめんなさい。」
「あ、ありがとうございますヤマブキさん。」
セイカさんとヤマブキさんは昨日の内に自己紹介を済ませてるみたい。僕はセイカさんの腕の中から助け出されてやっと地面に降り立つことが出来た。地面って素晴らしい・・・・。
「セイカや。報告は終わったのかい?」
「うん。知ってることは全部話してきたよ。冒険者さんにもお礼を渡してきたし。あっ!そう言えばヤマブキの事を冒険者ギルドの人が探してたよ?例の件はどうなってるんだぁって。」
「あー。まだ確認取れてないのよね。今から彼に話をする所だったのよ。」
ふぅ。やっとぐるぐるが収まってきた。今のってもしかして状態異常だったのかなぁ?目眩とか?
あれ?どうして皆こっちを見てるんです?
「ミノル君。農業ギルドと冒険者ギルドの連盟であなたに緊急依頼を出すわ。まず出来る限りのグランドリーフの栽培をお願いしたいの。」
「えっと。グランドリーフはヴァカスさんの所に納品してるんで沢山植えてますし、葉っぱは乾燥して倉庫に入れてますけど。そんなに必要なんですか?」
「必要なのよ。今回街道を封鎖したウェアタイガーは変異種らしくてね。それこそユニークと呼ばれる個体なのよ。お陰で討伐に赴いた部隊がほぼ壊滅しちゃったのよ。」
「ユニーク!?」
「知ってるのハント?」
「ユニーク個体は世界に1体しか居ない特別な個体。モンスターの中に稀に生まれて、討伐すればレアなアイテムと強い装備が手に入る。テイム出来れば今の最前線でも戦える位に強い。」
攻略組が必死に戦ってる最前線に出られる位に強いの!?そりゃ初心者エリアの人達が戦っても勝てないよね。
「住人の人達は大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃないから頼んでるのよ。幸い回復薬の備蓄で命は取り留めたけど、戦線に復帰できる程ではないわ。だからこそ、セイカを助けた上位回復薬が必要なのよ。」
「さっきギルドの人から聞いたんだけど。ユニークのウェアタイガーは街道をゆっくりこっちに向かって進んでるんだって。ギルドはハーメルンの街に辿り着く前に迎撃体制を整えたいみたいよ?其の為にも少しでも戦力が欲しいって訳よねー。」
「それとね。前線に送る食料が心許無いのよ。だから師匠とミノル君には出来るだけ食料も提供して欲しいの。」
「肉屋さんには言わないんですか?」
「もちろん話は行ってるわよ。でもお肉は今捨てる程在るの。足りないのは野菜なのよ。」
うーん困った。昨日植えてた野菜は全部オヤさんに納品しちゃって今畑には何も植えてないんだよね。昨日渡した漬物にしても、そんなにすぐに浸からないと思うし・・・。
「解ったよ。ちょうど昨日漬けた奴が在るからね。それを持ってお行き。」
「ありがとうございます師匠。」
「えっ!?もう漬物出来てるんですか!?」
「あぁ出来てるよ。驚くほどじゃないさね。スキルを使えばすぐに作れるんだから。」
そうだった!!このゲームスキルが在るんだった!自分が持ってないものだからついつい忘れちゃうんだよね。
「ミノル君。出来れば君に育てて欲しい作物が在るの。昨日渡したぐんぐんノビールEXを使っても良いから頼めないかしら?」
そう言ってインベントリから小さな箱を取り出すヤマブキさん。
僕で役に立てるなら何でも育てます!でもヤマブキさんが育てて欲しい言う作物って一体何だろう。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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